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自重で背中を鍛える筋トレ|道具なしでできる種目と自宅での工夫

FITPEAK編集部 読了目安 9分

背中は、道具なしの自重トレーニングでいちばん鍛えにくい部位です。床でできるスーパーマンなどで背骨まわりは鍛えられますが、広い背中の筋肉(広背筋)にしっかり効かせるには、体を引き寄せる「つかまる所」が要ります。この記事では、床だけでできることと、家にある物を安全に使う工夫を分けて解説します。

道具なしで背中は鍛えられる?

鍛えられる範囲はありますが、限界もあります。まずこの点を正直にお伝えします。

背中の筋肉は大きく分けて、腕を体に引き寄せる広背筋、肩甲骨を寄せる背中の上側の筋肉(僧帽筋の中部・下部など)、背骨を反らす脊柱起立筋の3つです。このうち脊柱起立筋は、床にうつぶせになるだけで鍛えられます。一方、広背筋と背中の上側は「重さを引く」動きでないと強い負荷をかけにくく、自重では体重を引き上げるための「つかまる所」が必要です。

胸の腕立て伏せのように「床だけで、体重を負荷にして、引く動き」をつくるのは難しいため、多くの自重メニューは背中の負荷が不足しがちです。厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」も、胸・背中・腹・お尻・脚などの大きな筋肉を、特定の部位に偏らず全身まんべんなく鍛えることを勧めています。押す種目ばかりにならないよう、背中は工夫して入れておきたい部位です。

床だけでできる背中の種目は?

道具がまったくない状態で取り入れやすいのは、次の3つです。動きは3D種目図鑑でも確認できます。

1. スーパーマン(Superman)

うつぶせで両腕を前に伸ばし、腕と脚を同時に床から少し浮かせて2〜3秒止めます。背骨を支える脊柱起立筋とお尻に効きます。高く反るほど効くわけではなく、腰を反らしすぎると負担が増えます。目線は床に向け、首を反らさないのがコツです。詳しくはスーパーマンのやり方へ。

スーパーマンの3Dアニメーション(3D種目図鑑で見る)

2. バードドッグ(Bird Dog)

四つんばいから、右腕と左脚を同時にまっすぐ伸ばし、体がぐらつかないように保ちます。背骨まわりの筋肉と腹筋をいっしょに使い、背中と腰の安定性を高める種目です。負荷は軽めなので、背中のトレーニングの準備運動としても使えます。詳しくはバードドッグのやり方へ。

バードドッグの3Dアニメーション(3D種目図鑑で見る)

3. うつぶせの腕の上げ下ろし(Y・T・Wの形)

うつぶせのまま、腕を頭の斜め上(Yの形)、真横(Tの形)、肘を曲げて脇に引く形(Wの形)にして、肩甲骨を寄せながら腕を床から浮かせます。各形で8〜12回、ゆっくり行います。肩甲骨を寄せる背中の上側の筋肉に効き、猫背が気になる人の姿勢づくりに役立ちます。

この3種目は、腰や肩の安定を保つ力をつけるのに向いていますが、広背筋を太くするほどの負荷にはなりにくいことも覚えておいてください。

家にある物で「引く」動きをつくるには?

広背筋まで鍛えたい場合は、体重を引き寄せる種目が必要です。家の中でできる方法を、安全上の注意と合わせて紹介します。

机を使う斜め懸垂(インバーテッドロウ(Inverted Row))

重いダイニングテーブルなどの下にあお向けに入り、天板のふちを両手でつかんで、胸を天板に近づけるように体を引き上げます。体は頭からかかとまで一直線に保ちます。

Fenwickら(2009年)は、健康な男性7人を対象に、斜め懸垂・前かがみのロウ・片手のケーブルロウの3種目を筋電図などで比べました。斜め懸垂は広背筋・背中の上側・お尻の筋肉の活動がほかの2種目より高く、腰の背骨にかかる負担は3種目の中でいちばん小さいという結果でした。研究ではバーを使っていますが、自宅で背中に効かせる種目として理にかなった選択です。詳しいフォームとレベル別の回数は斜め懸垂のやり方で解説しています。

斜め懸垂(インバーテッドロウ)の3Dアニメーション(3D種目図鑑で見る)

机で行う斜め懸垂は、机が倒れたり動いたりすると大きなけがにつながります。キャスター付き・折りたたみ式・軽い机は使わないでください。始める前に、天板に体重をかけて机が浮かないか、天板が外れないかを確かめ、天板のふちは端から端まで指をしっかりかけてつかみます。机の脚の外側に出ないよう、体は机の中央に入れてください。少しでもぐらつく場合は行わないでください。

タオルを使う方法

タオルは体重を預けるのではなく、自分で引っぱり合う使い方が安全です。

  • タオルの引き下ろし: 両手でタオルの両端を持って頭の上に上げ、タオルを左右に引っぱり合いながら、肘を脇腹に向けて引き下ろします。左右に引く力を緩めないことで、広背筋に力が入る感覚をつかめます。10回を2〜3セットが目安です。
  • タオルの押さえ引き: 床に座って足の裏にタオルをかけ、両端を持って背すじを伸ばしたまま、肘を後ろに引き寄せます。足で押し返して抵抗をつくり、引ききった所で2〜3秒止めます。

どちらも負荷は自分の力の入れ方しだいなので、強さを数字で管理しにくい点は理解しておいてください。

ドアを使う方法について

ドアノブにタオルをかけて体を後ろに倒しながら引く方法も紹介されることがありますが、この記事では体重を大きくかけない範囲での利用をおすすめします。ドアノブやちょうつがいは人の体重を支える設計ではなく、外れたりドアが開いたりすると後ろに倒れて頭を打つおそれがあります。

ドアを使う場合は、自分から見て「押すと開く」側に立ち、引くとドアが枠に押しつけられる向きで行ってください。鍵をかけ、家族がドアを開けないよう声をかけます。体の角度は直立に近い浅い角度にとどめ、ドアノブがぐらつく、レバー型で回ってしまう、といった場合は行わないでください。後ろに倒れても危なくないよう、背後に物を置かないでください。

公園の鉄棒が使える場合

外に出られるなら、公園の低い鉄棒での斜め懸垂や、高い鉄棒での懸垂(プルアップ(Pull-up))が、背中に効かせやすい方法です。Youdasら(2010年)は25人(男性21人・女性4人)の筋電図を測り、懸垂と逆手懸垂(チンアップ)のどちらでも広背筋の活動が最大随意収縮の117〜130%と高い値を示したと報告しています。

懸垂(順手)の3Dアニメーション(3D種目図鑑で見る)

懸垂がまだ1回もできない人は、懸垂ができない人の練習方法で、0回から1回にする手順を確認してください。手の向きによる違いは懸垂の順手と逆手の違い、逆手の種目はチンアップのやり方で解説しています。

背中の自重メニューはどう組む?

使える環境によって3つのメニューに分けました。世界保健機関(WHO)の2020年の指針は、大きな筋肉群を使う筋力トレーニングを週2日以上行うことを勧めており、厚生労働省のガイドは週2〜3日を勧めています。これを目安に、間に休息日を入れて行ってください。

環境 種目 回数・時間 セット 休憩
床だけ バードドッグ 左右各8回(伸ばして2秒止める) 2 45秒
床だけ スーパーマン 10回(上げて2〜3秒止める) 3 60秒
床だけ うつぶせY・T・W 各形8回 2 60秒
タオルあり タオルの引き下ろし 10回 3 60秒
机あり 斜め懸垂(膝を曲げる) 6〜12回 3 90秒
机あり 斜め懸垂(脚を伸ばす) 6〜12回 3 90秒

レベル別の目安は次のとおりです。

レベル メニュー
初心者 床だけのメニュー3種目を、フォーム重視で各2セット
中級者 膝を曲げた斜め懸垂3セット+スーパーマン2セット+Y・T・W各2セット
上級者 脚を伸ばした斜め懸垂(足を台にのせる)3〜4セット+スーパーマン3セット

斜め懸垂は、膝を曲げて足を体に近づけるほどやさしく、脚を伸ばしたり足を台にのせたりするほどきつくなります。楽に12回を超えたら角度を一段きつくしてください。全身のメニューへの組み込み方は初心者の1週間メニュー、負荷の上げ方は自重で負荷を上げる方法を参考にしてください。

背中に効いている気がしないのはなぜ?

背中は自分で見えないため、効いている感覚をつかみにくい部位です。よくある原因は次のとおりです。

  • 腕の力だけで引いていて、肩甲骨が動いていない
  • 肩がすくみ、首まわりばかりに力が入っている
  • スーパーマンで高く上げようとして、腰だけが反っている
  • 反動を使って速く動き、引ききった所で止めていない

引くときは「肘を背中側のポケットに入れる」つもりで、肩甲骨を寄せてから腕を引くと、背中に力が入りやすくなります。引ききった所で1〜2秒止め、ゆっくり戻してください。

腰や肩に痛みが出たら、その場で中止してください。腰痛の持病がある人、持病のある人、妊娠中の人、けがをしている人は、始める前に医師に相談してください。運動中に胸の痛み、息苦しさ、めまいを感じたら、すぐに中止して休んでください。

よくある質問

スーパーマンだけで広い背中になりますか?

スーパーマンは主に背骨を支える筋肉とお尻に効く種目で、広背筋への負荷は大きくありません。背中の広がりをつくりたい場合は、斜め懸垂や懸垂のような「引く」種目を加えてください。

机がない家ではどうすればいいですか?

床だけのメニューとタオルを使う種目で、背中の筋肉を使う感覚と姿勢を保つ力を育てておき、外に出られる日に公園の鉄棒で斜め懸垂を行う組み合わせがおすすめです。無理に不安定な家具や扉で代用しないでください。

背中を鍛えると姿勢はよくなりますか?

肩甲骨を寄せる筋肉や背骨を支える筋肉を鍛えると、背すじを伸ばした姿勢を保ちやすくなります。ただし、姿勢は座り方や生活習慣の影響も大きく、筋トレだけで変わるとは言い切れません。肩や腰の痛みが続く場合は医療機関に相談してください。

デスクワークで背中が丸まりがちです。何から始めればいいですか?

まずはうつぶせのY・T・Wの腕の上げ下ろしと、バードドッグから始めるのがおすすめです。どちらも負荷が軽く、肩甲骨を寄せる感覚と、背骨をまっすぐ保つ感覚をつかみやすい種目です。仕事の合間に座ったまま肩甲骨を寄せて5秒止める動きを数回入れるのも、背中の筋肉を使う練習になります。慣れてきたら、斜め懸垂などの引く種目に進んでください。

背中の筋トレは週何回やればいいですか?

週2〜3回が目安です。胸の日と同じ日に行うと、押す種目と引く種目のバランスがとりやすくなります。休養の考え方は筋トレの休養日を参考にしてください。

自重トレーニングの全体像は自重トレ大全のトップから読めます。

出典

この記事は一般的な情報です。痛みが出たら中止し、持病・けががある人や妊娠中の人は、医師に相談してから行ってください。