THE MUSCLE NEWSPAPER
KINNIKU TIMES › 栄養・サプリ  › 記事
栄養・サプリ

炭水化物を増やすと筋肉は増える?11試験のメタ分析で筋肥大に有意差なし

公開 ・ KINNIKU TIMES 編集部 ・ 読了目安 5分
テーブルに並んだパスタとパン
SUMMARY|この記事の要約

炭水化物を多くとっても筋肥大は進まない可能性が高く、11件の試験を統合したメタ分析では効果量0.15で有意差はなかった(p=0.23)。たんぱく質と総カロリーが足りていれば、炭水化物の量は好みや続けやすさで選んでよいと著者らは結論づけている。

炭水化物を多くとっても、それだけで筋肉が大きく育つわけではない可能性が高い。メノ・ヘンセルマンス(Menno Henselmans)氏らは、筋トレ中の炭水化物摂取量を比べた11件のランダム化比較試験をまとめたメタ分析を、国際誌「Sports Medicine」に2026年2月に発表した。たんぱく質の量をそろえた条件では、炭水化物を多くとった群と少なくとった群の筋肥大に統計的な差はみられなかった。

炭水化物摂取量と筋肥大のメタ分析のフォレストプロット
図:Henselmans M ほか『The Effect of Carbohydrate Intake on Muscle Hypertrophy: A Systematic Review and Meta-analysis』Sports Medicine(2026)Figure 2(主解析のフォレストプロット)/出典:Sports Medicine/ライセンス:CC BY 4.0(改変なし)

炭水化物を増やすと筋肥大は進む?

「筋肉を大きくしたいなら米やパスタをしっかり食べるべきだ」という助言はトレーニーの間で広く浸透している。ただし、炭水化物を増やすと総カロリーも増えることが多く、炭水化物そのものの効果なのか、カロリーが増えた効果なのかは区別しにくかった。これまでの研究の多くはケトジェニックダイエット(極端な糖質制限)との比較に偏っていた。

今回の研究は、たんぱく質の量をそろえた(等窒素)条件で、炭水化物の量だけが異なる試験に絞り込んだ点に特徴がある。

対象となった研究と方法

研究チームはMEDLINEやSPORTDiscusなどのデータベースを2025年6月26日まで検索し、1,347件の文献から条件を満たす11件を選んだ。対象は筋トレを行う健康な成人で、サプリメントか食事によって炭水化物の多い群と少ない群を比べ、筋肉の大きさを測った試験である。

項目 内容
対象試験 ランダム化比較試験11件
1試験あたりの人数 平均20.6人
期間 平均8.5週間
対象者 多くはトレーニング経験のある男性(女性のみの試験が1件)
評価方法 主に除脂肪量(超音波などで筋肉を直接測った試験は2件)

結果:筋肥大の差は「有意差なし」

11件を統合した主解析では、炭水化物の多い群の効果量(標準化平均差)は0.15(95%信頼区間−0.10〜0.40)で、統計的に有意ではなかった(p=0.23)。試験間のばらつきを示すI²は0%で、結果はほぼ一致していた。

  • 総カロリーをそろえた試験だけの解析:効果量0.15(p=0.60)で有意差なし
  • 超音波などで筋肉を直接測った2件だけの解析:効果量−0.26で有意差なし
  • 出版バイアス(都合のよい結果だけが発表される偏り)の兆候も確認されなかった

著者らは「エネルギーとたんぱく質の必要量を満たしていれば、炭水化物の量は筋肥大以外の基準や好みで選んでよい」と結論づけている。

研究の限界

一方で、エビデンスの確実性はGRADEで「低い」と評価された。1試験あたりの人数が少なく推定の幅が広いこと、多くの試験で総摂取カロリーの管理が不十分だったこと、筋肉を直接測った試験が2件しかないことが理由である。研究の質を示すTESTEXスコアも平均9.8点(15点満点)にとどまった。

また今回の分析は「筋肉の大きさ」だけを対象にしている。炭水化物はグリコーゲン(筋肉に蓄える糖)の材料であり、高回数・多セットの練習の質や持久系の運動能力に与える影響は、この研究では評価していない点に注意が必要だ。

よくある質問

筋肥大のために炭水化物は何g必要?

今回のメタ分析からは、筋肥大に必要な炭水化物の最適量は示されていない。たんぱく質と総カロリーが足りていれば、炭水化物量の違いが筋肥大に与える影響は小さいと考えられる。

糖質制限をすると筋肉がつかない?

たんぱく質量をそろえた条件では、炭水化物が少ない群でも筋肥大に有意な差はみられなかった。ただし総カロリーが大きく不足すれば筋肥大は妨げられうるため、減らした分のエネルギー管理が前提となる。

増量期に炭水化物を多めにとる意味はある?

著者らは、カロリーを多くとる時期には炭水化物の多い食事のほうが続けやすい場合があると述べている。筋肉への直接の効果というより、食事を続けやすくする手段として考えるのが妥当だ。

KINNIKU TIMESの視点

筋肉を増やすための優先順位は、まず1日のたんぱく質量、次に総カロリーであり、炭水化物と脂質の配分はその次の調整項目と考えてよい。たんぱく質の目安は体重1kgあたり1.6gを示したメタ分析が参考になる。米やパスタが好きな人は無理に減らす必要はなく、逆に糖質を控えたい人も、たんぱく質とカロリーを確保できていれば筋肥大を過度に心配しなくてよい。ただし、脚の日のように高ボリュームの練習でばてやすいと感じるなら、練習前後に炭水化物を足してパフォーマンスを確かめるのが現実的だ。たんぱく質源をそろえる際はプロテインの価格比較も活用したい。


出典:Henselmans M, Vårvik FT, Izquierdo M. The Effect of Carbohydrate Intake on Muscle Hypertrophy: A Systematic Review and Meta-analysis. Sports Medicine 56, 691–702(2026年2月19日オンライン公開)