THE MUSCLE NEWSPAPER
KINNIKU TIMES › 論文解説・新常識  › 記事
論文解説・新常識

筋トレで筋線維の数は増える?11研究・211人のメタ分析、6カ月以内では増加みられず

公開 ・ KINNIKU TIMES 編集部 ・ 読了目安 5分
テーブルに置かれた一組のダンベル
SUMMARY|この記事の要約

筋トレで筋肉が大きくなるのは筋線維の数が増えるからではなく、主に1本1本が太くなるためで、11研究・211人を統合したメタ分析では最長6カ月の筋トレで推定筋線維数に有意な変化はなく、平均の増加は1%未満だった。米ローワン大学のチームが『The Journal of Sports Medicine and Physical Fitness』誌に報告した。

筋トレで筋肉が大きくなるのは、筋線維の「数」が増えるからではなく、主に1本1本が太くなるためだと考えられる。米ローワン大学(Rowan University)のニコラス・バートン(Nicholas V. Barton)氏、スコット・ダンケル(Scott J. Dankel)氏らは、人の筋トレ前後で筋線維の数を推定した11研究・211人のデータを統合するメタ分析を行い、最長6カ月の筋トレでは推定筋線維数に有意な変化がみられなかったと『The Journal of Sports Medicine and Physical Fitness』誌2026年2月号に報告した。

ジムでダンベルを持ち上げる男性
写真はイメージです(Unsplash)

筋肥大と「筋線維の増殖」はどう違う?

筋肉は、細長い筋線維という細胞が束になってできている。筋トレで筋肉が大きくなる仕組みには、1本1本の筋線維が太くなる「筋肥大」と、筋線維の本数そのものが増える「筋線維の増殖(ハイパープラジア)」の2つが考えられてきた。前者が主な仕組みであることは広く認められているが、後者が人でも起こるかについては議論が続いていた。今回の研究は、この問いを数量的に検証することを目的としている。

筋線維の数はどうやって推定したのか

筋肉に含まれる筋線維をすべて数えることは、生きた人ではできない。そこで研究チームは、画像検査などで測った筋肉全体の断面積を、筋生検で得た筋線維1本あたりの平均断面積で割り、さらに補正係数1.36を掛けて筋線維数を推定した。

項目 内容
文献検索 Medline、Scopus、Web of Science(2024年5月17日)で3,009件
採用した研究 11研究(効果量15件)、参加者211人
対象の筋肉 上腕二頭筋または外側広筋(太もも前面)
トレーニング期間 14〜48回、最長6カ月
参加者 主にトレーニング未経験者
解析方法 3レベルのランダム効果モデル

結果:筋線維の数の変化は平均1%未満

筋トレ前の筋線維数は平均で約50万9,000本と推定された。筋トレ後の変化は平均で約4,086本の増加だったが、95%信頼区間はマイナス6,430本からプラス1万4,604本までと幅広く、統計的に有意ではなかった(P=0.419)。増加幅は平均で1%未満、信頼区間の上限でみても2.9%にとどまる。

トレーニング経験の有無、トレーニング回数、対象の筋肉(上腕二頭筋か外側広筋か)によって結果が変わる傾向もみられなかった。出版バイアス(効果が出た研究だけが発表されやすい偏り)の兆候も確認されなかった。

研究の限界:長期の鍛錬については未解明

著者らは、筋線維数を直接数えた研究は1つもなく、すべて断面積の比から推定した値である点を限界に挙げている。筋生検は筋肉のごく一部から採取するため、採取場所による誤差も大きい。また、採用した研究の多くは期間が短く、未経験者が中心だった。そのため、何年も鍛え続けた上級者で筋線維の数が増えるかどうかは、この分析からは判断できない。

よくある質問

筋トレで筋線維の数は増えるのか?

最長6カ月の研究を統合した今回の分析では、推定筋線維数に有意な増加はみられなかった。起きているとしても、ごくわずかと考えられる。

では、筋肉はどうやって大きくなるのか?

主に、既存の筋線維1本1本が太くなる「筋肥大」による。筋トレの成果は、筋線維を太くする刺激と栄養を積み重ねた結果といえる。

長年鍛えたボディビルダーでも増えないのか?

分かっていない。今回の分析は短期間の研究が中心で、長期の鍛錬による変化は検証されていない。

KINNIKU TIMESの視点

筋線維の数は短期間の筋トレではほとんど変わらないとすれば、筋肉を大きくする近道は、今ある筋線維をいかに太くするかに尽きる。筋肥大は重い重量でも軽い重量でも限界近くまで追い込めば同程度に得られるという研究もある(軽い重量で20回でも筋肉は育つ)。重量や回数を少しずつ伸ばす漸進性と、十分なたんぱく質の摂取を地道に続けることが基本だ。一度つけた筋肉は休んでも戻りやすいという報告もあり(休んでも筋肉は「覚えている」)、長く続けた努力は無駄にならない。


出典:Barton NV, Gowda HN, Dankel SJ. A systematic review and meta-analysis examining if hyperplasia occurs in humans in response to resistance exercise. The Journal of Sports Medicine and Physical Fitness(2026年2月号)Minerva Medica 掲載ページ