【新研究】ホエイ30gを8週間飲むとCK・ALTは変わる?陸上選手59人で検証
ホエイ30gを8週間飲んだ陸上選手は、肝酵素のALTとASTが偽薬群と比べて下がった。筋損傷の指標CKは、群間の差が有意ではなかった(p=0.082)。
2026年10月公開の無作為化試験で、対象は男子選手59人。偽薬群は9〜10人と少なく、筋量や競技成績は測っていない。
ホエイ30gを8週間飲んだ陸上選手は、肝酵素のALTとASTが下がった。ただし筋損傷の指標CKは、偽薬群との差が統計的に有意ではなかった。2026年11月2日(月)時点で、2026年10月公開の無作為化試験が確認できた。
トップ画像:Ben Mhamedらの論文の図1より(CC BY 4.0、改変なし)。横長の台紙に載せた。
ホエイ群ではALT・AST・CKが群内で下がった。だが群間比較で差がはっきりしたのは、ALTとASTだけである。CKは有意ではなかった(p=0.082)。
- 対象は陸上競技の男子選手59人で、年齢は18〜26歳である
- ホエイ30gを、練習後30分以内に毎日、8週間飲んだ
- ALTは、ホエイ群で約2U/L下がり、持久系の偽薬群では上がった
- 偽薬群は9〜10人と少なく、群の人数が2対1に偏っている
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論文は、チュニジアとスイスの研究チームによる。掲載誌は European Journal of Sport Science で、論文番号は e70279 である。
注意点が1つある。この研究が測ったのは血液の検査値であり、筋肉の量や筋力、競技成績は測っていない。「回復が早まった」と読むのは早い。
ホエイ30gを8週間飲むと、ALT・AST・CKはどう変わったか
ALTとASTは、肝臓の細胞から血液に出る酵素である。ASTは筋にも多く含まれる。激しい運動の後には、筋から漏れ出して上がることがある。
CKは、筋の細胞が傷つくと血液中に増える酵素である。筋損傷の目安としてよく使われる。CRPは、体内の炎症の目安である。
研究チームは、この4つを8週間の前後で測った。ホエイ群の結果は、競技の型にかかわらず似ていた。
| 指標(パワー系) | ホエイ群(20人) | 偽薬群(10人) |
|---|---|---|
| ALT(U/L) | 17.5→15.2(p=0.001) | 13.5→14.2(p=0.191) |
| AST(U/L) | 27.1→22.9(p=0.015) | 22.4→23.5(p=0.193) |
| CK(U/L) | 409→362(p=0.001) | 329→345(p=0.438) |
| CRP(mg/L) | 0.35→0.30(p=0.039) | 0.51→0.55(p=0.094) |
※論文の表3から編集部が抜粋した。矢印は8週間の開始前から終了後への変化。p値は、各群の中での前後比較である。
| 指標(持久系) | ホエイ群(20人) | 偽薬群(9人) |
|---|---|---|
| ALT(U/L) | 17.6→15.4(p=0.001) | 18.1→22.2(p<0.001) |
| AST(U/L) | 21.7→18.3(p=0.001) | 23.0→29.6(p<0.001) |
| CK(U/L) | 390→335(p=0.003) | 366→355(p=0.652) |
| CRP(mg/L) | 0.33→0.32(p=0.450) | 0.37→0.42(p=0.153) |
※同じく論文の表3から抜粋した。持久系の偽薬群は、ALTとASTが有意に上がった。
表のとおり、ホエイ群はALT・AST・CKがそろって下がった。パワー系のCRPも、わずかに下がった。
一方、持久系の偽薬群は、ALTとASTが大きく上がった。ホエイ群の低下は、この上昇との対比で目立つ形になっている。
上の図はCKの推移である。ホエイ群の線は右下がりで、偽薬群の線はほぼ横ばいに見える。ただし、これは見た目の印象であり、次の節で述べる検定の結果とは別に読む必要がある。
ALTとASTは偽薬群との差が有意、CKは有意でなかった
群内の前後比較だけでは、ホエイの効果とは言い切れない。時間が経てば、誰でも値は動くためである。そこで論文は、3つの要因を組み合わせた分散分析を行った。
見たのは、時間(前と後)、摂取(ホエイか偽薬か)、競技の型(パワーか持久か)の3つである。その結果が次の表である。
| 指標 | 時間×摂取 | 時間×摂取×型 |
|---|---|---|
| ALT | 有意(p<0.001) | 有意(p=0.003) |
| AST | 有意(p<0.001) | 有意でない(p=0.064) |
| CK | 有意でない(p=0.082) | 有意でない(p=0.610) |
| CRP | 有意でない(p=0.090) | 有意でない(p=0.552) |
※論文の表4から抜粋した。「時間×摂取」は、摂取の有無で前後の変化が違ったかを示す。
「時間×摂取」で有意だったのは、ALTとASTだけである。つまり、摂取の有無で変化が違ったと言えるのは、この2つに限られる。
CKとCRPは、この検定では有意ではなかった。CKの図で線が分かれて見えても、統計的には偽薬群との差を支持しきれていない。
「時間×摂取×型」で有意だったのは、ALTだけである。ALTだけは、パワー系と持久系で変化の出方が違った。論文は、型による差が確かめられたのはALTだけだとしている。
図の右側(持久系)では、偽薬群の線が大きく上へ動いている。ホエイ群の低下より、偽薬群の上昇が、型による差を生んでいる。
この結果は何人分のデータか:偽薬群が9〜10人しかいない
結果を読むうえで、人数の配分は欠かせない。論文は、ホエイ群と偽薬群を2対1で振り分けた。
| 群 | 人数 | 体重の平均 |
|---|---|---|
| パワー系ホエイ | 20人 | 75.4kg |
| パワー系偽薬 | 10人 | 72.0kg |
| 持久系ホエイ | 20人 | 59.9kg |
| 持久系偽薬 | 9人 | 62.1kg |
※論文の表1から抜粋した。合計は59人である。
偽薬群は、パワー系で10人、持久系で9人である。人数が少ないと、1人の値の動きで平均が大きく変わる。
開始時の値にも差があった。パワー系のALTは、ホエイ群が17.5、偽薬群が13.5U/Lで始まっている。群の出発点が違えば、変化量も単純には比べられない。
対象は、陸上競技の男子選手である。パワー系は投てき、跳躍、短距離で、持久系は中長距離である。ボディビルや筋トレの愛好者を対象にした研究ではない。
どんな条件で飲んだのか
ホエイ群は、市販のホエイプロテイン30gを練習後30分以内に飲んだ。論文は、約197キロカロリーと記している。
偽薬群は、味と見た目をそろえた炭水化物の粉末(約30g、約197キロカロリー)を飲んだ。つまり、何も飲まない群ではなく、同じカロリーの炭水化物と比べている。
選手は国の訓練施設で暮らし、食事は共同だった。練習は週5回、1回2時間にそろえられた。血液は、最後の練習と摂取から72時間以上あけて、空腹時に採った。
この採血の間隔は、運動の直後の一時的な上昇を避けるためである。慢性的な変化を見たい、という設計になっている。
この研究が言えないこと:筋肥大や回復の速さは測っていない
論文自身も、いくつかの限界を挙げている。読者が押さえたい点を整理する。
- 普段のたんぱく質の摂取量(g/kg/日)を、きちんと測っていない
- 偽薬の炭水化物が、筋の分解を抑えた可能性を否定できない
- パワー系の中に、投てき・跳躍・短距離が混ざり、ばらつきが大きい
- 男性だけで、女性には当てはめられない
- 練習歴6か月以上の選手で、エリートの長期の選手とは言えない
とくに1つ目は重い。もともとのたんぱく質が足りない選手が混じっていた場合、ホエイで不足が埋まっただけの可能性がある。ホエイ自体に特別な力があった、とは限らない。
また、ALTの値はどの群も13〜22U/L台だった。論文は、この変化に臨床上の意味があるかを検討していない。「肝臓が守られた」という言い方は、著者らの解釈にとどまる。
さらに、筋肉の量、筋力、競技の記録は測られていない。CKが下がっても、筋が増えたとは言えない。CKは、筋が傷つく程度を映す一方で、回復の質を直接示すわけでもない。
よくある質問
ホエイを飲むと、筋肉痛やCKは必ず減るのか?
減るとは言えない。この研究でも、CKの「時間×摂取」の効果は有意ではなかった(p=0.082)。群内で下がった、という結果にとどまる。
1日30gという量は、筋トレ愛好者にも当てはまるのか?
当てはめにくい。対象は陸上競技の男子選手である。体格も練習内容も、筋トレ愛好者とは違う。参考値と考えるのがよい。
ALTやASTが下がったのは、肝臓によいということか?
そうは言い切れない。ASTは筋にも含まれる。論文は、ASTの低下が筋の漏れの減少を映す可能性にも触れている。
偽薬は何だったのか?
見た目と味をそろえた炭水化物の粉末である。約30gで、約197キロカロリーとされる。何も飲まない群との比較ではない。
プロテインは練習後30分以内に飲むべきなのか?
この研究は、練習後30分以内に飲んだ群の結果である。飲むタイミングの違いは、この研究では比べていない。
KINNIKU TIMESの視点:検査値の変化より、1日の総たんぱく質量を見直す
今回の論文は、ホエイを足したときに血液の検査値が動いた、という報告である。筋トレの成果に直結する結果ではない。
ここからは、論文を読んだ編集部の整理であり、個別の指導ではない。
- まず、普段の食事でたんぱく質が足りているかを確かめる
- 足りない分を、ホエイで補う使い方が現実的である
- 練習後の1杯は、30gを目安に、体格に合わせて調整する
- 検査値の変化を期待して飲む使い方は、根拠が弱い
迷ったら、体重と食事の記録から、1日の総たんぱく質量を計算するとよい。無料の摂取量診断とPFC計算ツールが使える。
向かない人もいる。肝臓や腎臓に持病がある人は、自己判断でプロテインを増やさず、医師に相談したい。
減量中のたんぱく質の目安は、ISSNの減量食の指針の記事で書いた。週の回数と筋肥大の関係は、トレーニング頻度のメタ分析の記事が参考になる。研究の対象者の偏りは、筋トレ研究の97.7%は初心者〜中級者の記事でも取り上げた。
ホエイの選び方は、専門サイトのプロテインナビで詳しく読める。自宅で負荷を上げたい人は、自重トレ大全の自重で負荷を上げる方法も役に立つ。
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出典
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