【2026年改正法を反映】ジムの顔認証と個人情報|説明・同意・保存の注意
ジムで顔認証の入退室を使うと、会員の顔から作る「顔特徴データ」を扱うことになり、個人情報保護法では特定の個人を識別できる「個人識別符号」に当たり得る情報として扱います(施行令第1条、e-Gov法令検索、2026年10月23日確認)。導入するときは、顔認証を使うことと利用目的を具体的に示し、登録の同意をもらい、使わない人のための別の入館方法と、退会時の削除のルールを決めておくのが基本です。2026年7月17日公布の改正個人情報保護法では、顔特徴データ等について周知の義務や利用停止の請求の要件の緩和が設けられ、施行は公布から2年以内とされています。
顔認証の入退室で扱うデータの流れ
顔特徴データは個人情報保護法でどう扱われるか
個人情報保護法第2条第2項は、特定の個人の身体の一部の特徴をコンピュータで使うために変換した符号で、その個人を識別できるものを「個人識別符号」とし、施行令第1条第1号はその一つとして「顔の骨格及び皮膚の色並びに目、鼻、口その他の顔の部位の位置及び形状」から作る符号を挙げています(e-Gov法令検索、2026年10月23日確認)。個人識別符号が含まれる情報は、それだけで個人情報に当たります。
ジムの顔認証で扱うデータを、法律上の位置づけと一緒に整理します。
| データ | 中身 | 扱いの考え方 |
|---|---|---|
| 登録用の顔画像 | 入会時に撮る顔写真 | 特定の個人を識別できる画像は個人情報。保存するかどうかを決める |
| 顔特徴データ | 顔画像から作る特徴量(数値の並び) | 個人識別符号に当たり得る。照合に使う中心のデータ |
| 照合時の映像 | 入口のカメラが撮る映像 | 照合後すぐ消すのか、防犯用に録画するのかで扱いが変わる |
| 入退室の記録 | 誰がいつ入ったかのログ | 会員IDとひもづくため個人情報。利用状況の把握などの目的を書く |
顔特徴データそのものは、病歴などの「要配慮個人情報」には当たりません。ただし個人情報保護委員会のQ&A(Q10-8、2026年10月23日確認)は、顔特徴データは不変性が高く、個人の行動の追跡が可能となることなどを踏まえて、安全管理措置を講じる必要があるとしています。一度漏れると変えられない情報だという前提で扱いましょう。
説明と同意:会員に示すことと、選べるようにすること
個人情報保護法では、利用目的をできる限り特定し(第17条)、書面などで本人から直接取得するときはあらかじめ利用目的を明示することが求められます(第21条)。個人情報保護委員会のQ&A(Q1-14、2026年10月23日確認)は、防犯目的の顔識別機能付きカメラについて、犯罪防止目的であることだけでなく顔識別機能を用いていることも明らかにして利用目的を特定すること、運用主体・利用目的・問い合わせ先などを入口やカメラの設置場所に掲示することが望ましいことを示しています。入退室のための顔認証でも、この考え方を参考に、何のために顔のデータを使うのかをはっきり示しておくと会員の理解を得やすくなります。
| 会員に示すこと | 書き方の例 |
|---|---|
| 顔認証を使うこと | 「入退室の本人確認に顔認証システムを使います」 |
| 利用目的 | 「入退室の管理と、会員以外の入館の防止のため」。それ以外には使わないと書く |
| 扱うデータ | 登録時の顔画像を残すか、顔特徴データだけを残すか |
| 保存場所と委託先 | システム会社のサーバー(国外の場合はその国)など |
| 保存期間と削除 | 「退会日から○日以内に削除」「登録の取り消しはいつでも受け付ける」 |
| 別の入館方法 | 「顔認証を使わない場合はQRコード・会員カードで入館できます」 |
| 問い合わせ先 | 店舗の連絡先、開示・利用停止の請求の窓口 |
顔の登録を入会の条件にすると、抵抗のある人が入会しにくくなります。QRコードや会員カードなど別の入館方法を用意し、顔認証は「選べる便利な方法」にしておくのが、会員の安心と運営の両方にとって無理のない形です。未成年の会員については、子どもの同意の扱いに関する個人情報保護委員会のQ&A(Q1-62)も踏まえ、保護者の同意を前提にしましょう。
顔認証やスマートロックを入れるかどうかは、会員規約・プライバシーポリシー・掲示物とセットで決める項目です。開業準備チェックリストで、入退室システムと個人情報の準備を確かめられます。
開業準備チェックリストを無料で使う保存・削除・委託先の管理と、改正法への備え
個人情報保護委員会のQ&A(Q5-4)は、カメラ画像や顔特徴データ等について、利用の必要性を考慮して保存期間を設定し、利用する必要がなくなったときは遅滞なく消去するよう努めなければならないとしています。また、Q10-8は安全管理措置の例として、扱える従業者を限ること、責任者と規程を定めること、研修、機器や媒体の盗難防止、アクセス制御とアクセスログの監視、外国で扱う場合はその国の制度を把握することなどを挙げています(いずれも2026年10月23日確認)。ジムで決めておきたいことをまとめます。
- 顔特徴データを見られる・操作できるスタッフを限り、責任者を決める
- 退会・登録の取り消しのときに、顔画像と顔特徴データが確実に消える設定か、システム会社に確かめる
- 照合時の映像を録画するなら、防犯カメラとしての掲示と保存期間を別に決める
- システム会社への委託は第三者提供ではないが、委託先の監督が必要(法第25条)。データの保存場所(国内・国外)と、漏えい時の連絡の取り決めを契約で確かめる
- 防犯など入退室以外の目的に使う場合は、その目的も特定して示す。後から目的を広げるときは、変更前の目的と関連する範囲を超えられない(法第17条第2項)
2026年7月17日に公布された改正個人情報保護法では、顔特徴データ等について、事業者の名称・住所・代表者名、顔特徴データ等を扱うこと、その利用目的、元になった身体的特徴の内容、利用停止の請求に応じる手続きなどの周知を義務づけることや、違法な取り扱いがなくても利用停止の請求ができるようにすること、オプトアウトによる第三者提供を禁止することが盛り込まれました(個人情報保護委員会「個人情報保護法等の一部を改正する法律について」、2026年10月23日確認)。資料では、本人の同意を得て作成・取得した顔特徴データ等は利用停止請求の緩和の例外とされ、具体的な範囲や周知の方法は政令・委員会規則で定める想定とされています。施行は原則として公布の日から2年を超えない範囲内です。登録時に同意をもらう、周知すべき事項を今のうちから掲示とポリシーに入れておく、という準備をしておくと移行がスムーズです。
| 改正法の顔特徴データ等のルール(概要) | ジムで今からできる準備 |
|---|---|
| 一定の事項の周知の義務化 | 名称・住所・代表者名・利用目的・扱うデータ・利用停止の手続きを掲示とポリシーに書く |
| 利用停止等の請求の要件の緩和(同意を得て作成・取得したものなどは例外) | 登録時の同意を記録し、登録の取り消しをいつでも受け付ける |
| オプトアウトによる第三者提供の禁止 | 顔特徴データを外部に提供しない運用にする |
よくある質問
顔認証の入退室に会員の同意は必要ですか?
顔特徴データは要配慮個人情報ではないため、取得に同意が法律上いつも必要とされているわけではありません。ただし利用目的の特定と明示は必要で、2026年公布の改正法では同意を得て作成・取得したデータかどうかで利用停止の請求の扱いが変わる想定です。登録時に同意をもらっておくのが実務的です。
顔画像は残さず、特徴量だけなら個人情報ではありませんか?
顔から作った特徴データは、特定の個人を識別できるものであれば個人識別符号に当たり、それだけで個人情報になります。画像を残さない設計は漏えい時のリスクを下げますが、個人情報としての扱いは必要です。
退会した会員の顔データはいつ消せばよいですか?
個人情報保護委員会のQ&Aでは、保存期間を設定し、利用する必要がなくなったら遅滞なく消去するよう努めるとされています。退会日から何日以内に消すかを決め、システムの設定で自動的に消えるかを確かめましょう。
顔認証のデータで不審者を見つけてもよいですか?
入退室以外に、防犯目的で顔識別をする場合は、その目的と顔識別機能を使っていることを特定して示す必要があります。個人情報保護委員会のQ&A(Q1-14)や「犯罪予防や安全確保のための顔識別機能付カメラシステムの利用について」を確かめ、弁護士に相談してから運用してください。
出典
- e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」第2条・第17条・第21条・第25条(2026年10月23日確認)
- e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律施行令」第1条(2026年10月23日確認)
- 個人情報保護委員会 Q&A Q1-14(顔識別機能付きカメラシステム)(2026年10月23日確認)
- 個人情報保護委員会 Q&A Q5-4(カメラ画像・顔特徴データ等の保有期間)(2026年10月23日確認)
- 個人情報保護委員会 Q&A Q10-8(安全管理措置)(2026年10月23日確認)
- 個人情報保護委員会「令和8年 改正個人情報保護法について」(2026年10月23日確認)
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