ボディビルの掛け声一覧 「キレてる」「肩メロン」の意味と叫ぶタイミング
ボディビル大会の掛け声を、報道で確認できたものだけで一覧にした。定番の「キレてる」「デカい」「ナイスバルク」「バリバリ」、たとえ系の「肩メロン」「肩にちっちゃいジープのせてんのかい」の意味と由来、ポーズごとの叫ぶタイミング、JBBFの撮影ルールまで解説する。
ボディビルの掛け声は、ステージの選手の筋肉をほめて審査員の目を向けさせる応援である。定番は「キレてる」「デカい」「ナイスバルク」「バリバリ」。「肩にちっちゃいジープのせてんのかい」は2017年の関東大学選手権で生まれ、テレビや雑誌で広まったとされる。
2026年10月21日 公開|KINNIKU TIMES 編集部
本記事では、日本ボディビル・フィットネス連盟(JBBF)が監修した書籍『ボディビルのかけ声辞典』を紹介した記事や、大会会場を取材した記事など、報道で確認できた掛け声だけを集め、意味と由来、叫ぶタイミング、観戦のマナーを整理した。ネット上で「定番」として出回っていても、報道や公的な資料で確かめられなかったものは載せていない。
ボディビルの掛け声とは何か、なぜ叫ぶのか
ボディビルの大会では、司会がマイクでポーズ名を告げると、選手は無言でそのポーズを取る。その瞬間に客席から一斉に声が飛ぶ。2018年に東京都のボディビル大会を取材したデイリーポータルZの記事は、この流れを「選手は何も喋らない」と書き、ポーズと同時に会場から様々な掛け声が飛ぶ様子を伝えている。
掛け声には実利的な役割もある。スポーツデータ会社が運営するSPAIAの記事(2019年)は、短時間で10人以上を同時に審査する場合もあり、審査員の目が全員に届かないことがあるため、応援する選手に審査員の目を向けさせる手段が掛け声だと説明している。前出のデイリーポータルZの取材では、JBBFの広報担当者が、審査員は選手の顔を見ずにゼッケンと筋肉を注視するため、番号を呼ぶ応援は多少なりとも効果があるらしい、と話している。
もう一つの特徴は、励ますのではなくほめる点だ。同じ記事は、会場で「がんばれ」という声はほとんど聞かれず、観客は応援する選手をひたすら賞賛していたと書いている。掛け声は、何年もかけて作り上げた体への「賛辞」なのである。
JBBFが監修した『ボディビルのかけ声辞典』
掛け声の文化を象徴するのが、2018年7月にスモール出版から発売された『ボディビルのかけ声辞典』だ。監修は公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟で、デイリーポータルZは連盟監修であることから「“オフィシャルブック”と言ってもいい」と紹介した。ゲットナビの書評(2023年)によると、同書は掛け声を「ほめる系」「例える系」「超上級編」などに分けて収録している。本記事の一覧も、この分類を参考にした。
定番のボディビル掛け声一覧と意味
まずは、どの大会でも耳にする基本の掛け声だ。初めて観戦する人も、この4つを覚えておけば会場の声の意味がほぼ分かる。下の表は、意味と、確認できた報道を並べたものである。
| 掛け声 | 意味・ほめているところ | 確認できた報道 |
|---|---|---|
| キレてる(切れてる) | 筋肉と筋肉の境目(セパレーション)や筋線維の筋(ストリエーション)がくっきり見える。脂肪が極限まで落ちている | SPAIA、デイリーポータルZ、ゲットナビ、エキサイトニュース |
| デカい | 筋肉が大きく分厚い。「○番、デカいよ」と番号を付けて使う | SPAIA、デイリーポータルZ、エキサイトニュース |
| ナイスバルク | 筋肉の量(バルク)が見事。日々の積み重ねへの賛辞 | SPAIA、エキサイトニュース |
| バリバリ | 皮膚が筋肉に張り付いたように薄く、筋や血管が浮き出ている。仕上がりが良い | SPAIA、デイリーポータルZ |
| キレイ/美しい | シンプルな賛辞 | ゲットナビ(『かけ声辞典』の「ほめる系」) |
| 詰まってる/出ました!キマリ! | 筋肉の密度や、ポーズの決まり具合をほめる | ゲットナビ(同上) |
| 最高!/イケメン! | 会場で実際に聞かれた素直な賛辞 | デイリーポータルZ(2018年 東京クラス別選手権の取材) |
「キレてる」はなぜ最上級のほめ言葉なのか
ボディビルダーは大会に向けて筋肉を残したまま脂肪を落とし、さらに水分も絞る。SPAIAの解説によれば、その結果、ポーズを取った体にはセパレーションやストリエーションが彫刻のように浮かび上がる。「キレてる」は、この減量の完成度そのものを評価する言葉だ。大きさをほめる「デカい」と並んで、競技の二大要素である「量」と「質」をそれぞれ言い当てている。
たとえ系・上級編の掛け声一覧と由来
会場を沸かせるのが、筋肉を食べ物や乗り物、山にたとえる掛け声だ。どれも、どの部位がどう発達しているかを一言で伝えようとした工夫の産物である。
| 掛け声 | ほめている部位・意味 | 確認できた報道 |
|---|---|---|
| 肩メロン | 三角筋(肩)が丸く大きく盛り上がり、血管が浮く様子をメロンにたとえる | ゲットナビ、エキサイトニュース |
| 肩にちっちゃいジープのせてんのかい | 三角筋と僧帽筋(肩から首)が車を載せたように巨大 | SPAIA、ゲットナビ、デイリーポータルZ |
| 二頭がチョモランマ | 上腕二頭筋(力こぶ)の頂点の高さを世界最高峰にたとえる | エキサイトニュース |
| 大胸筋が歩いている | 胸の筋肉の存在感が、その人そのものに見えるほど強い | SPAIA、ゲットナビ |
| 腹筋がカニの裏 | 腹筋の凹凸を、カニの腹側の模様にたとえる | ゲットナビ |
| 大根すりおろしたい | わき腹の外腹斜筋の凹凸が、おろし金に見えるほど深い | SPAIA |
| 背中に鬼(の顔) | 広背筋や僧帽筋の輪郭が、鬼の顔のように浮かび上がる | SPAIA |
| 胸がケツみたいだ | 中心から二つに割れた巨大な大胸筋 | SPAIA |
| もうデカい | ポーズに入る前から大きさが分かる | SPAIA |
| そこまで仕上げるために眠れない夜もあったろうに | 体そのものではなく、減量と練習の苦労をねぎらう | ゲットナビ、SPAIA、デイリーポータルZ |
| 新時代の幕開けだ | 見たことのない体への驚き | ゲットナビ |
| 石油王 | 褐色に仕上げられた圧倒的な体 | ゲットナビ |
| 発車オーライ/右のお尻がエグい | 2018年の東京の大会で実際に飛んだ掛け声。後者は左右の臀部のわずかな違いを見抜いたもの | デイリーポータルZ |
「肩にちっちゃいジープ」はどこで生まれたのか
最も有名な掛け声の一つである「肩にちっちゃいジープのせてんのかい」について、SPAIAは2017年の関東大学選手権での掛け声がテレビ番組や雑誌で紹介されて有名になったと書いている。デイリーポータルZの取材では、JBBFの広報担当者が「肩メロン」や「ジープ」が出てきたのは取材時点(2018年)から見て「ここ2、3年」だとし、こうした工夫に富んだ掛け声は社会人ではなく学生の大会で生まれたのではないか、と話した。ユニークな掛け声の起源そのものは「不明」だという。
学生の大会が掛け声の実験場になっているという見方は、今の会場の空気とも重なる。大学のボディビル部は部員総出で仲間を応援するため、客席の声量も工夫の量も大きい。今年の学生大会については関東学生ボディビル2026の結果と全日本学生ボディビル選手権の記事で報じている。
漫画とテレビから広まった掛け声
SPAIAによると、「背中に鬼の顔」と「胸がケツみたいだ」は格闘漫画『グラップラー刃牙』から、「そこまで絞るには眠れない夜もあっただろう」はテレビ番組「ジャンクSPORTS」で紹介されて広まった。デイリーポータルZの記事では、日本体育大学准教授でボディビルダーの岡田隆氏(『かけ声辞典』の制作協力者)も「それほどの筋肉を付けるには眠れない夜もあっただろう!」という掛け声を会場で聞いたと話している。
掛け声はいつ叫ぶ?タイミングとコツ
掛け声は、いつでも叫んでよいわけではない。会場の流れに合わせると、選手にも審査員にも届きやすい。報道と大会の進行から分かる基本は次の3つだ。
- ポーズが決まった瞬間に短く:司会がポーズ名を告げ、選手が力を入れたタイミングで一言。長い掛け声は次のポーズにかぶる。
- 番号を先に言う:「8番、キレてる!」のように、ゼッケン番号を添える。デイリーポータルZの取材では、このパターンが最も多かった。審査員が選手を番号で見ていることも理由だ。
- ほめる言葉を選ぶ:「がんばれ」より「デカい」「バリバリ」。ほかの選手をけなす言葉は論外である。
規定ポーズの名前と、そのとき見られている部位を知っておくと、掛け声の精度が上がる。たとえばフロント・ダブル・バイセップスなら腕と肩、バック・ラット・スプレッドなら背中の広がりが主役だ。ポーズと審査の関係はボディビルの勝敗はどう決まる?規定ポーズ8種で解説している。
| 見ているポーズ | 主役の部位 | 合う掛け声の例 |
|---|---|---|
| フロント・ダブル・バイセップス | 上腕二頭筋・三角筋 | 二頭がチョモランマ/肩メロン |
| サイド・チェスト | 大胸筋 | 大胸筋が歩いている |
| バック・ダブル・バイセップス、バック・ラット・スプレッド | 広背筋・僧帽筋 | 背中に鬼 |
| アブドミナル・アンド・サイ | 腹筋・脚 | 腹筋がカニの裏/大根すりおろしたい |
| どのポーズでも | 全身 | キレてる/デカい/バリバリ/ナイスバルク |
ポーズと部位の対応は本記事の整理であり、掛け声の使い方に公式の決まりはない。目の前の体を見て、一番すごいと思った部位をほめるのが基本である。
観戦マナー:撮影や応援で気をつけること
掛け声が自由な一方で、会場には守るべきルールがある。JBBFは日本選手権大会の撮影届出書で、すべてのアスリートが安心して競技に集中できる環境づくりと、盗撮や画像の不適切なSNS投稿の防止を目的に、スマートフォン・タブレット以外のカメラ機器(ビデオカメラ、デジタルカメラ、一眼レフ等)による撮影を事前申請・許可制にしていると明記した。
| 項目 | JBBFの記載(2026年 日本選手権大会の撮影届出書) |
|---|---|
| スマートフォン・タブレット | 事前申請不要 |
| 一眼レフ・ビデオカメラ等 | 事前申請・許可制(当日の会場での申請は不可) |
| 三脚・自立する一脚 | 使用不可 |
| 撮影場所 | 自分の座席に座って撮影。座席を離れての撮影は不可 |
| 節度 | 頭上高く掲げない、必要以上にズームしない、周囲に触れるほど大きな機材や望遠レンズを使わない |
| 違反時 | 改善しない場合は退場となることがある |
撮影許可を受ける人は、特定部位のクローズアップなど不自然なアングルで撮らないこと、選手の名誉を傷つける画像をSNSに投稿しないこと、未成年の選手に特に配慮することなども誓約する。ルールは団体や大会ごとに違うため、他団体の大会では各大会の案内を確認したい。団体による違いはボディビル大会の団体の違いにまとめている。
掛け声についての明文のルールはJBBFの公開資料では見当たらなかった。だからこそ、ほかの観客の視界をふさがない、ほかの選手をからかわない、静かにすべき場面(表彰の読み上げなど)では控える、といった常識的な配慮が大切になる。
よくある質問
ボディビルで一番定番の掛け声は何ですか
「キレてる(切れてる)」と「デカい」である。筋肉の輪郭のくっきり具合と、筋肉の大きさをそれぞれほめる。「ナイスバルク」「バリバリ」も定番として報道で紹介されている。
「肩にちっちゃいジープのせてんのかい」はどういう意味ですか
肩の三角筋や首から肩にかけての僧帽筋が、小型の車を載せているように見えるほど大きい、という賛辞だ。SPAIAは、2017年の関東大学選手権での掛け声がテレビ番組や雑誌で紹介されて有名になったとしている。
初めての観戦でも掛け声をかけてよいですか
よい。会場ではゼッケン番号を添えて「○番、デカい!」のように声をかけるのが一般的だ。迷ったら定番の掛け声を、ポーズが決まった瞬間に短く送るとよい。
掛け声は審査に影響しますか
順位は審査員の採点で決まる。ただしSPAIAは、審査員の目が全員に届かないこともあるため、応援する選手に目を向けさせる手段が掛け声だと説明しており、JBBFの広報担当者も番号を呼ぶ応援は多少なりとも効果があるらしいと話している(デイリーポータルZ、2018年)。
スマートフォンで撮影してもよいですか
JBBFの日本選手権大会では、スマートフォンとタブレットの撮影は事前申請不要とされている。ただし座席に座ったまま撮り、頭上高く掲げないなどの節度が求められる。ほかの団体の大会は、それぞれの大会案内を確認してほしい。
KINNIKU TIMESの視点
ボディビルの掛け声は、ネット上では「面白いフレーズ集」として消費されがちだ。だが報道をたどると、その根っこには、短時間で多数の選手を審査する競技の仕組みと、ほめることで仲間を後押しする客席の文化がある。JBBFが辞典の監修までしたのは、掛け声が競技の入り口として機能していると見ているからだろう。
初めて観戦する人への助言は、まず定番の「キレてる」「デカい」から始めることだ。何回か会場に通い、ポーズごとに見るべき部位が分かってくると、自然に「肩メロン」のような具体的な掛け声が出てくる。掛け声を考えることは、そのまま体の見方を学ぶことでもある。選手の体をじっくり見比べたい人は、日本のトップ選手をまとめたボディビル選手名鑑で予習しておくと、会場で応援する選手が見つけやすい。
大会に行く準備(チケットの買い方、予選と決勝の違い、持ち物)はボディビル大会の観戦ガイドに、ボディビルとフィジークの見どころの違いはボディビルとフィジークの違いにまとめた。自分の体の「デカさ」を数字で知りたい人はFFMI計算も試してほしい。
出典
- デイリーポータルZ「ボディビル大会のかけ声、出るか『肩にちっちゃいジープのせてんのかい!』」(2018年8月15日、取材協力:日本ボディビル・フィットネス連盟)
- SPAIA「進化を続けるボディビル、フィジークのかけ声 『キレてる』はもう古い?」(2019年11月27日)
- ゲットナビ「『大胸筋が歩いてる』!? 『切れてます!』だけじゃないボディビルのかけ声がすばらしすぎる!『ボディビルのかけ声辞典』」(2023年1月25日)
- エキサイトニュース「『二頭がチョモランマ』なぜか出版された『ボディビルのかけ声辞典』になぜか食欲をそそられる」(2018年7月27日)
- 日本ボディビル・フィットネス連盟「撮影届出書 兼 誓約書」(第72回日本男子ボディビル選手権大会ほか、PDF)
- Wikimedia Commons「9th annual Northern Japan Bodybuilding Championships」(1999年、パブリックドメイン)
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