【食い合いの計算つき】ジムのドミナント戦略の利点と注意
ジムのドミナント戦略は、決まった地域に複数の店をまとめて出し、広告・人・設備の管理を共通にして効率を上げる考え方です。利点は、広告の効き目が重なること、スタッフを店どうしで融通できること、会員に「近くのどの店でも使える」価値を出せることです。注意点は、店どうしで会員を取り合う「食い合い」で、新しい店の会員の何割が既存店からの移動かを先に見積もる必要があります。フランチャイズ本部が加盟店の近くに出す場合は、公正取引委員会の考え方で開示と取決めが求められています。
ドミナント出店の利点と注意
- チラシ・Web広告の地域がそろい、広告費を分け合える
- 店長・スタッフ・トレーナーを店どうしで融通できる
- 保守・清掃・備品の手配をまとめられる
- 会員が複数の店を使え、退会の理由(引っ越し・通勤経路の変化)を減らせる
- 既存店の会員が新店に移るだけになる(食い合い)
- 同じ地域の景気・人口の変化を全店が受ける
- 1店の評判の悪化がほかの店に広がりやすい
- 加盟店の近くへの本部の出店はトラブルになりやすい
ジムのドミナント戦略とは:近くに出す理由
ジムは会員が通い続けるサービスなので、自宅や職場からの距離、通勤の経路が利用の続きやすさに関わります。そのため、店ごとの集客の範囲は地域に限られがちです。ドミナント戦略は、この「商圏の近さ」を逆に使い、同じ地域に店を重ねて、運営の効率と地域での知られ方を高める方法です。
| まとめられるもの | 1店舗だけのとき | 近くに複数あるとき |
|---|---|---|
| 広告 | 1店のために地域へ配る | 同じ配布・同じWeb広告で複数店を案内できる |
| 人 | 休みや欠員を1店で埋める | 近くの店からスタッフを回せる |
| 設備の保守 | 店ごとに業者を呼ぶ | 同じ日にまとめて点検できる |
| 会員の価値 | 1店だけ使える | 相互利用のプランを作れる |
| 店長の育成 | 1店の中で育てる | 近くの店で副店長を経験させられる |
相互利用のプランを作るときは、どの店でも同じ会員規約と料金の考え方にそろえ、会員の個人情報をどの範囲で共有するかを利用目的に示しておきます。会員管理システムが店をまたいで使えるかも確かめます。
食い合いを見積もる:新店の会員はどこから来るか
ドミナント出店で一番大事なのは、新店の会員が「新しく来た人」なのか「既存店から移った人」なのかを分けて考えることです。移った人が多ければ、店は増えても地域全体の会員はあまり増えず、固定費だけが増えます。
- 地域全体の純増 = 新店の会員数 − 既存店から移った会員数
- 出店の効果 = 純増 ×(月会費 − 変動費)− 新店の固定費
計算の例として、新店が会員300人に育ち、そのうち90人が既存店から移った会員なら、地域全体の純増は210人です。月会費8,000円・変動費500円なら、純増の粗利は 210人 × 7,500円 = 157.5万円です。新店の固定費が月202万円なら、地域全体では月44.5万円のマイナスになり、移った会員の割合を下げるか、新店の固定費を下げないと出店の効果が出ない、という見方ができます(数字はいずれも計算のための例。固定費はジム開業ナビの試算モデル(2026年10月)の24時間ジム30坪の月の費用202万円を使用)。
移る会員を減らすには、新店を既存店と違う客層に向ける方法があります。たとえば既存店が24時間ジムなら、新店はパーソナルや女性向け、スタジオ中心にして、近くても役割を分けます。既存店の会員にとっても、使い分けられる選択肢が増えます。
店を増やす前に、1店舗あたりの収益の柱がいくつあるかを確かめておきましょう。今やっている収益モデルにチェックを入れて数字を入れると、パーソナル・物販・法人契約などで伸ばせる金額がわかり、近くに出す店の役割分担を考える材料になります。
7つの収益モデル診断を無料で使うフランチャイズでのドミナント出店と公正取引委員会の考え方
フランチャイズでは、本部や別の加盟店が、既存の加盟店の近くに同じ種類の店を出すことがあります。公正取引委員会の「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方」(令和3年4月28日改正、2026年10月23日確認)では、次のように示されています。
| 場面 | 考え方の中で示されていること |
|---|---|
| 加盟者の募集のとき | 加盟者の店舗の周辺に同じ種類の店を出すことができる契約の条項や、出店の計画の有無を開示することが望ましい |
| 出店に配慮すると示すとき | 配慮の内容を具体的に明らかにしたうえで取決めに至るよう対応する |
| 契約の後 | ドミナント出店を行わないとの事前の取決めがあるのに、加盟者の損益を悪化させる出店を行うことは、優越的地位の濫用の例として挙げられている |
加盟する側は、契約書でテリトリー(商圏の保護)の有無と範囲を確かめ、口頭の説明だけで判断しないことが大切です。本部の側は、出店の方針を契約前に書面で示し、加盟店との間で決めた配慮の内容を守る体制を作ります。個別の契約の判断は弁護士に確認してください。
ドミナント出店を決める前のチェック
出店を決める前に、次の項目を確かめます。
- 既存店の会員の住所・勤務先の分布から、新店の場所との重なりを見る
- 新店の会員のうち、既存店から移る割合を見積もり、地域全体の純増で効果を計算する
- 新店の客層・業態を既存店と分けるか、同じにするかを決める
- スタッフの融通・保守の共通化で、どの費用がどれだけ下がるかを数字にする
- 相互利用のプランを作るなら、会員規約・料金・個人情報の扱いをそろえる
- フランチャイズなら、契約のテリトリーの条項と、本部の出店の方針を確かめる
会員の住所などの個人情報を出店の検討に使う場合は、取得したときに示した利用目的の範囲で扱えるかも確かめておきます。
よくある質問
ジムのドミナント戦略は小さな会社でも使えますか?
使えます。2〜3店舗でも、近くにまとめることでスタッフの融通や広告の共通化ができます。ただし食い合いの影響は店舗数が少ないほど大きく出るので、新店の客層を分けることを先に考えます。
近くに競合のジムがある場所に出すのはドミナント戦略ですか?
ドミナント戦略は、自社の店を同じ地域に重ねることを指します。競合の近くに出すかどうかは、商圏の需要と差別化の問題として別に考えます。
フランチャイズに加盟したら近くに同じチェーンの店はできませんか?
契約によります。テリトリーの保護がない契約なら、近くに同じチェーンの店ができる場合があります。公正取引委員会の考え方では、こうした出店の条項や計画の有無を開示することが望ましいとされているので、契約前に書面で確かめてください。
ドミナント出店の効果はいつ判断しますか?
新店が会員数の落ち着く先に近づいたころに、地域全体の会員数と利益を出店前と比べます。新店だけの数字で判断すると、食い合いを見落とします。
出典
- 公正取引委員会「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方」(2026年10月23日確認)
- ジム開業ナビ「ジム開業の費用」試算モデル(2026年10月)
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