IPF GLポイントとは 計算式と係数、Wilks・DOTSとの違いを例で解説
IPF GLポイントは、IPFが2020年5月から使う、体重の違う選手を比べるための点数だ。公式の式と8組の係数、公式文書と一致させた計算例、100点に必要なトータル、Wilks・DOTSとの違い、日本の大会の記録表で使われている点数との一致を確かめた。
IPF GLポイントは、国際パワーリフティング連盟(IPF)が2020年5月1日から使う、体重の違う選手の記録を比べるための点数である。記録(kg)に体重から求めた係数を掛けて出し、同じ体重のエリート選手の水準をおよそ100点とする。
2026年10月21日 公開|KINNIKU TIMES 編集部
パワーリフティングの大会結果を見ると、トータルの横に「IPF Points」「IPFポイント」という数字が並んでいることが多い。これがIPF GLポイントである。本記事は、IPF公式サイトの「IPF GL Formula」ページに掲載された導入のお知らせ、係数の解説書(IPF GL Coefficients)、5つの方式を比べた評価報告書を10月21日時点で確認し、公式の式と係数で計算例を作った。計算は編集部が行い、公式文書に載っている2つの計算例と小数第6位まで一致することを確かめている。
IPF GLポイントとは何か、なぜ必要なのか
パワーリフティングは体重階級制の競技で、順位はまず階級ごとのトータル(スクワット・ベンチプレス・デッドリフトの合計)で決まる。ところが、大会全体の最優秀選手(ベストリフター)を選ぶときや、軽量級と重量級の記録の価値を比べたいときには、体重の差をならす仕組みが要る。体重が重いほど持ち上げられる重量は増えるが、体重1kgあたりの重量は下がっていくためだ。
IPFの係数解説書は、この問題を「相対評価」と呼び、記録を点数に変える規則(スコアリング・スケール)を式で定めている。IPFのテクニカルルールブック(2026年3月1日施行版)も、IPFの選手権では「IPFフォーミュラ」に基づく最高の成績を挙げた選手にベストリフター賞を贈ると定めている。
名前の「GL」はGOODLIFTの略
解説書によると、「GL」は、IPFの公式記録システムGOODLIFTの開発チームが提案した式であることを示し、2019年まで使われていた以前のIPFフォーミュラと区別するための略称である。公式文書では、式を「IPF GL Formula」、係数を「IPF GL Coefficient」、点数を「IPF GL Points」と呼び、記録表では「GLP」と略してよいとされる。なおIPFは2026年10月7日、GOODLIFTに代わる新しい管理基盤「IPF Nomination & Scoring System(IPF NS)」の運用開始を発表している。
導入の経緯
IPFの加盟団体あてのお知らせによると、IPFは2018年に当時の新しいIPFフォーミュラへ切り替えたが、2019年の検証で、すべての階級に対してまだ公平ではないと判断した。検証はOleksandr Kopayev氏、Borys Onyshchenko博士、Anatoliy Stetsenko博士のチームが担当した。その結果、IPF理事会はIPFフォーミュラをIPF GLポイントに置き換えることを決め、2020年5月1日から世界選手権や地域選手権などIPF公認のすべての大会で使うことになった。IPFは加盟各国にも、国内大会で同じ方式を使うよう求めている。
IPF GLポイントの計算式と係数
IPF GLポイントは2段階で計算する。まず体重から係数を出し、次に記録へ掛ける。
- IPF GL係数 = 100 ÷(A − B × e−C×体重)
- IPF GLポイント = IPF GL係数 × 記録(kg) ※記録が0なら0点
eは自然対数の底(約2.71828)、体重はkgで、男子は40kg以上、女子は35kg以上が対象とされる。A・B・Cは定数で、性別、ギアの有無(イクイップド/クラシック)、種目(3種目のパワーリフティング/ベンチプレス単独)の組み合わせごとに8組が決められている。
| 区分 | A | B | C |
|---|---|---|---|
| 男子 イクイップド パワーリフティング | 1236.25115 | 1449.21864 | 0.01644 |
| 男子 クラシック パワーリフティング | 1199.72839 | 1025.18162 | 0.00921 |
| 男子 イクイップド ベンチプレス | 381.22073 | 733.79378 | 0.02398 |
| 男子 クラシック ベンチプレス | 320.98041 | 281.40258 | 0.01008 |
| 女子 イクイップド パワーリフティング | 758.63878 | 949.31382 | 0.02435 |
| 女子 クラシック パワーリフティング | 610.32796 | 1045.59282 | 0.03048 |
| 女子 イクイップド ベンチプレス | 221.82209 | 357.00377 | 0.02937 |
| 女子 クラシック ベンチプレス | 142.40398 | 442.52671 | 0.04724 |
出典はIPF公式の「THE IPF GL COEFFICIENTS FOR RELATIVE SCORING」(2020年5月)。係数は小数第6位で丸め、それに記録を掛けた点数も小数第6位で丸める。総合の記録表では点数を小数第3位まで、詳細な記録表では第6位まで表示する決まりだ。体重は0.01kg刻みで計量されるため、係数も体重ごとに細かく変わる。
「100点」はエリート選手の平均水準
解説書は、式の中の100という数字を偶然選んだのではないと説明している。係数はIPFの国際大会と欧州大会の公式記録、世界記録・欧州記録(2011年以降)から作った「ゴールデン・スタンダード」の標本を回帰分析して求めたもので、各体重のエリート選手の平均的な水準を100点に置いている。つまり80点なら、同じ体重のエリート水準のおよそ8割の記録という目安になる。式の形は、体重が増えるほど記録は伸びるが伸び方は鈍り、やがて上限に近づくという考え方から導かれている。
IPF GLポイントの計算例(男子・女子)
まず、IPFの解説書に載っている公式の計算例を、同じ式で再計算した結果である。
| 公式の例 | 体重 | 記録 | 係数 | GLポイント |
|---|---|---|---|---|
| 男子イクイップド パワーリフティング(2019年世界選手権、-93kg級) | 92.04kg | トータル1035.0kg | 0.109039 | 112.855365 |
| 女子クラシック ベンチプレス(2019年世界クラシックベンチ、-72kg級) | 70.50kg | 122.5kg | 0.790069 | 96.783453 |
次に、日本の大会で多いクラシック(ノーギア)を例に、編集部が公式の式で計算した値を示す。体重と記録は説明のための仮の数字である。
| 区分 | 体重 | 記録 | 係数 | GLポイント |
|---|---|---|---|---|
| 男子クラシック パワーリフティング | 60kg | トータル450kg | 0.163992 | 73.80 |
| 男子クラシック パワーリフティング | 83kg | トータル600kg | 0.138427 | 83.06 |
| 男子クラシック パワーリフティング | 120kg | トータル750kg | 0.116246 | 87.18 |
| 女子クラシック パワーリフティング | 57kg | トータル350kg | 0.234566 | 82.10 |
| 女子クラシック パワーリフティング | 63kg | トータル400kg | 0.218783 | 87.51 |
| 男子クラシック ベンチプレス | 80kg | 150kg | 0.511916 | 76.79 |
83kgで600kgの選手と、120kgで750kgの選手では、トータルは150kg違うが、GLポイントの差は4点ほどである。反対に60kgで450kgは、トータルが軽く見えても73.80点となる。体重が増えるほど係数が小さくなるため、単純なトータルの比較とは順位が入れ替わることがある。
100点に届くトータルは体重でどう変わるか
係数の逆数に100を掛けると、その体重で100点になるトータルが出る。男子クラシック・パワーリフティングで計算すると次のとおりだ(いずれも編集部の計算)。
| 体重(男子) | 係数 | 100点に必要なトータル | 体重(女子) | 係数 | 100点に必要なトータル |
|---|---|---|---|---|---|
| 59kg | 0.165473 | 約604kg | 47kg | 0.277202 | 約361kg |
| 74kg | 0.146810 | 約681kg | 57kg | 0.234566 | 約426kg |
| 93kg | 0.130821 | 約764kg | 69kg | 0.207173 | 約483kg |
| 120kg | 0.116246 | 約860kg | 84kg | 0.188849 | 約530kg |
この数字は「エリートの平均水準」の目安で、一般の愛好家が目指す基準ではない。自分の記録を一般のトレーニー全体の中で位置づけたいなら、筋トレ偏差値のほうが分かりやすい。体重あたりの倍率で考える方法はベンチプレスは体重の何倍が目安かの記事で扱っている。
Wilks・DOTSとIPF GLポイントの違い
体重差をならす方式はGLだけではない。IPFは導入にあたり、GL、当時のIPFフォーミュラ、以前使われていたWilks(ウィルクス)、Wilks-2(Wilks 2.0)、DOTSの5つを比べた評価報告書を公開している。報告書の付録には各方式の式が載っており、WilksとDOTSは体重の多項式(Wilksは5次、DOTSは4次)で係数を作り、500を基準に点数を出す。GLは指数関数を使い、100を基準にする点が違う。
| 項目 | IPF GL | Wilks | DOTS |
|---|---|---|---|
| 式の形 | 100÷(A−B·e−C·体重) | 500÷体重の5次式 | 500÷体重の4次式 |
| 係数の組 | 男女×ギアの有無×種目の8組 | 男女の2組 | 男女の2組 |
| 点数の目安 | エリート平均=約100点 | 数百点台 | 数百点台 |
| IPFの評価(変動係数の順位の合計、小さいほど良い) | 11 | 31 | 23 |
| 83kg・600kgの例(編集部計算) | 83.06 | 400.50 | 405.05 |
評価報告書は、エリート選手の記録を世界記録からの距離ごとの層に分け、各方式で点数のばらつき(変動係数)がどれだけ小さいかを8区分で順位づけした。合計はGLが11で最も良く、DOTS 23、Wilks-2 27、当時のIPFフォーミュラ28、Wilks 31の順だった。ただし区分によっては他の方式が上回る場面もあり、たとえば女子クラシック・パワーリフティングではWilksが1位、GLは2位だった。GLが最も小さい値になったのは、評価した8区分のうち5区分である。
WilksやDOTSには男女の2組しか係数がないため、ギアの有無やベンチプレス単独でも同じ係数を使う。GLは区分ごとに係数を分けており、IPFの統計分析で性別・ギア・種目が記録に大きく影響することが分かったためだと解説書は説明している。点数の大きさが違うので、GLの83点とWilksの400点を直接比べることはできない。
日本の大会でもIPF GLポイントは使われているのか
JPA(日本パワーリフティング協会)はIPFに加盟しており、国内大会の結果表にも「IPF Points」「IPFポイント」の欄がある。編集部は、JPAの大会情報ページに掲載された2026年5月31日の第38回静岡県ベンチプレス選手権大会と、6月7日の第78回石川県民スポーツ大会(ベンチプレス競技)の記録表から5人分を選び、体重と記録をGLの式(クラシック・ベンチプレスの係数)に入れて計算した。5人とも記録表の点数と小数第2位まで一致した。たとえば男子59kg級で体重58.00kg、記録112.5kgの選手は68.53点、男子66kg級で体重65.75kg、152.5kgの選手は86.68点である。
JPAの国内ルールブック(2026年4月14日改訂版)も、ベストリフターは「IPFポイント」で順位を決めると定めている。係数はエクイップ・クラシック、男女、パワーリフティング・ベンチプレスごとに決まっており、検量体重とトータルから点数を出す。点数が同じなら検量体重の軽い選手が上位で、体重も同じなら先にその記録を出した選手が上位になる。
大会の表彰で点数をどう使うかは、大会ごとの要項で決まる。たとえば2026年10月18日に栃木県芳賀町で開かれた第43回全日本実業団パワーリフティング(ノーギア)選手権大会の要項は、最優秀選手賞や3種目ベストリフター賞を設けているが、算出方法は要項に書かれていない。出場する大会の要項を確かめるとよい。大会の仕組み全体はパワーリフティングとは、階級はパワーリフティングの階級の記事にまとめている。
係数は将来変わる可能性がある
IPFの係数解説書の表紙には「2020年5月1日から2023年12月31日まで有効」と書かれている。解説書自体も、係数は時間とともに変わるため4年周期で見直し、ワールドゲームズの前年に計算し直すのが妥当だとしている。一方、10月21日時点でIPF公式の「IPF GL Formula」ページに掲載されている係数は2020年版だけで、新しい係数の発表は見当たらなかった。静岡・石川の2026年の記録表が2020年版の係数と一致したことから、国内では現在もこの係数が使われていると考えられる。
よくある質問
IPF GLポイントは何点なら強いのですか
公式の定義では、同じ体重のエリート選手の平均水準がおよそ100点である。2019年の男子イクイップドの世界選手権で、93kg級の選手は112.86点だった。編集部が確かめた2026年の静岡・石川のベンチプレス大会の記録表では、40点台後半〜80点台の選手が並んでいたが、これは2大会の結果表の範囲での話で、公式の基準ではない。
IPFポイントとIPF GLポイントは同じものですか
現在の国内外の結果表にある「IPF Points」は、多くがIPF GLポイントを指す。ただしIPFは2018〜2019年に別の「IPFフォーミュラ」(500点基準)を使っていたため、その時期の記録表の点数とは計算方法が違う。
WilksやDOTSの点数をGLに換算できますか
簡単な換算はできない。基準となる点数(500と100)だけでなく、体重に対する係数の曲線も違うためだ。換算するなら、体重と記録からGLの式で計算し直すのが正確である。
ノーギアとフルギアで点数は比べられますか
GLは区分ごとに別の係数を使い、それぞれのエリート平均を100点に合わせているので、点数の水準はそろえてある。ただし、IPFの表彰は区分ごとに行われるのが原則で、同じ表の中で比べる使い方はしない。ギアの違いはノーギアとフルギアの違いを参照してほしい。
体重が軽い日に検量すると有利ですか
同じ記録なら、体重が軽いほど係数は大きく、点数は高くなる。ただし減量で記録が落ちれば逆効果になる。検量のタイミングや体重の扱いはパワーリフティング大会の初出場ガイドで解説している。
KINNIKU TIMESの視点
GLポイントの利点は「100点=同じ体重のエリート平均」という分かりやすさにある。Wilksの400点と言われてもピンとこないが、GLの80点なら「エリートの8割」と読める。軽量級の選手が重量級の選手と自分の力を比べるときの物差しとしても役に立つ。
初心者への助言は2つある。一つは、点数は順位を決めるための道具であって、トレーニングの目標そのものにはしないことだ。点数を上げるために体重を落とすより、まず記録を伸ばすほうが結果につながる。もう一つは、比べる相手の区分(男女・ギア・種目)をそろえることだ。結果表の点数を見るときは、どの区分の係数で計算されたかを確かめたい。
係数の有効期限が表紙では2023年末とされながら、10月21日時点で新しい係数は公表されていない。IPFは10月に新しい管理基盤IPF NSを立ち上げたばかりで、今後の見直しの発表があればKINNIKU TIMESで報じる。試技の重量の組み立ては第一試技の重量の決め方、プレートの付け方は重量計算機も使ってほしい。
出典
- International Powerlifting Federation「IPF GL Formula」
- IPF「The IPF GL Coefficients for Relative Scoring」(2020年5月, PDF)
- IPF 加盟団体あてのお知らせ「IPF GL Formula」(PDF)
- IPF「Evaluation of Wilks, Wilks-2, DOTS, IPF and Goodlift Formulas」(PDF)
- IPF Technical Rulebook(2026年3月1日施行, PDF)
- IPF「IPF launches new Nomination & Scoring System」(2026年10月7日)
- 日本パワーリフティング協会 ルールブック(2026年4月14日改訂, PDF)
- 第38回静岡県ベンチプレス選手権大会 記録表(JPA大会情報, PDF)
- 第78回石川県民スポーツ大会 ベンチプレス競技 記録(JPA大会情報, PDF)
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