【3方式の比較】ジムの売却方法|株式譲渡・事業譲渡・居抜きの違いと流れ
ジムを売却する方法は、主に「株式譲渡(会社ごと売る)」「事業譲渡(ジムの事業だけを売る)」「居抜き売却(内装・設備を次の借り主に譲る)」の3つです。
中小企業庁の「中小M&Aガイドライン(第3版)」では、中小M&Aの実務では株式譲渡か事業譲渡が選ばれることが多く、個人事業主は事業譲渡が通常とされています。
会員・スタッフ・ブランドごと引き継いでもらうならM&A、閉店して設備だけ活かすなら居抜き、と目的で選びます。相談先には、国が設置する公的な窓口「事業承継・引継ぎ支援センター」もあります。
ジムを売る3つの方法
| 方法 | 売るもの | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 株式譲渡 | 会社の株式(会社ごと) | 法人で運営し、会員・契約・スタッフをそのまま引き継いでほしい |
| 事業譲渡 | ジムの事業(選んだ資産・契約) | 個人事業主、または複数事業のうちジムだけを売りたい |
| 居抜き売却 | 内装・設備(造作) | 閉店するが、内装や設備を次の借り主に使ってもらいたい |
株式譲渡・事業譲渡・居抜き売却の違い
中小M&Aガイドラインは、株式譲渡と事業譲渡の特徴を次のように説明しています。居抜き売却は事業そのものではなく、内装・設備を次の借り主に譲る取引で、会員やスタッフは引き継がれないのが一般的です。
| 比べること | 株式譲渡 | 事業譲渡 | 居抜き売却 |
|---|---|---|---|
| 手続き | 比較的シンプル。許認可の再取得や登記手続などが一般に不要 | 資産・契約を一つずつ移す。許認可は原則取り直し | 造作の譲渡契約と、物件の賃貸借の切り替え |
| 買い手の心配 | 未払残業代などの簿外債務・偶発債務を引き継ぐおそれ。詳しいDDが行われやすい | 引き継ぐ資産・負債を選べるため、簿外債務を遮断しやすい | 設備の状態と、貸し主が新しい借り主を認めるか |
| 会員・スタッフ | 会社が同じなのでそのまま | 会員契約・雇用契約を個別に移す | 原則として引き継がない |
| 売り手個人の税(ガイドラインの説明) | 譲渡益に対する分離課税(税率20.315%)で終了 | 対価は法人に入り法人税等。個人に移すときは配当・役員報酬などで課税 | 税理士に確認 |
ガイドラインは、事業譲渡では減価償却資産なども消費税の課税対象になるため、課税事業者は消費税にも注意が必要としています。税の扱いは状況で大きく変わるため、必ず税理士に確認してください。
売却の流れと、相談先の選び方
中小M&Aガイドラインでは、通常の流れを次のように説明しています。
仲介者・FA(ファイナンシャル・アドバイザー)が、譲り渡し側を特定できない概要(ノンネーム・シート)を候補先に送ります。関心を示した数社と秘密保持契約を結んでから、詳しい資料を渡します。
| 相談先 | 確かめたこと(2026年10月23日確認) |
|---|---|
| 事業承継・引継ぎ支援センター | 国が設置する公的相談窓口。親族内承継から第三者への引継ぎまで相談でき、各都道府県のセンターが無料・秘密厳守での相談を案内している |
| 日本政策金融公庫「事業承継マッチング支援」 | 事業を譲り渡したい人と譲り受けたい人をつなぐ無料のマッチングサービス |
| M&A仲介者・FA | 中小企業庁の「M&A支援機関登録制度」に登録された支援機関が公表されている。手数料の体系は事業者ごとに違う |
仲介者やFAに頼むときは、契約前に次の点を確かめてください。ガイドラインが挙げるのは、着手金・月額報酬・中間金・成功報酬の有無、成功報酬の基準になる額、最低手数料、専任条項・テール条項の期間です。
売る前に、会費・会員数・退会率を見直して利益を上げると、評価の土台になる数字が変わります。今の数字を入れて、どこを改善すると利益が増えるかを試算してみてください。
改善後の利益を試算する(無料)ジムならではの売却前の準備
ジムは会員との継続契約、物件の賃貸借、マシンのリースが事業の中心です。買い手が最初に確かめる点を、売り手が先に整理しておくと交渉が進みやすくなります。
- 会員の数字:月ごとの会員数・入会数・退会数、会費の内訳、未収金
- 物件:賃貸借契約の残り期間、更新の条件、名義変更や経営者の交代で契約に影響する条項(チェンジ・オブ・コントロール条項)の有無
- マシン:リース契約の残り期間と残額、所有している機器の一覧と状態
- スタッフ:雇用契約・業務委託契約、未払いの残業代がないか
- システム・データ:会員管理・決済システムの契約、会員の個人データの扱い
ガイドラインは、リース契約・賃貸借契約などの名義変更や保証人の変更は、クロージングの前からリース会社・賃貸人と協議を始めることが多いと説明しています。特にチェンジ・オブ・コントロール条項がある場合は、事前の協議が必要になることがあります。
よくある質問
個人事業主のジムでも売却できますか?
中小M&Aガイドラインでは、個人事業主の中小M&Aは事業譲渡(営業譲渡)の手法を用いるのが通常とされています。会員契約や物件の契約を一つずつ移す必要があるため、早めに相談先と段取りを決めてください。
ジムの売却にはどのくらい時間がかかりますか?
相手が見つかるまでの期間は案件ごとに大きく違います。ガイドラインは、成約後の引き継ぎの作業にも3か月〜1年程度かかることが多いとしています。閉店の期限が決まっている場合は、居抜き売却も並行して考えておくと安心です。
赤字のジムでも売れますか?
赤字でも、立地・設備・会員基盤に価値を見いだす買い手がいることはあります。ガイドラインの事例にも、経営状況が良好でない中小企業でM&Aが成立したケースが紹介されています。売れるかどうかは条件しだいのため、相談先で評価を受けてください。
売却に使える補助金はありますか?
中小企業庁の「事業承継・M&A補助金」には、M&Aの専門家の費用を補助する専門家活用枠などがあります(十六次公募の公募要領を2026年10月23日に確認)。公募ごとに条件や期間が変わるため、公式サイトで最新の情報を確かめてください。
出典
- 中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」(令和6年8月、2026年10月23日確認)
- 中小企業基盤整備機構「事業承継・引継ぎ支援センター」(2026年10月23日確認)
- 日本政策金融公庫「事業承継支援」(2026年10月23日確認)
- 中小企業庁「事業承継・M&A補助金(十六次公募)の公募要領を公表します」(2026年10月23日確認)
- 中小企業庁「事業承継」(M&A支援機関登録制度の公表など)(2026年10月23日確認)
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