【保障給と最低賃金の計算つき】ジムの歩合給の設計|トラブルを防ぐ決め方
ジムの歩合給は、雇っているスタッフの給与に「売上や成果に応じた額」を足す仕組みで、設計のときは「何を成果とするか」「売上をいつ確定させるか」「返金や途中解約のときどうするか」を先に決めることがトラブルを防ぐ近道です。雇用の歩合給には、労働基準法第27条の「出来高払制の保障給」があり、労働時間に応じた一定額の賃金を保障する必要があります。歩合の部分も最低賃金を下回らないかを、最低賃金法施行規則の計算方法で確かめます。
歩合給を組み立てる3つの層
ジムでよく使われる歩合の型
歩合の対象と計算の仕方で、スタッフの動き方が変わります。ジムが伸ばしたい数字に合う型を選びます。
| 型 | 計算の例 | 伸びやすいこと | 起きやすい問題 |
|---|---|---|---|
| 個人売上の歩合 | 担当したパーソナル売上の◯% | 指導の売上 | 会員の取り合い、無理な勧誘 |
| 段階式 | 月◯万円を超えた分だけ◯% | 上位の人の売上 | 基準の手前で売上を翌月に回す |
| 件数の歩合 | 入会1件◯円、体験からの入会1件◯円 | 入会の獲得 | すぐ辞める入会が増える |
| 店舗の成果を分ける | 店舗の利益の◯%を全員で分ける | 協力・退会の防止 | 一人ひとりの頑張りが見えにくい |
受付スタッフや新人は、個人の売上が立ちにくい仕事をしています。個人売上の歩合だけにすると、裏方の仕事をする人が報われにくくなるので、店舗の成果を分ける型と組み合わせる方法もあります。
法令で押さえる下限:保障給と最低賃金
雇用のスタッフに歩合を入れるときは、歩合が少ない月の扱いを法令に沿って決めます(e-Gov法令検索、2026年10月23日確認)。
| 決まり | 条文の内容 | ジムでの考え方 |
|---|---|---|
| 労働基準法第27条 | 出来高払制その他の請負制で使用する労働者には、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない | 「売上ゼロなら給与ゼロ」にはできない。時間あたりの保障額を決めておく |
| 最低賃金法第4条 | 最低賃金額以上の賃金を支払う。下回る部分の定めは無効 | 歩合を含めても最低賃金を下回らないか毎月確かめる |
| 最低賃金法施行規則第2条第1項第5号 | 出来高払制などの賃金は、賃金算定期間の総額を、その期間に出来高払制などで働いた総労働時間数で割って時間額にする | 歩合の総額 ÷ 歩合で働いた時間 で時間額を出す |
最低賃金と歩合の関係を、例で確かめます(数字は計算のための例です)。
| 項目 | 式 | 結果 |
|---|---|---|
| 東京都の令和8年度の地域別最低賃金(答申された改定額) | — | 1,280円 |
| 歩合だけで働くスタッフの月の労働時間 | — | 100時間 |
| その月の歩合 | — | 11万円 |
| 時給に直すと | 11万円 ÷ 100時間 | = 1,100円 |
出典: 厚生労働省(2026年10月23日確認)。
この例では、最低賃金を下回ります。この場合は差額を払う必要があります。固定給と歩合を組み合わせる場合の計算や、保障給の水準は、労働基準監督署や社会保険労務士に確認してください。
歩合は人件費を売上に連動させる仕組みですが、割合しだいで利益は大きく変わります。パーソナルの料金とトレーナーへの支払いの割合を入れると、利益の変化を24か月で比べられます。
収益改善シミュレーションを無料で使うトラブルを防ぐ決め方:定義・締め・明細・変更
歩合のトラブルの多くは、「どの売上が誰のものか」「いつの売上か」があいまいなことから起きます。下の項目を文書にして、採用のときに渡します。
| 決めること | 決め方の例 |
|---|---|
| 対象の売上 | パーソナルの税抜売上。物販・入会金は含めない |
| 担当の決め方 | 入会時に登録した担当トレーナー。引き継いだら翌月から新担当 |
| 確定の時期 | 入金が確認できた月の売上として数える |
| 返金・途中解約 | 返金した月の歩合から差し引くか、差し引かないか |
| 締め日と支払日 | 月末締め、翌月25日払い |
| 明細 | 売上の一覧と計算式を給与明細と一緒に渡す |
労働基準法施行規則第5条では、賃金の決定・計算・支払いの方法、締切り・支払いの時期を明示する労働条件としています。常時10人以上の労働者を使う場合は、賃金の決定・計算・支払いの方法などを就業規則に定めて届け出ます(労働基準法第89条)。歩合の計算方法を変えるときも、こうした書面を直す必要があります。
返金の分を差し引く決まりにする場合、どこまでが認められるかは事情によります。また、成績が悪いことを理由にした罰金のような差し引きは、減給の制裁として就業規則に定め、1回の額が平均賃金の1日分の半額、総額が1賃金支払期の賃金総額の10分の1を超えてはならないとされています(労働基準法第91条)。差し引きの設計は社会保険労務士に確認してください。
歩合をチームの力にする工夫
- 数字を公開する:店舗全体の売上と退会率を毎月スタッフに共有する
- 退会も見る:入会件数の歩合を入れるなら、3か月以内の退会を差し引く・別の指標で評価するなど、すぐ辞める入会を増やさない工夫をする
- 新人の期間:最初の数か月は保障を厚くし、担当が育つまで待つ
- 見直しの時期:年に1回など、変える時期を前もって決めておく
よくある質問
ジムのトレーナーを完全歩合給で雇えますか?
雇用の場合、労働基準法第27条により、労働時間に応じた一定額の賃金を保障する必要があります。最低賃金も下回れません。完全に成果だけで払う形は、業務委託の報酬として考えることになりますが、働き方の実態で判断されることがあるので社会保険労務士に確認してください。
歩合給でも最低賃金は関係ありますか?
関係あります。最低賃金法施行規則では、歩合などの賃金は、期間の総額をその期間の総労働時間で割って時間額にし、最低賃金と比べます(2026年10月23日確認)。
会員が途中で解約したら歩合を返してもらえますか?
すでに支払った給与から差し引く扱いは、事前の取り決めと法令の範囲で決める必要があります。返金があった月の計算でどう扱うかを前もって文書にし、社会保険労務士に確認しておきましょう。
歩合の割合を途中で下げてもよいですか?
給与の計算方法を下げる変更は、スタッフの同意や就業規則の変更の手続きが関わります。変更の方法は社会保険労務士に相談し、十分な説明と期間を取りましょう。
出典
- e-Gov法令検索「労働基準法」第27条・第89条・第91条(2026年10月23日確認)
- e-Gov法令検索「労働基準法施行規則」第5条(2026年10月23日確認)
- e-Gov法令検索「最低賃金法」第4条(2026年10月23日確認)
- e-Gov法令検索「最低賃金法施行規則」第2条(2026年10月23日確認)
- 厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」(令和8年度)(2026年10月23日確認)
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