寝る前のカゼイン27.5gで筋断面積の伸びに差。12週間の筋トレ実験と見落とせない前提
若年男性44人が12週間の筋トレを行い、毎晩寝る前にカゼイン27.5gを含む飲料を摂った群では、プラセボ群より筋力と太ももの筋断面積の伸びが大きかった。ただしプラセボにはたんぱく質もエネルギーも含まれておらず、1日の総摂取量に差があった点に注意が必要である。
筋トレ期間中に毎晩寝る前にたんぱく質27.5gを摂った若年男性は、摂らなかった人に比べて筋力と太ももの筋断面積の伸びが大きかった。オランダ・マーストリヒト大学のティム・スナイダース氏、ルック・ファン・ローン氏らの研究チームが2015年、栄養学誌『Journal of Nutrition』に発表した研究である。「寝る前のカゼイン」が筋トレ愛好家の間で広まるきっかけの一つとなった研究だが、結果を読むうえで押さえておきたい前提がある。
研究デザイン:44人が12週間の筋トレ、就寝前に飲料を摂取
対象は若年男性44人(平均22歳)である。全員が週3回、12週間の段階的な筋トレプログラムを行い、毎晩寝る前にたんぱく質飲料を摂る群とプラセボ飲料を摂る群に分けられた。
| 項目 | たんぱく質群 | プラセボ群 |
|---|---|---|
| 就寝前の飲料 | たんぱく質27.5g(カゼインとカゼイン加水分解物)、炭水化物15g | エネルギーを含まない飲料 |
| 1日のたんぱく質摂取量 | 1.3→1.9g/kg | 1.3g/kgのまま |
カゼインは牛乳に含まれるたんぱく質の一種で、ホエイに比べてゆっくり消化吸収されるとされる。筋肉の大きさはCT(コンピューター断層撮影)や筋生検で、筋力は1RMテストで評価した。
結果:筋力、筋断面積、速筋線維の伸びがいずれも大きかった
| 指標(12週間の変化) | たんぱく質群 | プラセボ群 |
|---|---|---|
| 筋力(1RMの合計) | +164kg | +130kg |
| 大腿四頭筋の断面積 | +8.4cm² | +4.8cm² |
| 速筋線維(タイプII)の断面積 | +2,319μm² | +1,017μm² |
いずれも統計的に意味のある差であった。著者らは、就寝前のたんぱく質摂取は若年男性の筋トレによる筋肉量と筋力の増加を高める有効な食事戦略になりうると結論づけている。
研究の限界:「寝る前」の効果か、「総量が増えた」効果か
最も重要な点は、プラセボ群の飲料にはたんぱく質もエネルギーも含まれていなかったことである。その結果、たんぱく質群の1日のたんぱく質摂取量は体重1kgあたり1.9g、プラセボ群は1.3gと差が生じていた。このため、今回みられた差が「寝る前というタイミング」によるものか、「1日の総摂取量が増えた」ことによるものかは、この研究だけでは区別できない。同じ量を別の時間帯に摂る群との比較は行われていない。
また、対象は若年男性に限られ、女性や高齢者、トレーニング経験者に同じ結果が当てはまるかは不明である。研究はオランダの食品原料企業やオランダのオリンピック委員会などの助成を受けて行われた。
KINNIKU TIMESの視点
この研究から読み取れる実践的な教訓は、「寝る前の時間帯を、1日のたんぱく質を上乗せする機会として使える」ということである。夕食から就寝まで時間が空く人や、日中の食事だけでは目標量に届かない人にとって、就寝前はたんぱく質を補いやすい時間帯の一つになる。
一方で、すでに1日の必要量を十分に摂れている人が、寝る前のカゼインを追加することで同じような上乗せを得られるかは、この研究からはわからない。まずは1日の総量を確保し、そのうえで生活リズムに合わせて寝る前の一食やプロテインを取り入れるかどうかを判断するのが妥当だろう。牛乳やヨーグルト、カッテージチーズなど、カゼインを含む普段の食品でも代わりになりうる。乳製品にアレルギーがある人や腎臓に持病のある人は、医師に相談してほしい。