【清掃・受付の外注で注意】ジムの偽装請負とは?判断基準と防ぎ方
ジムの偽装請負とは、清掃会社・受付代行・インストラクター会社などと「請負」や「業務委託」の契約を結びながら、ジム側がその会社のスタッフに直接、仕事の順番や時間を指示している状態です。実態が労働者派遣なのに派遣のルールを守っていないことになり、労働者派遣法では、偽装請負を受け入れた側がそのスタッフに労働契約を申し込んだとみなされる定めもあります(第40条の6)。指示は相手の会社の責任者を通す、頼む中身を「人数」ではなく「仕事の結果」で決める、の2点を守るのが基本です。個別の判断は都道府県労働局・社会保険労務士・弁護士に確認してください。
正しい請負と偽装請負:指示の通り道が違う
偽装請負とは:ジムで起きやすい3つの場面
請負は「仕事を完成させる」契約で、相手の会社が自分のスタッフに指示を出します。派遣は「人を受け入れて自分で指示する」形で、許可を受けた派遣元からしか受け入れられません(労働者派遣法第24条の2)。この線を越えると偽装請負と呼ばれます。ジムでは次の場面で起きやすくなります。
| 場面 | 契約の形 | 偽装請負に近づく運用 |
|---|---|---|
| 清掃の外注 | 清掃会社と請負契約 | オーナーが清掃スタッフに「今日はシャワー室を先に」「18時まで残って」と直接言う |
| 受付・夜間の店番の外注 | 受付代行会社と業務委託 | シフト表をジムが作り、スタッフ一人ひとりに配置と休憩を指示する |
| レッスンの外注 | インストラクター会社と業務委託 | ジムの店長が派遣されたインストラクターに日々の担当枠や接客を指示し、人数×時間で代金を払う |
個人のフリーのトレーナーと直接契約している場合は、派遣ではなく「業務委託なのに労働者ではないか」という別の問題になります。判断のものさしは別の記事「ジムの雇用と業務委託の違い」で扱っています。
判断の基準:37号告示で見られること
請負かどうかは、昭和61年労働省告示第37号「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」で、契約の名前ではなく実態で判断されます(2026年10月23日確認)。告示では、請負会社が次の両方を満たしていることが求められています。
| 告示の要件 | 中身 | ジムでの確かめ方 |
|---|---|---|
| 自分で指示・管理する(第2条第1号) | 業務の進め方、評価、始業・終業や休憩、残業、服務規律、配置を請負会社が決める | 清掃の順番やシフトを決めているのは誰か |
| 独立して処理する(第2条第2号) | 資金を自分で用意し、事業主として責任を負い、自分の機材や専門の技術・経験で処理する。単に体を動かす労働力の提供ではない | 清掃道具・薬剤・手順書は請負会社のものか |
厚生労働省の「37号告示に関する疑義応答集」には、判断の目安になる例がいくつも載っています。ジムに置きかえると次のとおりです。
- 日常の会話:仕事に関係のない会話は指揮命令にならない。あいさつや世間話を避ける必要はありません。
- やり直しの要望:仕上がりへの注文を請負会社に伝えるのは契約の当事者どうしのやりとりで問題ないが、ジムがスタッフに直接やり直しを指示すると偽装請負と判断される。
- 手順書:口頭でなくても、ジムが作業の内容・順序・方法を文書でくわしく示し、そのとおりにさせていれば指示とみなされる。
- 代金の決め方:仕事の完成ではなく、投じた人数の単価で精算していると、単なる労働力の提供と判断される。
- 責任者が1人だけ:現場の作業者が1人で責任者も兼ねていると、ジムからの注文がそのまま指揮命令になり、偽装請負と判断される。
偽装請負と判断されると:受け入れ側のジムが負うこと
偽装請負の問題は、請負会社だけのものではありません。受け入れたジムにも次のようなことが起こりえます。
| 起こりうること | 根拠 | ジムへの影響 |
|---|---|---|
| 労働契約の申込みとみなされる | 労働者派遣法第40条の6第1項第5号(派遣法の適用を免れる目的で請負などの名目で契約し、派遣を受けた場合) | そのスタッフが承諾すれば、ジムとの労働契約が成り立ちうる |
| 申込みを撤回できない期間 | 同条第2項:行為が終わった日から1年を経過する日まで | 契約を切り替えた後も1年は影響が残る |
| 無許可の派遣元からの受け入れ | 同法第24条の2 | 許可のない会社から人を受け入れること自体が禁止 |
ただし第40条の6には、受け入れた側がその行為に当たると知らず、知らなかったことに過失がなかったときは除く、という定めもあります。気づいた時点で契約と運用を見直すことが大切です。
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- 契約に「成果物」を書く:清掃なら「営業前にこの範囲をこの仕上がりにする」、受付なら「この時間帯の受付業務を処理する」のように、仕事の範囲と結果で決めます。
- 窓口を1本にする:要望・クレームは請負会社の責任者に伝え、スタッフへの指示は責任者からにしてもらいます。責任者の不在時の代理も決めてもらいます。
- 手順書の持ち主を決める:ジムが作ったマニュアルをそのまま守らせるのではなく、ジムは仕上がりの基準を示し、手順は請負会社が作ります。
- 代金を人数の単価にしない:「1人1時間いくら」ではなく、業務の範囲と量に応じた料金にします。
- 人に指示したいなら派遣か雇用へ:シフトや配置を自分で決めたいなら、許可を受けた派遣会社との派遣契約か、直接雇用に切り替えます。
安全にかかわる指示(器具の故障で立ち入り禁止にする、火災のときに避難を呼びかけるなど)まで遠慮する必要はありません。日常の作業の進め方と、緊急時の安全の呼びかけを分けて考えると運用しやすくなります。
よくある質問
清掃スタッフに「ここが汚れている」と伝えるのも偽装請負ですか?
疑義応答集では、発注者が請負会社に作り直しや見直しを求めるのは当事者どうしのやりとりとされ、スタッフに直接やり直しを指示すると偽装請負と判断されるとしています。気づいた点は請負会社の責任者に伝えるのが安全です。
インストラクター会社からレッスン講師に来てもらうのは大丈夫ですか?
レッスンの企画と実施をその会社が責任をもって行い、講師への指示もその会社が出していれば請負として成り立ちえます。ジムが講師ごとに日々の担当や接客を指示するなら、派遣の許可を受けた会社との派遣契約が必要になる場合があります。契約前に都道府県労働局に相談できます。
偽装請負かもしれないと思ったら、どこに相談しますか?
派遣と請負の区分は各都道府県労働局が実態に即して判断するとされています。契約書と実際の運用をまとめて、労働局の窓口か社会保険労務士・弁護士に相談してください。
出典
- 厚生労働省「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号)(2026年10月23日確認)
- 厚生労働省「37号告示関係疑義応答集」(2026年10月23日確認)
- 厚生労働省「請負を適正に行うために」(2026年10月23日確認)
- e-Gov法令検索「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」第24条の2・第40条の6(2026年10月23日確認)
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