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ベンチプレスは体重の何倍が目安?パワーリフター10万人の分析、重い人ほど倍率は低下

公開 ・ KINNIKU TIMES 編集部 ・ 読了目安 5分
ジムで重いバーベルを持ち上げる男性
SUMMARY|この記事の要約

「体重の何倍」という筋力の目安は体重が重い人ほど達成しにくく、パワーリフター101,898人の分析では上位1%の男性のデッドリフト倍率が59kg級の4.37倍から120kg超級の2.65倍まで下がった。著者は体重倍率ではなく、性別・体重階級ごとのパーセンタイル基準で比べるよう提案している。

「ベンチプレスは体重の1.5倍」のような体重倍率の目安は、体重が重い人ほど達成しにくいことが、パワーリフター約10万人の記録分析で示された。シモーネ・モンテネグロ(Simone Montenegro)氏らの研究チームが、2026年9月16日に学術誌『Sports Medicine – Open』で発表した。倍率は体重の増加とともに一直線ではなく曲線を描いて下がり、上位の選手ほど下がり方が急だった。

パワーリフターの体重あたり挙上重量(倍率)が体重の増加とともに低下する様子を示した図
図:Montenegro Sほか「Percentile-Based Normative Standards for Strength Assessment Beyond Linear Bodyweight Multipliers in Competitive Powerlifters」Sports Medicine – Open(2026)Figure 2/出典:Sports Medicine – Open/ライセンス:CC BY 4.0(改変なし)

誰のどんな記録を分析したのか?

研究チームは、大会記録の公開データベース「OpenPowerlifting」から、国際パワーリフティング連盟(IPF)とその加盟団体が開いたドーピング検査ありの大会のうち、補助ギアを使わない「クラシック」部門の記録を抽出した。各選手の自己ベストのトータルを1件ずつ採用し、体重と挙上重量の関係を分位点回帰という手法で分析している。

項目 内容
対象 21〜49歳のクラシック部門の競技者101,898人(男性67,789人、女性34,109人)
期間 2015年1月1日〜2026年3月8日の大会
種目 スクワット、ベンチプレス、デッドリフト
基準 50・75・90・99パーセンタイル(上位50%・25%・10%・1%の水準)

体重が増えると「体重の何倍」はどれだけ下がる?

体重あたりの挙上重量(倍率)は、体重が重くなるほど下がった。上位1%にあたる男性の99パーセンタイルでは、デッドリフトの倍率が59kg級の4.37倍から、120kg超級では2.65倍まで下がっている。下の表は、体重が1kg増えたときの倍率の変化(回帰係数)である。

種目 男性50パーセンタイル 男性99パーセンタイル 女性50パーセンタイル 女性99パーセンタイル
スクワット −0.0092 −0.0125 −0.0111 −0.0136
ベンチプレス −0.0059 −0.0091 −0.0066 −0.0092
デッドリフト −0.0150 −0.0196 −0.0161 −0.0192

係数から編集部が試算すると、中央値(50パーセンタイル)の男性では体重が10kg重くなるごとに、倍率はベンチプレスで約0.06、スクワットで約0.09、デッドリフトで約0.15下がる。つまり、体重60kgの人の「1.5倍」と体重100kgの人の「1.5倍」は、同じ難しさではない。すべての種目・性別で、上位層ほど下がり方が急になることも確認された。

女性の基準は男性と同じでよい?

女性はスクワットとベンチプレスで、体重に伴う倍率の低下が男性より急だった。著者は男女別の基準が必要だとしている。また、トータルに占める各種目の割合も体重で変わり、軽量級ではデッドリフトが約42〜45%を占める一方、重量級ではスクワット約39%、デッドリフト約37%と、より均等に近づいた。

この研究の限界は?

  • 対象はドーピング検査ありの大会に出た競技者で、一般のトレーニーの分布とは異なる
  • 体重は試合当日の計量時の値で、計量後に体重を戻す選手もいるため、特に軽量級では倍率が高めに出やすい
  • 手足の長さなど個人の体格データは含まれていない
  • 記録は年々伸びるため、著者は基準を5年ごとに作り直すよう勧めている

よくある質問

ベンチプレスは体重の何倍なら強いといえますか?

一律の倍率では判断できない。今回の分析では体重が重いほど倍率は下がるため、同じ性別・同じ体重帯の人と比べるのが妥当である。

女性も男性と同じ倍率の目安を使ってよいですか?

使わない方がよい。女性はスクワットとベンチプレスで体重による倍率の低下が男性より急で、著者は男女別の基準を求めている。

この基準は一般のトレーニーにも当てはまりますか?

そのままは当てはまらない。データは大会に出場した競技者の記録であり、一般の人の分布は示していない。

KINNIKU TIMESの視点

SNSでよく見る「体重の○倍」という目安は、体重が軽い人ほど有利になりやすい。増量期に体重が増えて倍率が下がっても、挙上重量そのものが伸びていれば後退ではない。自分の成長は倍率ではなく、同じ種目の重量や回数の推移で確かめたい。男女の筋肥大の伸び方については筋肥大に男女差なしとする研究の解説、トップ選手の水準はデッドリフト世界記録511kgの記事も参考になる。


出典:Montenegro S, et al. Sports Medicine – Open(2026年9月16日)