【総額の計算例つき】ジムの買収で確認すること|調査6分野と契約の決めごと
ジムの買収は、すでに会員と立地があるジムを引き継ぎ、ゼロから開業するより早く事業を始める方法です。ただし、会員がそのまま残る保証はなく、契約・設備・隠れた債務を引き継ぐリスクもあるため、買う前の調査(デュー・ディリジェンス)が最も重要です。
中小企業庁の「中小M&Aガイドライン(第3版)」では、買い手の調査は財務・法務・事業・税務を対象にし、結果を最終契約の条件(譲渡額・表明保証・補償)の調整に使うと説明されています。
金額・税・契約は個別の事情で変わります。弁護士・税理士・M&Aの専門家に確認してください。確認日: 2026年10月28日。
既存のジムを買う場合と、新しく開業する場合
- 会員・立地・設備を引き継げる
- 開業までの準備期間を短くできる可能性
- 会員が離れる、隠れた債務、設備の劣化のリスク
- 契約の承諾が取れない部分は引き継げない
- 立地・内装・マシンを自分で決められる
- 会員はゼロから集める
- 内装・マシンの初期費用が大きい
- ジム開業ナビの試算モデルでは、パーソナルジム15坪の初期費用は1,305万円
ジムの買い手は、どこで探して、どんな形で買うか
売りに出ているジムを探す方法は、公的な窓口と民間の仲介の2つに分かれます。確かめた内容を表にしました。
| 探し方 | 確かめたこと(2026年10月28日) |
|---|---|
| 事業承継・引継ぎ支援センター | 第三者承継支援として、相談から譲受企業の紹介、成約までを支援。「後継者人材バンク」では、創業を目指す起業家と、後継者不在の会社や個人事業主を引き合わせる |
| 日本政策金融公庫「事業承継マッチング支援」 | 無料のマッチングサービス。事業を譲り渡したい人と、創業や新分野進出などを目的に譲り受けたい人が対象 |
| M&A仲介・FA | 中小企業庁の「M&A支援機関登録制度」があり、仲介者・FAが登録される(ガイドラインの説明)。手数料の体系は会社ごとに違う |
買う形は、売り手の事情で決まることが多いです。ガイドラインによると、株式譲渡は手続きが比較的簡単ですが、未払残業代などの簿外債務や偶発債務を引き継ぐリスクが比較的高いため、詳しい調査が行われやすい方法です。事業譲渡は、引き継ぐ資産と負債を選べて簿外債務を遮断しやすい反面、契約や不動産の名義変更、許認可の取り直しなどの手続きが要ります。くわしい手順はジムの事業譲渡にまとめています。
買う前に調べること:ジムのデュー・ディリジェンス
ガイドラインは、調査の密度は案件で違い、数年分の税務申告書の確認と経営者へのヒアリングだけで終わることもあるとしています。ジムで外せない項目を挙げます。
| 分野 | 確かめること | 見るポイント |
|---|---|---|
| 会員 | 月ごとの会員数・入会数・退会数、会費の内訳、前払いの会費や回数券の残 | 退会率が安定しているか。特定のスタッフについている会員が多くないか |
| お金 | 数年分の決算書と申告書、借入、未払金、リース残 | オーナー個人の費用が混ざっていないか(損益計算書の読み方) |
| 物件 | 賃貸借契約の残り期間と更新、貸主の承諾、保証金、原状回復の条項 | 名義変更が貸主に認められるか。経営権の変更で解除される条項がないか |
| 設備 | 所有かリースか、状態、点検記録 | 買ったあとに大きな修理が出ないか |
| 人 | 雇用契約、残業の実態、未払いの賃金がないか | スタッフが残ってくれるか。同意しない人は移らない |
| 届出・保険 | 防火管理者の届出、加入している保険、苦情の履歴 | 管理する人が変わるときの手続きを消防署に確認 |
ガイドラインは、賃貸借契約などで、会社の株主の異動や支配権の変動により相手方に解除権が生じるとする条項(チェンジ・オブ・コントロール条項)がある場合は、貸主との事前の協議が必要になることがあると説明しています。調査の結果で見つかった問題は、価格の見直しや、最終契約の表明保証(売り手が一定の事項を事実だと保証する条項)で扱います。
買収の総額を計算する:比べ方の例
譲渡額だけでなく、買ってから営業できるまでの費用を足して総額を出します。
- 総額 = 譲渡額 + 専門家の費用 + 引き継ぐ負債(リース残など)+ 改装・システムの入れ替え + 運転資金
下の表は、架空の例です。実際の金額ではなく、項目の見方を示すものです。
| 項目 | 金額(例) | メモ |
|---|---|---|
| 譲渡額 | 650万円 | 純資産と利益から交渉(ジムのM&A相場) |
| 専門家の費用 | 60万円 | 弁護士・税理士の調査と契約書の確認 |
| 改装・システム入れ替え | 200万円 | 名称変更、看板、予約システムなど |
| 買収にかかる合計 | 910万円 | 運転資金は別に準備 |
この例は、ジム開業ナビの試算モデルのパーソナルジム15坪の初期費用(1,305万円)と、条件が違うため単純には比べられません。買収では、運転資金(数か月分の家賃・人件費など)も別に必要です。買ったあとの会費、会員数、退会率で、毎月の利益がどうなるかを先に試算してください。
買う前に、そのジムの会費・会員数・退会率を入れて、買ったあとの24か月の利益を試算できます。数字が合わないジムを避ける判断材料になります。
収益改善シミュレーションを無料で使う契約と資金:買ったあとに困らないための決めごと
- 最終契約で決める項目:譲渡対象、譲渡時期、譲渡対価、支払の時期と方法、経営者・役職員の処遇、経営者保証の扱い(ガイドライン)。売り手の引き継ぎ期間も入れる
- 売り手の競業:事業を譲った会社は、別の定めがなければ、同じ市町村と隣接する市町村で20年間、同じ事業を行えません(会社法第21条)。個人事業は商法第16条に同様の定めがあります。期間と範囲を契約で確認します
- 屋号と債務:売り手の屋号をそのまま使うと、売り手の事業で生じた債務の弁済の責任を負うことがあります(会社法第22条)。屋号を引き継ぐかを決めます
- 会員の個人データ:事業の承継に伴って提供される個人データは、個人情報保護法の第三者に当たらないとされます(第27条第5項第2号)。使う目的を会員に示します
- 買ったあとの統合:クロージングのあとの経営統合(PMI)の進め方は、中小企業庁の中小PMIガイドラインにまとまっています
資金は、日本政策金融公庫の事業承継向けの融資として「事業承継・集約・活性化支援資金」が公庫のページに載っています(国民生活事業、中小企業事業)。限度額・返済期間は各融資のページで確認してください。補助金の「事業承継・M&A補助金」も、公募ごとに内容が変わるため、中小企業庁の公式サイトで最新を確認します。売る側の流れはジムの売却方法、居抜きで設備だけ引き継ぐ形はジムの居抜き売却にあります。
よくある質問
ジムを買うのに、運営の経験は必要ですか?
運営の経験を条件とする決まりは、ここで調べた公式資料にはありません。最終契約では、売り手経営者による引き継ぎの期間を決める項目があります(ガイドライン)。会員との関係が前のオーナーに依存しているジムでは、引き継ぎの内容と期間を契約で決めておきます。
赤字のジムを買っても大丈夫ですか?
赤字の原因が、立地・会費・費用のどこにあるかで判断が変わります。ガイドラインにも、経営状況が良好でない会社でM&Aが成立した事例があります。調査で原因を確かめ、改善できる見通しを数字で立ててから判断します。
会員は、そのまま引き継げますか?
引き継げるとは限りません。契約上の地位の移転には会員の承諾が要り(民法第539条の2)、同意しない会員は退会や返金の対応になります。会員規約に承継の定めがあるかを調べます。
買収に使える融資や補助金はありますか?
日本政策金融公庫の事業承継・集約・活性化支援資金などがあります。条件は融資ごとに違うため、公庫の窓口に確認してください。補助金は公募ごとに条件が変わります。
出典
- 中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」(令和6年8月、2026年10月28日確認)
- 中小企業基盤整備機構「事業承継・引継ぎ支援センター」(2026年10月28日確認)
- 日本政策金融公庫「事業承継支援」(2026年10月28日確認)
- e-Gov法令検索「会社法」第21条・第22条(2026年10月28日確認)
- e-Gov法令検索「商法」第16条(2026年10月28日確認)
- e-Gov法令検索「民法」第539条の2(2026年10月28日確認)
- e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」第27条(2026年10月28日確認)
- ジム開業ナビ「ジム開業の費用」試算モデル(2026年10月)
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