筋トレで脳年齢は若返るか 高齢者309人の1年試験で約1.4〜2.3年分の改善
62〜70歳の309人を対象としたランダム化比較試験で、1年間の筋トレにより脳画像から推定した脳年齢と実年齢の差が約1.4年縮小し、開始2年後には中強度群で約2.26年の縮小がみられた。自体重やゴムバンド中心の中強度でも高強度とほぼ同程度の変化だったが、認知症予防を直接示した研究ではない。
筋トレを1年続けた62〜70歳の高齢者は、脳画像から推定した「脳年齢」が実年齢に比べて約1.4年分若い方向へ動いた――。スペインのバルセロナβeta脳研究センターのラウル・ゴンサレス=ゴメス(Raul Gonzalez-Gomez)氏らが、高齢者309人のランダム化比較試験のデータを解析し、学術誌『GeroScience』(第48巻3号)に発表した。論文は2026年2月10日に公開され、9月に入って海外の健康メディアでも相次いで紹介されている。
どんな研究か?対象者と方法
データの出どころは、定年前後の健康な高齢者を対象とした大規模試験「LISA(Live Active Successful Aging)」である。参加者は3つのグループに分けられ、1年間の介入を受けた。
| グループ | 内容 |
|---|---|
| 高強度レジスタンストレーニング(HRT) | 指導者つきで週3回、重い負荷を使う筋トレ |
| 中強度トレーニング(MIT) | 指導者つき週1回+自宅で週2回。自体重やゴムバンドを使うサーキット |
| 対照群 | 普段の活動量を維持 |
今回の解析の対象は62〜70歳の309人。開始時、1年後、2年後に安静時の機能的MRIを撮り、脳の各領域のつながり方(機能的結合)から年齢を推定する「脳時計」で脳年齢を算出した。脳時計は、別の健康な成人2,433人のデータで学習させたモデルである。
筋トレで脳年齢はどれくらい変わった?
評価したのは、推定した脳年齢と実年齢の差(脳年齢ギャップ)の変化である。
| グループ | 1年後 | 2年後 |
|---|---|---|
| 高強度(HRT) | 約1.40年縮小 | 約1.84年縮小 |
| 中強度(MIT) | 約1.39年縮小 | 約2.26年縮小 |
| 対照群 | 有意な変化なし | |
LISA試験の介入期間は1年間で、2年後の測定は介入が終わってから約1年後にあたる。その時点でも差が保たれていた点は注目される。また、高強度群では前頭前野の機能的結合の増加もみられた。
「重い負荷」でなくても効果が出たのか
脳年齢ギャップの縮小は、高強度群と中強度群でほぼ同程度だった。著者らは、中程度の運動でも測定可能な効果が得られる可能性を示すと述べている。一方、脚の筋力の伸びと脳年齢の変化の関連は弱く(全体でr=−0.12)、筋力が伸びた人ほど脳が若返ったとは言い切れない。軽い重量でも筋肥大は同等という研究と合わせると、負荷の重さより「続けること」の意味が大きいとも読める。
研究の限界
対象は欧州の高所得国に住む健康な高齢者に限られる。脳時計の推定誤差は平均約8.7年と大きく、個人の「脳年齢」を正確に測る道具ではない。デフォルトモード・ネットワークなど個別の脳ネットワークに絞った解析では有意差がみられず、効果の大きさも控えめだった。認知機能や認知症の発症を直接調べた研究ではない点にも注意が必要である。
よくある質問
筋トレは脳の老化を遅らせる?
62〜70歳の309人を対象としたランダム化比較試験では、1年間の筋トレで脳画像から推定した脳年齢の差が約1.4年縮小した。ただし認知症予防などの効果を直接示したものではない。
高齢者は重い重量で筋トレしないと意味がない?
この研究では、自体重やゴムバンド中心の中強度群でも高強度群とほぼ同じ程度の脳年齢の改善がみられた。
KINNIKU TIMESの視点
筋トレの価値は筋肉の大きさだけではない。週90〜120分の筋トレと死亡リスク低下の関連を示した追跡研究もあり、今回は脳の指標にも変化が出る可能性が示された。特に、自宅でのゴムバンドや自体重の運動でも差が出た点は、ジム通いに抵抗がある親世代にも勧めやすい材料になる。まずは週2〜3回、スクワットや腕立て伏せなど大きな筋肉を使う種目から始め、1年単位で続けることを目標にしたい。持病がある人は医師に相談のうえで取り組んでほしい。
出典:Gonzalez-Gomez R, et al. "Randomized controlled trial of resistance exercise and brain aging clocks" GeroScience 48(3)(2026年2月10日)/BMJ Group「LISA試験の4年追跡に関するプレスリリース」(2024年6月19日)/mindbodygreen(2026年9月13日)