【高齢者の研究で解説】ピラティスでバランスはよくなる?転倒との関係
ピラティスでバランスはよくなるのかというと、高齢者を対象にした研究をまとめた分析では、運動をしない人や普段どおりの生活の人と比べて、バランスの指標がよくなったという結果が出ています。一方で、転倒の回数や転倒への不安が減るとまでは言えないという分析もあり、ほかの運動より優れているわけでもありません。持病がある人やふらつきが強い人は、始める前に医師に相談してください。
高齢者のピラティス研究:3つの分析の結果
| 分析 | 対象 | バランス | 転倒 |
|---|---|---|---|
| Fernández-Rodríguezら(2021) | 60歳以上・39件の研究 | よくなった(効果は中くらい・確かさは低い) | 転倒リスクの指標がよくなった(確かさは中くらい) |
| de Campos Júniorら(2024) | 高齢者・39件の研究、1,770人 | 動きの中・静止時ともによくなった | 転倒の回数・不安は減ったとは言えない |
| Sampaioら(2023) | 高齢者・無作為化比較試験 | 15の介入のうち8つで有意な改善 | (主な評価項目ではない) |
バランスとは?年齢とともに大切になる理由
バランスは、立っている・歩いているときに体がふらつかないように保つ力です。研究では、片脚立ちなどで測る「静的バランス(止まっているときのバランス)」と、歩く・向きを変えるなど動きの中で測る「動的バランス」に分けて調べることが多くあります。
| 種類 | 場面の例 | 研究でよく使う測り方の例 |
|---|---|---|
| 静的バランス | 片脚で靴下をはく、電車で立っている | 片脚立ちの時間、重心のゆれ |
| 動的バランス | 歩く、段差をまたぐ、振り向く | 立ち上がって歩いて戻るまでの時間、手を前に伸ばせる距離 |
厚生労働省のガイドでは、高齢者に、有酸素運動・筋力トレーニング・バランス運動・柔軟運動などを組み合わせた「多要素な運動」を週3日以上行うことをすすめています。多要素な運動を中心にしたプログラムでは、転倒のリスクが12〜32%、転倒による骨折のリスクが15〜66%低くなったという報告が紹介されています(健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023)。ピラティスは、体幹・脚の筋力・柔軟性・姿勢を同時に使うため、この「多要素な運動」の一部として取り入れやすい運動です。
高齢者のピラティス研究でわかっていること
ピラティスとバランスの関係は、主に高齢者を対象に研究されています。代表的な分析を3つ紹介します。
- Fernández-Rodríguezら(2021):60歳以上を対象にした39件の研究をまとめた分析です。ピラティスを行った人は、比べた群よりバランス・筋力・柔軟性・日常の動作がよくなり、転倒リスクの指標も大きくよくなったという結果でした。ただし確かさは、バランスでは「低い」、筋力と転倒では「中くらい」とされています(Physiotherapy, 2021)。
- de Campos Júniorら(2024):39件・1,770人の研究をまとめた分析です。動いているとき・止まっているときのバランスはよくなった一方、転倒の回数や転倒への不安が減ったとは言えないという結果でした。また、ほかの運動と比べると同じくらいだったとされています。研究の質が十分なものは14件だけで、確かさは「とても低い〜中くらい」でした(Complement Ther Clin Pract, 2024)。
- Sampaioら(2023):無作為化比較試験をまとめた分析で、15の介入のうち8つでバランスに有意な改善があったと報告しています(Healthcare, 2023)。
| 言えそうなこと | まだ言えないこと |
|---|---|
| 運動をしない場合と比べると、バランスの指標はよくなりやすい | ほかの運動(筋トレや体操など)より優れている |
| 筋力や柔軟性もあわせてよくなったという研究が多い | 転倒の回数そのものが確実に減る |
| 高齢者でも取り組める形に調整できる | どの種目を何回やればよいかの決まった答え |
つまり、ピラティスは「バランスを練習する選択肢のひとつ」と考えるのが研究に合った見方です。続けやすい運動を選ぶことが、いちばん大切です。
バランスを意識するピラティスの種目と始め方
ピラティスには、片脚や片手で体を支える種目、横向きで体を安定させる種目など、バランスを使う動きが多くあります。初めての人や高齢の人は、床に近い姿勢から始め、立って行う種目は壁やいすにつかまれる場所で行いましょう。
| 種目の例 | 姿勢 | バランスとの関係 | 始めるときの工夫 |
|---|---|---|---|
| ショルダーブリッジ | あお向け | お尻ともも裏で骨盤を支える | 両足で行い、慣れたら片脚を浮かせる |
| サイドキック | 横向き | 体がぐらつかないように体幹で支える | 下の脚を曲げて土台を広くする |
| 四つばいで手足を伸ばす | 四つばい | 手足を浮かせても体をまっすぐ保つ | まず片手だけ、次に片脚だけ |
| 立って行うフットワーク | 立位 | かかとの上げ下げで足首を使う | 壁やいすに手を添える |
- 最初は週1〜2回、1回あたり短めの時間から始め、体の様子を見ながら増やす
- グループレッスンでついていけないときは、少人数やマンツーマンも検討する
- マシン(リフォーマー)はばねの強さで負荷を調整でき、寝た姿勢で始められる種目も多い
- ふらつきやめまいがあるときは無理をせず中止する
インストラクターに見てもらえるマシンのスタジオを比べたい人は、マシンピラティスのおすすめで比べています。
始める前に気をつけたいこと
バランスに不安がある人ほど、安全に始めることが大切です。厚生労働省のガイドでも、身体機能が低下している高齢者では、安全に配慮して転倒などに注意することが書かれています。
- 骨粗しょう症、心臓や血圧の病気、関節の痛み、めまいのある人は、始める前に医師に相談してください。
- 急にふらつきが強くなった、転ぶことが増えたというときは、運動より先に医療機関を受診しましょう。病気が隠れていることがあります。
- レッスンの前に、持病や痛みのある場所をインストラクターに伝えておくと、種目を調整してもらいやすくなります。
- すべりにくい靴下を使う、マットの周りに物を置かないなど、環境も整えましょう。
よくある質問
ピラティスは何歳からでも始められますか?
研究では60歳以上や高齢者を対象にしたものが多くあり、体の状態に合わせて調整すれば始められる運動です。持病がある場合は、事前に医師に相談してください。
ピラティスで転倒は防げますか?
転倒リスクの指標がよくなったという分析がある一方、転倒の回数が減ったとは言えないという分析もあります。ピラティスだけに頼らず、筋力トレーニングや歩く習慣も組み合わせましょう。
バランスをよくするには週何回くらいがよいですか?
ピラティスの決まった回数はありませんが、厚生労働省のガイドでは高齢者に多要素な運動を週3日以上すすめています。ピラティスはその一部として考えるとよいでしょう。
マットとマシン、どちらがバランスの練習に向いていますか?
どちらでもバランスを使う種目はあります。研究ではマットのものが多めです。違いはマットピラティスとマシンピラティスの違いにまとめています。
出典
- Fernández-Rodríguez R, et al. Pilates improves physical performance and decreases risk of falls in older adults: a systematic review and meta-analysis. Physiotherapy. 2021;112:163-177
- de Campos Júnior JF, et al. Effects of Pilates exercises on postural balance and reduced risk of falls in older adults. Complement Ther Clin Pract. 2024
- Sampaio T, et al. The Effectiveness of Pilates Training Interventions on Older Adults' Balance. Healthcare (Basel). 2023
- 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」
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