斜め懸垂(インバーテッドロウ)のやり方|低い鉄棒で背中を鍛える
斜め懸垂(インバーテッドロウ、Inverted Row)は、胸の高さくらいの鉄棒を握り、体を斜めにして胸を棒へ引き寄せる種目です。足が床についているので懸垂より負荷が軽く、体の角度で強さを調整できます。行う場所は、公園の低い鉄棒など、体重をかけても動かない設備が安全です。自宅の机は倒れたり脚が折れたりする危険があるため、すすめません。
斜め懸垂(インバーテッドロウ)の3Dアニメーション(3D種目図鑑で見る)
斜め懸垂はどこに効く?
答えは、背中の広い筋肉(広背筋)、背中の上部(僧帽筋の中部・下部、肩甲骨の間の筋肉)、肩の後ろ(三角筋の後部)、腕の前(上腕二頭筋)です。体を棒へ引き寄せる「引く」動きなので、腕立て伏せなどの「押す」種目と組み合わせると、上半身の前後をまんべんなく鍛えられます。
フェンウィックら(2009年)は、健康な男性7人で、斜め懸垂、立って行うベントオーバーロウ、片腕のケーブルロウの3種目を比べました。斜め懸垂は広背筋、背中の上部、お尻と太ももの裏(股関節を伸ばす筋肉)の活動がほかの2種目より高く、腰の筋肉の活動と腰の骨にかかる負荷は低い結果でした。著者らは、腰への負担をおさえたい人には斜め懸垂が選択肢になるとしています。
背中のメニュー全体は自重で背中を鍛える方法にまとめています。
どこでやればいい?自宅の机は使える?
おすすめは、公園の低い鉄棒や、ジムの高さを変えられるバーです。地面に固定された鉄棒は、体重をかけても動かないように作られています。胸からおへその高さの棒が使いやすく、高さの違う鉄棒が並んでいれば、負荷を選べます。
自宅の机の下にもぐって机の縁を引く方法も紹介されることがありますが、次の理由からすすめません。
- 机が倒れる・浮く: 体を引くと、机の反対側が持ち上がることがあります
- 脚や天板が壊れる: 家庭用の机は、真下から体重をかけて引く使い方を想定していません
- 縁で手を傷める: 天板の角は握りにくく、指がすべりやすくなります
- 顔や頭をぶつける: 机の下は狭く、すべったときに逃げ場がありません
どうしても自宅で行う場合は、重く脚がしっかりした机で、まず座ったまま強く引いて動かないか確かめてください。それでも少しでも動く、きしむ場合は中止します。自宅では、道具を使わないスーパーマンなどで背中を鍛える方法もあります。ドアにタオルを挟んで引く方法は、ドアや金具が壊れる危険があるため避けてください。
斜め懸垂のやり方は?
- 胸からおへその高さの鉄棒の下に入り、肩幅よりこぶし1つ分広く、順手(手の甲が上)で握ります
- 腕を伸ばしてぶら下がり、かかとを地面につけて体を斜めにします。頭からかかとまで一直線にします
- お腹とお尻に軽く力を入れ、肩を耳から遠ざけます
- 肩甲骨を寄せながら肘を後ろへ引き、胸の下あたりを棒へ近づけます。1〜2秒で引きます
- 上で1秒止め、背中が縮む感覚を確かめます
- 2〜3秒かけて腕が伸びるまで戻ります。引くときに吐き、戻すときに吸います
動きは上の3Dアニメーションで横から確認できます。体の角度は、立ち位置を変えると調整できます。
よくある間違いは?
- 腰が落ちる: 体が「く」の字になり、背中への負荷が減ります。お尻を締めて一直線に保ちます
- あごだけを棒に近づける: 首を前に出すと首を痛めやすくなります。胸を棒に近づけます
- 肩がすくむ: 首が短く見えたら、肩を下げてから引きます
- 腕だけで引く: 肘を後ろへ引き、肩甲骨を寄せる意識をもちます
- 反動を使う: 腰を振ると回数は増えますが、効きが落ちます
- 戻すときに力を抜く: 一気に落ちると肩に衝撃がかかります。2〜3秒かけて戻ります
肩・肘・腰に痛みが出たら中止してください。鉄棒は、始める前にぐらつきやさびがないか確認し、手がぬれているときは行わないでください。持病のある人、妊娠中の人、けがをしている人は、始める前に医師に相談してください。運動中に胸の痛み、息苦しさ、めまいを感じたら、すぐに中止してください。
何回・何セットやればいい?
8〜15回をきれいに行える角度を選び、2〜3セットから始めます。アメリカスポーツ医学会(ACSM)の指針(2009年)では、筋トレ初心者は8〜12回で限界になる程度の負荷、週2〜3日が目安とされています。厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」でも、筋トレを週2〜3日行うことがすすめられ、背中を含む大きな筋肉を全身まんべんなく鍛えることが勧められています。
| レベル | 体の角度・足の位置 | 回数 | セット | 休憩 |
|---|---|---|---|---|
| 初級 | 体が立ち気味(高い棒)、膝を曲げる | 8〜12回 | 2セット | 90秒 |
| 中級 | 体が45度ほど、膝を伸ばす | 8〜12回 | 3セット | 90秒 |
| 上級 | 体が床とほぼ平行(低い棒) | 10〜15回 | 3〜4セット | 90〜120秒 |
全体の組み立ては自重トレーニングの回数・セット・頻度をご覧ください。
やさしくする・きつくする方法は?
やさしくする
- 高い棒を使う・足を棒に近づける: 体が立つほど軽くなります
- 膝を曲げる: 脚で支える割合が増えます
- 戻す動きだけ行う: 上の位置から3秒かけて戻ります
きつくする
- 低い棒を使う: 体が床と平行に近づくほど重くなります
- 足を台に乗せる: 体が水平以上になり、負荷が増えます。台が動かないことが条件です
- 上で2秒止める: 背中の上部により負荷がかかります
- 片足を浮かせる: 体をねじらずに保つ力も必要になります
斜め懸垂が上級の角度で12回以上できるようになったら、懸垂に挑戦する時期です。懸垂が1回もできない人の段階的な練習は、懸垂ができない人の練習方法で詳しく解説しています。
よくある質問
斜め懸垂だけで懸垂ができるようになりますか?
斜め懸垂は懸垂と同じ背中の筋肉を使うので、土台づくりに役立ちます。ただし、懸垂は体重のほぼすべてを腕と背中で支えるため、ぶら下がる練習や、ゆっくり下りる練習も組み合わせると近づきやすくなります。
順手と逆手、どちらで握ればいいですか?
順手は背中の上部、逆手は腕の前の筋肉が働きやすくなります。まずは順手で始め、慣れてきたら逆手も試してみてください。逆手で行う懸垂についてはチンアップで解説しています。
公園の鉄棒を使ってもいいですか?
多くの公園では使えますが、子ども用の遊具に利用の決まりがある場合もあります。案内板を確かめ、子どもが遊んでいるときは譲りましょう。始める前に、ぐらつきや傷みがないかも確認してください。
腰が痛くなります。どうすればいいですか?
腰が反っているか、落ちている可能性があります。膝を曲げ、体が立ち気味になる角度で、お腹に力を入れて行ってください。それでも痛む場合は中止し、続くようなら医師に相談してください。ほかの種目の動きは3D種目図鑑で、記事全体は自重トレ大全のトップから探せます。
出典
- Fenwick CM, Brown SH, McGill SM. 2009「Comparison of different rowing exercises: trunk muscle activation and lumbar spine motion, load, and stiffness」Journal of Strength and Conditioning Research
- American College of Sports Medicine 2009「Progression models in resistance training for healthy adults」Medicine & Science in Sports & Exercise
- 厚生労働省 2024「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023 筋力トレーニングについて」
この記事は一般的な情報です。痛みが出たら中止し、持病・けががある人や妊娠中の人は、医師に相談してから行ってください。