【3つの線で決める】ジムの撤退基準を開業前に決める方法|計算式つき
ジムの撤退の基準は、開業前に「会員数」「手元資金」「期間」の3つの線で決め、紙に書いておくのが実用的です。たとえば「開業12か月目に会員が損益分岐の8割に届かない」「手元資金が固定費の3か月分を切った」のどちらかに当たったら、立て直しか撤退かを決める会議を開く、という形です。数字は自分の損益分岐から計算し、撤退にかかるお金(原状回復・リースの清算・解約予告の期間の家賃)も先に見積もっておくと、判断が遅れにくくなります。
業態別の投資回収の目安(ジム開業ナビの試算モデル)
ジムの撤退基準を開業前に決める理由
開業した後は、毎日の運営と「もう少しで良くなるはず」という気持ちで、判断が遅れがちです。撤退の基準を先に決めておく目的は、やめることではなく、立て直しか撤退かを「決める日」を逃さないことにあります。基準に当たったら必ず話し合う、と家族や共同経営者、税理士と共有しておくと効き目が増します。
| 基準の種類 | 見るもの | 決め方の例 |
|---|---|---|
| 会員数の線 | 損益分岐の会員数に対する達成率 | 12か月目に80%に届かない |
| 資金の線 | 手元資金 ÷ 毎月の固定費 | 固定費の3か月分を切った |
| 期間の線 | 赤字が続いた月数 | 単月の赤字が6か月続いた |
| 退会の線 | 月の退会率 | 3か月続けて計画の退会率を上回った |
表の数字はすべて考え方を示す例です。自分の業態・資金・借入の条件に合わせて決めてください。
会員数の線:損益分岐から逆算する
会員数の線は、損益分岐の会員数を出すところから始めます。
- 損益分岐の会員数 = 毎月の固定費 ÷(月会費 − 会員1人あたりの変動費)
- 会員数が落ち着く先 = 月の新規入会 ÷ 月の退会率
ジム開業ナビの試算モデル(2026年10月)では、業態ごとの損益分岐は次のとおりです。
| 業態 | 損益分岐 |
|---|---|
| 24時間ジム30坪 | 232人 |
| パーソナルジム15坪 | 46人 |
| 総合ジム120坪 | 634人 |
| ファンクショナル60坪 | 174人 |
ここで大事なのは、2つ目の式です。
24時間ジム30坪の損益分岐は232人です。新規入会と退会率による会員数の頭打ちを比べます(計算のための例)。
| 月の新規入会 | 会員数の目安 | 損益分岐との比較 |
|---|---|---|
| 15人(退会率5%) | 300人前後 | 超える |
| 10人(退会率5%) | 200人前後 | 届かない |
会員数の線は、ある月の会員数だけでなく、「入会と退会のペースで、そもそも損益分岐に届く形か」で引くのがポイントです。開業から数か月の入会と退会の実績が出たら、落ち着く先の会員数を計算し直し、損益分岐を下回るなら、その時点で立て直しの検討に入ります。
資金の線と、撤退にかかるお金
撤退にもお金がかかります。手元資金が尽きてからでは、原状回復やリースの清算に払うお金が残らず、選べる道が狭くなります。資金の線は「撤退にかかるお金を払っても、生活と借入の返済が続けられる残高」で引きます。
| 撤退にかかるお金 | 根拠・確かめ方 |
|---|---|
| 解約予告の期間の家賃 | 賃貸借契約の解約予告の条項。期間の定めのない建物の賃貸借は、民法第617条で申し入れから3か月で終わる |
| 原状回復の工事 | 民法第621条。借りた後の損傷を元に戻す(通常の損耗・経年変化は除く)。工事の見積もりを取る |
| マシンのリースの残り | リース契約は契約に定める場合を除き解除できない(リース事業協会の契約条項の例)。途中で終えるときの額を確かめる |
| スタッフへの予告・手当 | 労働基準法第20条。少なくとも30日前の予告か、30日分以上の平均賃金 |
| 会員への返金 | 前払いの月会費・回数券などの残り |
条文は e-Gov法令検索とリース事業協会のページで2026年10月23日に確かめました。例として、毎月の固定費が200万円で、撤退にかかるお金の見積もりが800万円なら、「手元資金が 800万円 + 固定費3か月分の600万円 = 1,400万円を切ったら判断の会議」という線が引けます(数字は計算のための例)。
借入がある場合は、返済の予定も入れます。日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」は、運転資金の返済期間10年以内のうち据置期間5年以内などの条件が示されています(2026年10月23日確認)。据置が終わって返済が始まる月は、資金の線に当たりやすい時期です。
撤退の線に近づいたら、まず立て直しでどこまで戻せるかを数字で比べましょう。今の会員数・月会費・退会率を入れると、会費の見直し・退会の改善・パーソナルや物販の追加で利益がいくら変わるかを試算できます。
収益改善シミュレーションを無料で使う基準に当たったときの決め方と、撤退以外の道
基準に当たったら、すぐに閉めるのではなく、決めておいた順番で道を比べます。撤退は最後の選択肢の一つです。
立て直し案には、試す期間と、成果を測る数字(入会数・退会率など)を決めます。期限を決めずに続けると、資金の線を越えてしまいます。
よくある質問
ジムの撤退基準は何か月目に置くのがよいですか?
決まった答えはありません。業態ごとの回収までの期間や、会員が増えるペースで変わります。ジム開業ナビの試算モデル(2026年10月)の回収は、24時間ジム30坪で17か月目、ファンクショナル60坪で45か月目と差があるため、自分の計画の数字で決めてください。
撤退基準は事業計画書に書くべきですか?
融資の審査で求められる項目ではない場合もありますが、自分と家族・共同経営者のための計画として持っておくと役に立ちます。数字の根拠も一緒に残しておきます。
赤字でも続けたほうがよい場合はありますか?
開業直後は会員が増える途中なので、赤字は計画のうちのことがあります。大事なのは、入会と退会のペースから見て損益分岐に届く形かどうかです。届く形で資金も足りるなら、続ける判断もあります。
撤退を決めたら最初に何をしますか?
賃貸借・リース・雇用・会員規約の契約を集め、解約の期限と費用を一覧にします。関連記事「ジムのリース残債」で、リースの扱いを整理しています。
出典
- ジム開業ナビ「ジム開業の費用」試算モデル(2026年10月)
- e-Gov法令検索「民法」第617条・第621条(2026年10月23日確認)
- e-Gov法令検索「労働基準法」第20条(2026年10月23日確認)
- 公益社団法人リース事業協会「リース契約書の主な条項」(2026年10月23日確認)
- 日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」(2026年10月23日確認)
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