休んでも筋肉は「覚えている」。7週間の休養後に再開すると除脂肪量は12.4%増に
筋トレ、休養、再開をそれぞれ7週間ずつ行った研究で、再開後の除脂肪量は開始時より12.4%増え、最初の7週間の伸びを上回った。筋肉の遺伝子の働きを調節する「エピジェネティックな記憶」が関わる可能性が示された。
ケガや仕事で筋トレを休むと、それまでの努力が水の泡になるのではないか――そうした不安を和らげる研究がある。研究チームが2018年に発表した研究では、7週間の筋トレで増えた筋肉が休養でいったん落ちても、再開すると最初より速く大きく増えた。その背景には、筋肉の細胞に残る「エピジェネティックな記憶」があると考えられている。
エピジェネティックな記憶とは
エピジェネティクスとは、DNAの配列そのものは変えずに、遺伝子の働きのオン・オフを調節する仕組みを指す。その代表が「DNAメチル化」で、遺伝子の一部にメチル基という目印が付くと、その遺伝子は働きにくくなる。逆に目印が外れる(低メチル化)と働きやすくなる。研究チームは、筋トレによって生じたこの目印の変化が、休養後も筋肉に残るのではないかと考えた。
研究デザイン:鍛える、休む、また鍛える
Robert A. Seaborne氏、Adam P. Sharples氏らの研究チームは、筋トレ未経験の男性8人(平均27.6歳)を対象に、次の3つの期間を連続して実施した。

- 負荷期(7週間):週3回の全身トレーニング。スクワット、レッグプレス、ベンチプレス、ショルダープレス、ラットプルダウン、ローイングなどを各4セット×10回、重量を段階的に増やした
- 休養期(7週間):トレーニングを完全に中止
- 再負荷期(7週間):負荷期と同じプログラムを再開
除脂肪量はDEXA法(二重エネルギーX線吸収法)で測定し、太ももの外側広筋から筋肉を採取して、約85万か所のDNAメチル化と遺伝子の働きを網羅的に解析した。なお1人が途中で離脱し、再負荷期の解析は7人で行われた。
結果:2回目のほうが増え方が大きい
| 期間 | 除脂肪量の変化 |
|---|---|
| 負荷期(7週間) | +6.5% |
| 休養期(7週間) | −4.6%(開始時の水準近くへ) |
| 再負荷期(7週間) | 開始時比+12.4%、負荷期終了時比+5.9% |
筋力(等尺性の筋トルク)も、負荷期には9.3%の増加で統計的に有意ではなかったが、再負荷期には開始時比18%増と有意に向上した。
DNAメチル化を見ると、負荷期後に目印が外れていた部位は9,153か所だったのに対し、再負荷期後は18,816か所と約2倍に増えていた。また、AXIN1、GRIK2、CAMK4、TRAF1の4つの遺伝子では、休養期に筋肉量が戻った後も低メチル化の状態が保たれていた。再負荷期で特に大きな反応を示した遺伝子としては、UBR5などが挙げられている。研究チームは、ヒトの骨格筋が過去の筋肥大をエピジェネティックに「記憶」している可能性を示す初めての報告だとしている。
研究の限界
対象者は8人(最終的に7人)と非常に少なく、筋トレ未経験の若い男性に限られる。比較のための対照群もなく、女性や経験者、中高年に同じ現象が起こるかは分からない。7週間という休養期間も比較的短く、数か月から数年休んだ場合については、この研究からは言えない。遺伝子の変化と筋肉の増え方の因果関係も、今後の検証が必要である。
KINNIKU TIMESの視点
忙しい時期やケガで筋トレを中断しても、落ち込みすぎる必要はない。この研究は、一度鍛えた筋肉は再開後に戻りやすい可能性を示している。大切なのは、休んだ期間を取り戻そうと焦って、いきなり以前と同じ重量に挑まないことだ。関節などの組織は筋肉ほど早く戻らないこともあるため、最初の1〜2週は重量を控えめにし、フォームを確認しながら段階的に戻していくのが安全である。
もう一つの教訓は、「休むのが怖いから無理をする」必要はないということだ。体調不良や多忙な時期に思い切って休むことは、長い目で見れば筋トレを続けるための選択になりうる。