【条文で確認】ジムの労務管理|労働時間・残業・有給の守り方
ジムの労務管理で毎月押さえるのは、労働時間・休憩・休日・残業(36協定と割増賃金)・年次有給休暇の5つです。長い営業時間や24時間営業、早朝・深夜のシフトがあるジムは、残業と深夜の割増、休憩の取り方がずれやすいため、タイムカードやシステムの記録で始業・終業を確かめるところから始めます。条文の数字は2026年10月23日に e-Gov法令検索で確かめたものです。就業規則・36協定の中身は所轄の労働基準監督署・社会保険労務士に確認してください。
ジムの労務管理:1か月の流れ
労働時間と休憩・休日:ジムのシフトで守る基本
まずは条文の基本の数字を押さえます。下の表は労働基準法の本則で、変形労働時間制などを使うと扱いが変わります。
| 項目 | 決まり(労働基準法) | ジムで起きやすいずれ |
|---|---|---|
| 労働時間 | 1日8時間・週40時間まで(第32条) | 朝の開店準備と夜の締め作業で8時間を超える |
| 休憩 | 6時間を超えると45分以上、8時間を超えると1時間以上。途中に与え、自由に使わせる(第34条) | 一人で店番をしていて休憩中も受付をしている |
| 休日 | 毎週1回以上、または4週間で4日以上(第35条) | 人手不足で連続勤務が続く |
| 就業規則 | 常時10人以上の労働者を使うなら作成して届け出る(第89条) | アルバイトが増えて10人を超えたのに作っていない |
労働基準法施行規則第25条の2には、常時10人未満の一部の業種(労働基準法別表第一の物品販売・映画演劇・保健衛生・接客娯楽)で週44時間まで認める特例があります。ジムがこの業種に当たるかは条文だけでは決まらないため、使う前に所轄の労働基準監督署に確認してください。
厚生労働省のガイドラインでは、指示された着替え、業務終了後の清掃などの後始末、すぐ対応を求められている待機の時間(手待時間)、参加が義務の研修も労働時間として扱うとしています(2026年10月23日確認)。開店前のマシン点検や閉店後の床の拭き掃除も、指示していれば労働時間です。
残業と割増賃金:36協定と3つの割増
1日8時間・週40時間を超えて働いてもらう、または法定の休日に働いてもらうには、労働者の過半数代表などと書面で協定(36協定)を結び、労働基準監督署に届け出る必要があります(第36条)。協定があっても上限があります。
| 決まり | 中身(2026年10月23日確認) | 根拠 |
|---|---|---|
| 残業の上限(原則) | 月45時間・年360時間 | 第36条第4項 |
| 時間外の割増 | 25%以上 | 第37条・割増賃金令 |
| 月60時間を超えた分 | 50%以上 | 第37条第1項ただし書 |
| 法定休日の割増 | 35%以上 | 割増賃金令 |
| 深夜(22時〜5時) | 25%以上 | 第37条第4項 |
24時間営業や早朝営業のジムでは、深夜の時間帯に働く人に深夜の割増が必要です。残業と深夜が重なる時間は両方の割増が加わります。計算の例として、時給1,200円の人が22時以降に残業した1時間は、1,200円 ×(1 + 0.25 + 0.25)= 1,800円以上になります(数字は計算のための例)。
残業代を含めた人件費が、売上の中でどのくらいの重さになっているか。会員数・客単価・人件費を入れると、シフトを見直したときの利益の変化を試算できます。
収益改善シミュレーションを無料で使う年次有給休暇:パート・アルバイトにも付与する
雇い入れから6か月続けて働き、全労働日の8割以上出勤した人には、10日の年次有給休暇を与えます(第39条第1項)。その後は勤続年数に応じて増え、6年6か月以上で20日になります。週の労働日数が少ないパート・アルバイトにも、日数に応じた有給があります(比例付与)。
| やること | 中身 | 根拠 |
|---|---|---|
| 年5日の取得 | 10日以上付与した人には、基準日から1年以内に5日を時季を決めて取らせる。本人が取った日数は差し引ける | 第39条第7項・第8項 |
| 時季の変更 | 本人が求めた日に与えるのが原則。事業の正常な運営を妨げる場合だけ別の日にできる | 第39条第5項 |
| 年次有給休暇管理簿 | 時季・日数・基準日を人ごとに書いた書類を作り、与えた期間中と満了後5年間保存 | 労働基準法施行規則第24条の7 |
小さなジムでは「代わりがいないから有給を取れない」が起きがちです。シフトを組む段階で、有給の予定日を先に入れておくと、年5日の取得を管理しやすくなります。
記録と保存:あとで困らないための書類
- 始業・終業の記録:ガイドラインでは、使用者が自ら現認するか、タイムカード・ICカード・パソコンの使用時間などの客観的な記録で確かめるのが原則です。自己申告にするなら、実態との差を調べるなどの措置が求められます。
- 書類の保存:労働者名簿・賃金台帳・労働時間の記録などの重要な書類は5年間保存(第109条)。ただし当分の間は3年間とする経過措置があります(第143条)。
- 労働時間の状況の把握:労働安全衛生法第66条の8の3で、医師の面接指導のために労働時間の状況を把握することが求められています。管理職も対象です。
- 入退館システムとの照合:会員の入退館システムやスタッフ用の鍵の記録と、タイムカードの時刻が大きくずれていないかを月に1回見ると、記録漏れに気づきやすくなります。
働き方の決まりは改正が続いています。毎年、厚生労働省の案内と e-Gov法令検索で最新の条文を確かめてください。
よくある質問
アルバイトだけのジムでも36協定は必要ですか?
雇用形態にかかわらず、1日8時間・週40時間を超えて働かせる、または法定休日に働かせるなら36協定の締結と届出が必要です(第36条)。残業をまったくさせない運用なら不要ですが、締め作業の延長などで超えることがないか確かめてください。
開店前の掃除や着替えの時間に給料は必要ですか?
厚生労働省のガイドラインでは、指示された準備や後始末の時間は労働時間として扱うとしています。決められたユニフォームへの着替えや、開店前の清掃を指示しているなら、その時間も記録して賃金を払います。
店長には残業代を払わなくてよいですか?
労働基準法の「管理監督者」に当たるかは肩書ではなく実態で判断され、当たらなければ残業代が必要です。当たる場合でも深夜の割増と有給は必要です。くわしくは別の記事「ジムの店長の育て方」で扱っています。
出典
- e-Gov法令検索「労働基準法」第32条・第34条〜第37条・第39条・第89条・第109条・第143条(2026年10月23日確認)
- e-Gov法令検索「労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令」(2026年10月23日確認)
- e-Gov法令検索「労働基準法施行規則」第24条の7・第25条の2(2026年10月23日確認)
- 厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(2026年10月23日確認)
- 厚生労働省「労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために」(2026年10月23日確認)
- e-Gov法令検索「労働安全衛生法」第66条の8の3(2026年10月23日確認)
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