【統計で見る3つの壁】ジム経営はなぜ難しい?|資金・退会・人の乗り越え方
ジム経営が難しいと言われるのは、開業前に大きなお金を先に払い、会員が集まるまで固定費を払い続ける形だからです。さらに、利用者数の季節の波、退会、パート・アルバイト中心の人の確保が重なります。経済産業省の統計(2024年、調査対象企業)では、利用者数は7月と12月で約1割の差があり、従業者の約8割がパート・アルバイト等でした。難しさを先に数字で知っておくと、備え方が決まります。
ジム経営の難しいところと、効いてくる時期
| 難しいところ | 重さ | 効いてくる時期 |
|---|---|---|
| 固定費が先に出ていく | 高 | 開業から損益分岐に届くまで |
| 退会で会員数が伸び悩む | 高 | 開業半年後から、ずっと |
| 利用者数の季節の波 | 中 | 夏と年末年始 |
| スタッフの確保と育成 | 中 | 営業時間が長い店ほど |
| 近くの競合店 | 店しだい | 同じ形の店が出たとき |
難しさ1:お金が先に出ていき、回収に時間がかかる
ジムは、物件の保証金・内装工事・マシンなどを開業前に払い、会員が集まってから少しずつ回収する事業です。ジム開業ナビの試算モデル(2026年10月)では、24時間ジム30坪で初期費用2,370万円、月の費用202万円、損益分岐は232人、回収は17か月目です。パーソナルジム15坪は初期費用1,305万円で、回収は32か月目です。
この期間は、会員が少なくても家賃やリースの支払いは止まりません。実際の費用は物件・地域・見積もりで変わり、試算モデルには税・借入の返済が入っていないため、借入がある場合はさらに手元のお金が減ります。
- 乗り越え方:開業資金とは別に、損益分岐に届くまでの月数分の運転資金を用意する
- 乗り越え方:プレオープンで開業前に会員を集め、開業月の会員数を0から始めない(試算モデルでは開業前の広告・プレオープンに150万円を見込んでいる)
- 乗り越え方:小さな物件・リースの活用で、最初の固定費を抑える
難しさ2:利用者数の季節の波と、退会
経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」のフィットネスクラブの月次の数字(2024年)を見ると、利用者数は月によって上下します。この調査は売上高の上位でおおむね7割をカバーする企業を対象にしたもので、個人経営の小さなジムを含む全体の数字ではありません。
| 2024年の月 | 利用者数 | 会員数 |
|---|---|---|
| 3月 | 約1,901万人 | 約283万人 |
| 7月 | 約1,992万人 | 約291万人 |
| 8月 | 約1,800万人 | 約291万人 |
| 10月 | 約1,970万人 | 約294万人 |
| 12月 | 約1,793万人 | 約288万人 |
会員数があまり動かない月でも、利用者数は7月と12月で約1割違います。来館が減る月は、会員が「通わなくなる」きっかけになりやすく、その後の退会につながることがあります。会員数が落ち着く先は「月の新規入会 ÷ 月の退会率」で決まるため、退会率が少し上がるだけで店の天井が下がります。
- 乗り越え方:来館が減る月の前に、イベントや目標設定の面談で「通う理由」をつくる
- 乗り越え方:一定期間来ていない会員を一覧にし、退会の前に声をかける
- 乗り越え方:退会の理由を毎回記録し、店で直せるものから直す
新規入会と退会率を入れると、会員数がどこに落ち着き、利益がどう動くかを試せます。退会率を下げたときの効き方を、数字で確かめてください。
収益改善シミュレーションを無料で使う難しさ3:人の確保と、店ごとに違う決まりごと
同じ統計の2024年12月の数字では、調査対象のフィットネスクラブの従業者は42,443人で、そのうちパート・アルバイト等が33,927人(約8割)でした。長い営業時間をパート・アルバイトのシフトで支える形が多いことがわかります。シフトが組めないと営業時間を守れず、人が入れ替わるたびに教育の手間がかかります。
もう1つの難しさは、決まりごとが物件・業態・自治体で変わることです。たとえば建築基準法では、特殊建築物の用途で200㎡を超える場合に用途変更の確認申請が必要になり、ジムは施行令第115条の3の「スポーツの練習場」に当たります(2026年10月23日確認)。防火対象物使用開始届は市町村の火災予防条例によるため、所轄の消防署で確認が必要です。物件を決める前に、所轄の消防署・自治体・行政書士に確認しておくと、開業の遅れを防げます。
- 乗り越え方:受付・清掃・指導の仕事を手順書にし、誰が入っても同じ対応ができるようにする
- 乗り越え方:予約・入退館・決済をシステムで自動にし、人がやる仕事を減らす
- 乗り越え方:物件の契約前に、用途変更・消防の要否を専門家と確かめる
よくある質問
ジム経営で一番難しいことは何ですか?
多くの店に共通するのは、会員が損益分岐に届くまでの資金と、その後の退会の管理です。固定費が大きいため、会員数が少し足りないだけで赤字になり、退会率が少し上がるだけで会員数の天井が下がります。
未経験でもジム経営はできますか?
経営の経験がなくても始める人はいますが、損益分岐・退会率・資金繰りの数字を自分で見られることが前提です。運動指導の経験がない場合は、指導を担う人の確保と教育を計画に入れておきましょう。
個人経営のジムは大手に勝てませんか?
価格や設備の量で競うと不利になりやすい一方、指導の質・対象を絞ったプログラム・地域とのつながりで選ばれる店もあります。誰に向けた店かを先に決めることが大切です。
ジム経営の難しさを減らす方法はありますか?
開業前に損益分岐と運転資金を計算する、小さく始める、予約・決済をシステムで自動にする、退会の理由を記録する、の4つは多くの業態で共通して効きます。
出典
- 経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」長期データ(フィットネスクラブ)(2026年10月23日確認)
- 経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」調査の概要(2026年10月23日確認)
- ジム開業ナビ「ジム開業の費用」試算モデル(2026年10月)
- e-Gov法令検索「建築基準法」(2026年10月23日確認)
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