植物性たんぱく質でも筋肉は育つか。ビーガンと雑食の12週間比較で差はみられず
たんぱく質の摂取量を体重1kgあたり1.6gにそろえたうえで、ビーガンと雑食の人に12週間の筋トレを行ってもらった研究では、筋肉量や筋力の伸びに統計的な差はみられなかった。「植物性では筋肉が付きにくい」という見方を検証した研究の中身と限界を整理する。
たんぱく質の摂取量を十分にそろえれば、植物性中心の食事でも動物性を含む食事でも、筋トレによる筋肉量と筋力の伸びに統計的な差はみられなかった。ビクトリア・エビア=ラライン氏らの研究チームが2021年、スポーツ医学誌『Sports Medicine』に発表した研究である。植物性たんぱく質は動物性に比べて必須アミノ酸、とくにロイシンの含有量が少なく、消化吸収の面でも不利とされてきた。実際のトレーニング効果に差が出るのかを、長期間の介入で確かめたものだ。
研究デザイン:ビーガン19人と雑食19人が12週間の筋トレ
対象は、筋トレ習慣のない若年男性38人である。うち19人は普段からビーガン(動物性食品をとらない食生活)、19人は雑食の人だった。平均年齢は約26歳。全員が週2回、指導者の監督下で12週間の筋トレを行った。
両群とも、1日のたんぱく質摂取量が体重1kgあたり1.6gになるよう調整した。不足分はビーガン群が大豆たんぱく質(ソイプロテイン)、雑食群がホエイプロテインで補った。つまり「量をそろえたうえで、たんぱく源の違いだけを比べる」設計である。
結果:筋肉量・筋線維・筋力とも群間差なし
12週間後、両群とも脚の除脂肪量、太ももの筋肉(外側広筋)の断面積、筋線維の太さ、脚の筋力が増加した。主な変化量は以下のとおりで、いずれも群間に統計的な差はなかった。
| 指標 | ビーガン群 | 雑食群 |
|---|---|---|
| 脚の除脂肪量 | +1.2kg | +1.2kg |
| 外側広筋の断面積 | +2.2cm² | +2.8cm² |
| 速筋線維(タイプII)の断面積 | +921μm² | +844μm² |
| レッグプレス1RM | +97kg | +117kg |
論文は、たんぱく質を十分に摂っている条件では、たんぱく源の違いは筋トレによる適応に影響しなかったと結論づけている。
研究の限界:対象はトレーニング未経験の若年男性
対象者は筋トレ未経験の若年男性に限られており、トレーニング経験者、女性、高齢者に同じ結果が当てはまるかはわからない。未経験者はトレーニングを始めるだけで大きく変化しやすく、食事による差が表れにくい可能性もある。また、両群とも1.6g/kgという比較的多い量をそろえており、たんぱく質の摂取量が少ない状況で植物性と動物性に差が出るかどうかは、この研究からは判断できない。数値の上ではレッグプレスの伸びや筋断面積に差があるように見えるが、統計的に意味のある差ではなかった点にも注意が必要である。
KINNIKU TIMESの視点
この研究から読み取れるのは、「何から摂るか」よりも「どれだけ摂るか」が先に来るということである。植物性中心の食生活の人でも、大豆製品やソイプロテインなどを活用して総量を確保すれば、筋トレの成果を十分に得られる可能性が示された。
一方、植物性食品だけで1日の目標量に届かせるには、食事量が多くなりやすい。豆腐、納豆、豆類、ソイプロテインなどを組み合わせ、1日の総量を意識することが現実的な工夫になる。食事制限のある人や持病のある人は、食事の変更について医師や管理栄養士に相談してほしい。