クレアチンで記憶力は上がるのか。「効果あり」のメタ分析と欧州当局の否定的評価
クレアチンが記憶力などの認知機能を高める可能性を示したメタ分析が注目を集める一方、欧州食品安全機関(EFSA)は因果関係は確立されていないと評価した。2026年には分析手法の問題点を指摘する論評も出ており、現時点での証拠の強さを整理する。
クレアチンの摂取が記憶力の向上と関連していたとするメタ分析がある一方で、欧州食品安全機関(EFSA)は2024年、クレアチンと認知機能改善の因果関係は確立されていないと結論づけた。筋トレ用サプリメントとして定着したクレアチンは、近年「脳にもよいのではないか」という文脈で語られることが増えている。だが、研究結果の読み方には慎重さが求められる状況である。
研究デザイン:16試験・492人を統合したメタ分析
中国の研究者Chen Xu氏らは2024年、栄養学誌『Frontiers in Nutrition』に、成人を対象としたクレアチン・モノハイドレートの認知機能への影響を調べたメタ分析を発表した。対象はランダム化比較試験16本、参加者は合計492人で、年齢は20.8〜76.4歳と幅広い。記憶、注意、処理速度、実行機能などの領域ごとに、クレアチン群とプラセボ群の差を統合した。
結果:記憶には「中程度の確からしさ」で効果、ほかは不確実
分析の結果、記憶では標準化平均差(SMD)0.31(95%信頼区間0.18〜0.44)とクレアチン群が上回り、証拠の確からしさは「中程度」と評価された。注意にかかる時間(SMD −0.31)と処理速度にかかる時間(SMD −0.51)も短縮していた。一方、全体的な認知機能、実行機能、注意や処理速度の得点には有意な効果はみられなかった。記憶以外の領域の証拠の確からしさは「低い」〜「非常に低い」とされた。

| 領域 | 結果 | 証拠の確からしさ |
|---|---|---|
| 記憶 | SMD 0.31で改善 | 中程度 |
| 注意にかかる時間 | SMD −0.31で短縮 | 低い〜非常に低い |
| 処理速度にかかる時間 | SMD −0.51で短縮 | 低い〜非常に低い |
| 全体的な認知機能・実行機能 | 有意差なし | 低い〜非常に低い |
サブグループ解析では、病気のある人のほうが健康な人より、また18〜60歳のほうが60歳超より効果が大きい傾向がみられた。
研究の限界:同じ参加者のデータを重複して数えた可能性
2026年4月には、スイス・ローザンヌ大学のトム・シテルレ氏が同誌に論評を発表し、このメタ分析の統計手法に問題があると指摘した。1つの試験の同じ参加者から得られた複数の記憶テストの結果を、それぞれ独立したデータとして扱っているため、見かけ上の参加者数と統計的な精度が水増しされているという。同氏は、2023年に発表された別のクレアチンと記憶のメタ分析でも同様の問題があり、適切な方法で再分析すると全体の効果は有意でなくなり、高齢者でのみ効果が残ったことを紹介している。
EFSAの栄養・新規食品・食物アレルゲンに関する科学パネル(NDA)も2024年、原料メーカーからの健康強調表示の申請を受けて、21件のヒト介入研究などを評価した。そのうえで「クレアチン摂取と、認知機能の1つ以上の領域の改善との間に因果関係は確立されていない」と結論づけた。効果がみられた結果は一貫せず、単発的な所見にとどまるとしている。
KINNIKU TIMESの視点
現時点で「クレアチンを飲めば頭がよくなる」とは言えない。有望な研究結果はあるものの、分析方法に疑問が出ており、公的機関の評価も否定的である。クレアチンを使う主な理由は、あくまで高強度トレーニングの能力を支える目的と考えるのが妥当だろう。
今後、睡眠不足時や高齢者など特定の状況での研究が進めば評価が変わる可能性もある。SNSなどで「脳に効く」とする情報を見かけたら、どの研究に基づくのか、その研究がどう評価されているのかを確認したい。持病のある人や服薬中の人は、使用前に医師に相談してほしい。
出典:Xu C, Bi S, Zhang W, Luo L. The effects of creatine supplementation on cognitive function in adults: a systematic review and meta-analysis. Frontiers in Nutrition(2024)/Citherlet T. Commentary: The effects of creatine supplementation on cognitive function in adults: a systematic review and meta-analysis. Frontiers in Nutrition(2026)/EFSA NDA Panel. Creatine and improvement in cognitive function: Evaluation of a health claim pursuant to article 13(5) of regulation (EC) No 1924/2006. EFSA Journal(2024)