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パワーリフティングの判定とは 白赤ライトとIPF2026年ルールの失敗理由

公開 ・ KINNIKU TIMES 編集部 ・ 読了目安 16分
パワーリフティング大会の審判・運営席に座る役員と、試技の残り時間を表示するタイマー
SUMMARY|この記事の要約

パワーリフティングの成否は、主審と副審2人の計3人が白か赤のライトで示し、白2つ以上で成功となる。主審の合図の一覧、赤・青・黄の失敗理由カード、3種目それぞれのよくある失敗を、IPF技術ルールブック2026とJPA国内ルールから整理した。

パワーリフティングの試技は、主審1人と副審2人の計3人が白(成功)か赤(失敗)のライトを同時に示し、多数決で決まる。白が2つ以上なら成功だ。基準はIPF技術ルールブックが種目ごとに定め、日本ではJPAが国内ルールを加えて運用している。

2026年10月21日 公開|KINNIKU TIMES 編集部

パワーリフティングは「何kg挙げたか」を競う測定競技に見えるが、記録として認められるのは審判が成功と判定した試技だけである。初めて大会に出る人がつまずきやすいのは、重さそのものより「合図を待たなかった」「しゃがみが浅かった」といった判定上の失敗だ。本記事は、国際パワーリフティング連盟(IPF)が2026年3月1日から施行している技術ルールブックと、その改定説明書、公益社団法人日本パワーリフティング協会(JPA)の国内ルールブック(2026年4月14日改訂)を読み、判定の仕組みと失敗の理由を整理した。

JPA公式のルール・通達ページを見る

パワーリフティングの判定は誰がどう決めるのか

IPFのルールでは、審判は「チーフレフリー(主審)」1人と「サイドレフリー(副審)」2人の3人で構成される。主審は選手の正面側、副審は左右に座り、3種目とも試技の様子を4m以内の距離から観察する。開始や終了の合図を出すのは主審だけである。

試技が終わってバーがラックや床に戻されると、3人は手元のスイッチで白か赤のライトを点ける。ライトは3人分が横一列に並び、1人ずつではなく同時に点灯する仕組みでなければならない。停電などでライトが使えないときのために、審判は白と赤の旗も用意する。JPAの国内ルールは「各試技の判定は、3名のレフリーによる多数決によって決定される」と明記しており、白2つ・赤1つなら成功、白1つ・赤2つなら失敗となる。ライトは3〜5秒表示するよう定められている。

失敗の判定が出ると、審判は失敗の理由を示すカード(またはパドル、ライト)を掲げる。JPAのルールでは全国大会でこのカードを使い、ライトの点灯から3秒後に示すとしている。カードは赤・青・黄の3色で、色ごとに対応する反則が決まっている(後述の表)。

ジュリー(陪審員)とビデオ判定

審判とは別に、大会には「ジュリー(陪審員)」が置かれ、ルールが正しく運用されているかを監督する。IPFのルールでは、審判の判定に明白な誤りがあった極端な場合に限り、ジュリーは判定を覆すことができるが、対象は2対1に割れた判定だけである。3人のジュリーの場合は全員一致が必要だ。2026年版では、ジュリーが映像による判定の確認(リプレイ)を公式の道具として使えることも明文化された。ただし使えるのは機材と人員がそろったIPFの大会などに限られる。

JPAはよくある質問の中で、審判はおよそ3秒間の動作を観察し、ルールに反せず成功したかどうかを二者択一で判断していると説明している。見る位置によって判断が異なることがあるため、陪審員を含む複数人で判定する仕組みにしているという。

主審の合図はいつ出るのか 3種目の合図一覧

判定で最も多い失敗の一つが、主審の合図を待たずに動いてしまうことだ。合図は声と手の動きの両方で出される。IPFのルールブックに定められた合図を表にまとめた。

種目 開始の合図 途中の合図 完了の合図
スクワット 「スクワット」(腕を振り下ろす) なし 「ラック」(腕を後ろに振る)
ベンチプレス 「スタート」(腕を振り下ろす) 「プレス」(胸で静止した後、腕を上げる) 「ラック」(腕を後ろに振る)
デッドリフト なし(選手のタイミングで開始) なし 「ダウン」(腕を振り下ろす)

スクワットとベンチプレスでは、ラックからバーを外して構えた選手が静止し、正しい姿勢になったところで開始の合図が出る。構えに問題があれば合図は出ず、副審は手を挙げて主審に知らせる。IPFのルールでは、構えてから5秒たっても正しい開始姿勢にならない場合、安全のために「リプレイス(バーを戻せ)」の合図が出され、主審が理由を伝える。試技を最後まで完了できなかった場合(途中で潰れた場合)の合図は「ラック」である。デッドリフトには開始の合図がなく、バーが少しでも床から浮けば1回の試技として数えられる。

失敗理由のカード「赤・青・黄」は何を意味するのか

失敗理由のカードは、どの反則で赤ライトが点いたかを選手に伝えるためのものだ。IPFルールブック2026とJPA国内ルールの記載をもとに、主な内容を整理した。

カード スクワット ベンチプレス デッドリフト
1番・赤 しゃがみが浅い(股関節部の大腿上面が膝の上面より低くならない) バーが胸・腹に届かない、ベルトに触れる、肘の下側が肩関節の上面と同じ高さまで下がらない 完了時に膝が伸びていない、肩が後ろに返っていない(三角筋前部がバーの延長線より後ろにない)、直立していない
2番・青 開始・完了時に膝が伸びていない、ボトムでの二度弾み、立ち上がり中にバーが下がる 押し上げ中にバー全体が下がる、開始・完了時に肘が伸び切らない 引き上げ途中でバーが下がる、バーを太ももで支える
3番・黄 足が前後左右に動く、合図違反、補助員の接触、肘や上腕が脚に触れて支えになる、完了後にバーを落とす 合図違反、バーが胸で沈む・弾む、上半身の反動、頭・肩・臀部が浮く、手が横にずれる 合図前にバーを下ろす、両手でコントロールせずにバーを戻す、足が動く

2026年版の改定説明書によると、ベンチプレスで開始時と完了時のどちらで肘が伸び切っていなかった場合も、青カードとして扱うことが明確にされた。デッドリフトの完了姿勢は「三角筋の前部がバーの仮想延長線より後ろにあること」と書き加えられたが、IPFは技術的な基準そのものを変えたのではなく、審判の解釈をそろえるための明確化だと説明している。

スクワットの判定 深さはどこまでしゃがめばよいのか

スクワットで問われるのは、何よりしゃがみの深さである。IPFのルールは、主審の合図の後に膝を曲げ「股関節部の大腿上面が膝の上面より低くなる」までしゃがむことを求めている。JPAの国内ルールは、太ももが床と平行になった状態でもまだ浅く、「平行は失敗となる」と書いている。横から見て、脚の付け根の折れ目が膝の皿の上端より下に入っているかが目安になる。しゃがむ動作は1回しか認められない。

国際大会でバーベルを担いでしゃがみ込む日本代表の女子選手と、両側で構える補助員
画像:日本パワーリフティング協会 公式サイト「各種取組・会員紹介」より

開始と完了の姿勢も判定の対象だ。選手はラックからバーを外して後ろに下がり、膝を伸ばして直立し静止したところで「スクワット」の合図を受ける。立ち上がったら膝を完全に伸ばして静止し、「ラック」の合図を待つ。立ち上がりの途中でバーが下がる、ボトムで二度弾む、足が前後左右に動くといった動作は失敗になる。つま先とかかとの間で足が揺れる程度は認められ、「ラック」の合図の後に足が動くのは失敗の理由にならない。

バーの位置と補助員

バーは肩に水平に担ぎ、後部三角筋より低い位置にしてはならない。IPFの改定説明書は、バーを低く担いで上体を大きく倒す姿勢を防ぎ、とくに体が発達途中のサブジュニアやジュニアの腰を守る目的があると説明している。プラットフォームには2〜5人の補助員が立つが、合図と合図の間に補助員がバーや選手に触れると失敗となる。ただし補助員の過失で失敗した場合は、同じ重量でやり直しが認められる。深さの基準を練習で身につけるにはスクワットのやり方と正しいフォーム、深くしゃがむ効果についてはフルスクワットとハーフスクワットの比較研究が参考になる。

ベンチプレスの判定 「プレス」の合図と肘の深さ

ベンチプレスは合図が3回ある唯一の種目で、判定の項目も最も多い。選手はベンチに仰向けになり、頭・両肩・臀部をベンチの面につけ、足の裏を床(または足台)に平らにつける。バーは親指を回した「サムアラウンドグリップ」で握り、両手の人差し指の間隔は81cm以内でなければならない。親指を回さない握り方や逆手は禁止されている。

ラックからバーを外したら肘を伸ばして静止し、「スタート」の合図を待つ。合図の後にバーを胸か腹まで下ろし、いったん静止させる。主審が静止を確認して「プレス」と言ったら押し上げ、肘を伸ばして静止したところで「ラック」の合図が出る。バーがベルトに触れたり胸に届かなかったりした場合も、主審の合図は「ラック」になる。JPAの国内ルールでは、3秒待ってもバーが胸につかない場合に「ラック」の合図をするとしている。

2026年版で明記された「肘の高さ」

IPFの2026年版は、バーを胸に下ろしたとき「両肘の関節の下側が、それぞれの肩関節の上面と同じ高さか、それより下」になることを求め、満たさなければ赤カードの失敗とした。胸を高く張ってバーの移動距離を極端に短くするフォームへの基準である。JPAは2023年5月に「ベンチプレス肘判定について」の通達を出し、判定の規準となるビデオを作って国内の判定方法を統一している。JPAはその中で、国際大会でも肘の判定はまだ不安定だと認めており、国際大会に出る選手には臨機応変に対応できる練習を勧めている。

頭・肩・お尻が浮く、反動を使う

試技中に頭、肩、臀部がベンチから浮く、手が横にずれる、足がベンチや支柱に触れる、胸でバーを沈めたり弾ませたりする、上半身の反動で押し上げを始める、といった動作はいずれも失敗である。IPFの改定説明書は、「プレス」の合図の後に勢いをつける目的で胸郭を下げる動作も認めないと説明している。JPAの国内ルールは、臀部は一点ではなく、ある程度の面としてベンチに接していなければならないと補足している。フォームの基本はベンチプレスのやり方とフォーム、ベンチプレス単独の大会についてはベンチプレス大会に出るにはで解説している。

デッドリフトの判定 「ダウン」の合図と肩の位置

デッドリフトでは、床に置いたバーを両手で握り、一続きの動作で完全な直立姿勢まで引き上げる。握り方は自由で、片手を逆手にするオルタネイトグリップも使える。完了の条件は、膝が伸び切り、三角筋の前部(肩の前側)がバーの真上に伸ばした仮想の線より後ろにある姿勢で静止することだ。主審はバーが静止し、選手が完了姿勢をとったのを確認してから「ダウン」と言い、腕を振り下ろす。

大会でデッドリフトを引き上げ、膝を伸ばして直立する男子選手
画像:Wikimedia Commons(U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Jordan Gonzalez, パブリックドメイン)より

引き上げの途中でバーが下がる、膝を前に出してバーを太ももに乗せ、こすり上げるようにして仕上げる、合図の前にバーを下ろす、といった動作は失敗となる。肩を後ろに返す瞬間にバーがわずかに下がるのは失敗の理由にならない。IPFのルールは、バーが太ももをこすり上がっても支えにしていなければ失敗ではなく、疑わしい場合は選手に有利に判定すると定めている。

日本独自の「下ろし方」のルール

「ダウン」の合図の後も、バーは両手でコントロールしたまま床に戻さなければならない。IPFのルールは、手のひらからバーを離して床に戻すことを失敗と定めている。JPAの国内ルールはさらに踏み込み、コントロールして下ろす意思のない選手の試技を「日本国内独自のルール」として失敗とする。JPAは基準ビデオも作っており、ダウン時に力が途切れてバーが急に落ちるものは、手を添えていても国内では失敗として扱うと説明している。2026年3月には、アップ場でバーを落とすなど器具を乱暴に扱う行為に対し、3枚の累積で退場となる警告カード制度も導入された。練習の段階から下ろす動作まで丁寧に行う習慣が必要だ。動作の基本はデッドリフトのやり方とフォームにまとめている。

大会でよくある失敗と防ぎ方

失敗の起きやすさには種目差がある。国際パワーリフティング連盟の大会データ(9万3333人分)を分析したアイルランドの研究(Darraghら、Journal of Strength and Conditioning Research、2026年)によると、第1試技に成功した選手が第2・第3試技を成功させた割合は、男子でスクワット77%、ベンチプレス66%、デッドリフト74.4%だった。ベンチプレスは男女とも最も成功率が低く、男子の第3試技では49%にとどまった。この研究は重量の上げ幅との関係を調べたもので、失敗の理由(判定上の反則か挙げきれなかったか)は区別していない。

よくある失敗 起きやすい場面 練習での防ぎ方
しゃがみが浅い 重量が重くなる第2・第3試技 横から動画を撮り、股関節が膝より下に入っているか確かめる。仲間に「深さ」を声かけしてもらう
合図を待たない ベンチの「プレス」、デッドの「ダウン」前に下ろす 練習でも誰かに合図を出してもらい、静止してから動く癖をつける
胸での静止不足 ベンチプレスで重量が重いとき 胸で一瞬止めてから押す「止めベンチ」を普段から行う
お尻が浮く ベンチで足を強く踏み込んだとき 足の位置と踏み込む向きを決め、お尻をつけたまま押し切る練習をする
膝・肩のロック不足 デッドリフトの完了時 完了姿勢で1秒静止する練習を入れる
下ろし方の失敗 デッドリフトの「ダウン」後 最後まで両手で握ったまま床に戻す

重量を欲張ると判定上の失敗も増えやすい。どの重量から始め、どれだけ上げるかは第一試技の重量の決め方で解説した。

判定に納得できないときはどうするのか

IPFの国際大会では、審判の判定への異議は、チームの監督やコーチ(不在なら選手本人)が、問題の試技の直後にジュリーの長に申し立てる。ジュリーが審議して全員一致で出した結論が最終であり、ほかの機関に上訴する権利はない。前述のとおり、ジュリーが判定を覆せるのは明白な誤りがあり、かつ2対1に割れた判定に限られる。

国内の大会で判定の扱いがどうなるかは、大会の運営体制によって異なる。JPAは、有資格の審判団が下した試技の正否はその時点で確定するという特性から、過去の判定を基準ビデオと比べて批判するのは競技上のマナー違反だとしている。判定は選手の不利益にもなり得るが、同じ基準で全選手を見ていることが前提の競技であり、疑問は大会の場で正規の手順で伝えるのが筋である。

よくある質問

白ライトが1つだけでも成功になりますか

ならない。判定は3人の審判の多数決で、白が2つ以上で成功、赤が2つ以上で失敗となる。白1つ・赤2つの場合は失敗である。

スクワットは太ももが床と平行になれば成功ですか

成功にならない。IPFのルールは股関節部の大腿上面が膝の上面より低くなることを求めており、JPAの国内ルールも「平行は失敗となる」と明記している。平行より少し深くしゃがむ必要がある。

ベンチプレスで足のかかとが浮くと失敗ですか

IPFとJPAのルールは、足の裏を床に平らにつけ、その状態を試技中保つことを求めている。足の位置が動くこと自体は認められるが、床に平らに接していなければならない。靴の形に沿った範囲で平らであればよいとされる。

デッドリフトでバーを落とすとどうなりますか

失敗になる。IPFのルールでは両手でコントロールせずに床に戻すと失敗で、JPAの国内ルールは、コントロールして下ろす意思がない試技も国内独自のルールとして失敗としている。

失敗理由のカードは地方大会でも出ますか

JPAの国内ルールが失敗理由のカードの使用を定めているのは全国大会である。地方大会でカードが使われるかどうかは大会によって異なるため、判定の理由が分からないときは、セコンドを通じて大会の運営者に確かめるとよい。

KINNIKU TIMESの視点

判定ルールを読み込むと、パワーリフティングは「挙げる力」と同じくらい「止まる力」を問う競技だと分かる。スクワットの開始と完了、ベンチの胸での静止と押し切り、デッドの完了姿勢と、どの種目でも主審は静止を確認してから合図を出す。ジムの練習では、この静止を省いて反動で回数をこなす人が多い。大会を目指すなら、普段のメインセットから「合図を待つ」動作を入れておくことが、重量を伸ばすのと同じくらい得点に直結する。

2026年版のルールで明記されたベンチプレスの肘の基準も、日本の選手には影響が大きい。胸を高く張ってバーを短く動かすフォームは国内でも広く使われてきた。JPAは2023年の時点で判定ビデオを示しているが、国際大会の判定はまだ揺れていると協会自身が認めている。初心者は極端なアーチに頼らず、肘が肩の高さまで下がるフォームで記録を作るほうが、判定に左右されにくい。

初めて大会に出る人は、大会全体の流れを初めてのパワーリフティング大会ガイドで、競技の全体像をパワーリフティングとはで確認してほしい。使える用具の違いはノーギアとフルギアの違い、リストラップの規定はリストラップは大会で使えるかにまとめている。秋の大会日程はパワーリフティング大会日程2026で確認できる。

IPFの技術ルールブック(公式)を見る

出典

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