筋トレで判断力も伸びる?女子サッカー選手22人の12週試験、認知テスト成績が47%向上
週2回・12週間の筋トレを行った女子サッカー選手は、判断力をみるストループテストの成績が46.7%向上し、対照群の20.4%を上回った。一方、脳の可塑性に関わるとされる血中BDNFやIGF-1には有意な変化がなかった。
週2回の筋力トレーニングを12週間続けた女子サッカー選手は、筋力に加えて認知機能テストの成績も対照群より大きく伸びた。マリエム・ブッセルミ(Mariem Bousselmi)氏らの研究チームが、女子選手22人を対象にしたランダム化比較試験の結果を、2026年9月18日に学術誌『Sports Medicine – Open』で公表した。一方、脳の可塑性に関わるとされる血中のBDNF(脳由来神経栄養因子)やIGF-1には、有意な変化はみられなかった。

どんな選手が、どんな筋トレをしたのか?
対象は、国際的な基準で「Tier 3(高度に鍛えられた選手)」に分類される平均14.9歳の女子サッカー選手22人である。無作為に「筋トレ群」11人と「対照群」11人に分け、シーズン中の12週間にわたって比較した。両群の総トレーニング量はほぼ同じになるよう調整されている。
| 項目 | 筋トレ群(11人) | 対照群(11人) |
|---|---|---|
| 週あたりの内容 | 筋トレ2回+サッカー練習3回 | サッカー練習5回 |
| 筋トレの強度 | 1RM(1回だけ挙げられる最大重量)の60〜80%、3セット×12回 | なし |
| 主な種目 | 上半身と下半身の種目 | - |
| 期間 | 12週間(シーズン中) | |
評価項目は、1RMの筋力、サッカーのパス技術を測る「ラフバラ・サッカーパステスト(LSPT)」、認知機能をみる「ストループテスト」、血中のBDNFとIGF-1などである。ストループテストは、例えば赤いインクで書かれた「あお」という文字の色を答えるように、反射的な反応を抑えて正しく判断する力(実行機能)を測る課題として知られる。
筋力と認知テストはどのくらい伸びた?
論文の表によると、主な項目の平均値の変化は次のとおりである。いずれも群と時間の交互作用が統計的に有意だった。
| 項目 | 筋トレ群(前→後) | 対照群(前→後) |
|---|---|---|
| ベンチプレス1RM | 35.7kg→44.6kg(+24.7%) | 35.4kg→37.5kg(+6.5%) |
| ラットプルダウン1RM | 22.2kg→30.8kg(+38.5%) | 18.8kg→21.5kg(+14.0%) |
| レッグプレス1RM | 64.9kg→101.5kg(+56.5%) | 50.3kg→66.1kg(+31.5%) |
| ストループテスト(色と文字が異なる課題) | 35.5→52.0(+46.7%) | 37.5→45.1(+20.4%) |
サッカーのパス技術テストでも、筋トレ群で成績の改善が確認された。対照群の数値も伸びているのは、成長期の選手であることや、テストへの慣れが影響している可能性がある。
脳の「栄養因子」は増えなかった
筋トレが脳に良いとされる仕組みの一つとして、BDNFやIGF-1の増加が挙げられることが多い。しかし今回の試験では、安静時の血中濃度に群間の有意な差は生じなかった。認知テストの改善は、少なくとも安静時のこれらの値の変化では説明できなかったことになる。
この研究の限界は?
参加者は22人と少なく、1チーム規模の特定の集団を対象にしている。著者ら自身も、ストループテストの改善には測定のばらつきや「テストへの慣れ(学習効果)」が一部含まれうるとして、慎重な解釈を求めている。成人の一般トレーニーや男性にそのまま当てはまるかは、この試験だけでは分からない。
よくある質問
筋トレをすると頭が良くなるのですか?
この試験では、筋トレ群で判断力を測るテストの成績が対照群より大きく伸びた。ただし小規模な試験で学習効果の影響も否定できず、「頭が良くなる」と言い切れる段階ではない。
10代の女子選手が筋トレをしても大丈夫ですか?
この試験では、研究者の管理のもとで1RMの60〜80%・週2回の筋トレを12週間行い、筋力と競技テストが改善した。成長期の筋トレは、指導者のもとで段階的に進めることが前提となる。
BDNFは筋トレで増えないのですか?
今回の12週間の試験では、安静時の血中濃度に有意な変化はみられなかった。運動直後の一時的な変化までは調べていない。
KINNIKU TIMESの視点
注目すべきは、サッカーの練習時間の一部を筋トレに置き換えても、競技の技術テストが落ちるどころか改善した点である。「練習時間が減るから筋トレはしない」と考えがちな競技者にとって、週2回・3セット×12回という現実的な量で筋力が大きく伸びたことは参考になる。認知面の効果は「おまけ」程度に受け止め、まずは筋力と競技力の向上を目的に取り入れたい。成長期の筋トレの効果は子ども・青少年の筋トレに関するメタ分析、脳への影響は筋トレと脳年齢の試験でも紹介している。