【高たんぱく質と腎臓】健康な人とCKDの人で、研究の読み方が変わる理由
高たんぱく質の食事は腎臓に悪い、という話を聞いたことがある人は多いはずです。ただ、研究を見ると、対象が健康な人か、腎機能が下がっている人かで状況が分かれます。
この記事では、論文の要旨と厚生労働省の公式資料で確認できた範囲を整理します。そのうえで、外食の高たんぱく質の定食を入れた1日を、体重あたりで計算します。
健康な成人のメタ分析は差なしでしたが確実性は低く、別の総説は長期の害の可能性を挙げています。
- Devries 2018は、腎機能の指標(GFR)に差なし。ただし確実性は低いと評価されています
- Ko 2020の総説は、長期の害の可能性と、6か月超の長期試験の不足を指摘しています
- 腎臓病・糖尿病・健診で指摘された人は、量を医師・管理栄養士に相談してください
- 厚労省2025年版は、目標量の上限をエネルギーの20%としています
まずは1食の公式データを見て、1日の合計を考える材料にできます。
健康な成人を対象にした研究で、腎機能の指標はどう動いたか
まず、健康な成人を対象にした研究です。ここでは、論文の要旨を開いて確認できたものだけを挙げます。
28論文を集めたメタ分析(Devries 2018)
Devriesらは、高たんぱく質の食事と、通常または低めの食事を比べたランダム化比較試験をまとめました。J Nutr 2018年の論文です。
- 28論文・合計1,358人です(GRADE表では31のランダム化比較試験)
- 試験の期間は、4日から104週までの幅があります
- 指標は、腎臓のろ過能力を表す糸球体濾過量(GFR)です
- 介入後のGFRは高たんぱく側でわずかに高く、変化量には差がありませんでした
著者らは、高たんぱく質は健康な成人のGFRに悪影響を与えない、と結論しています。ただし、エビデンスの確実性はGRADEで「low to very low」です。GFRの変化量は「very low」でした。
対象に肥満・2型糖尿病・高血圧の人も含まれ、CKDの人は除かれていました(マクマスター大学の発表)。選択バイアスのリスクが不明確な試験があることも、限界として挙げられています。
厚労省の報告書は、この研究の高たんぱく質を次のように説明しています。エネルギーの20%以上、体重1kgあたり1.5g以上、1日100g以上のいずれかです。
高たんぱく質を8週間続けた小規模な試験(Antonio 2016)
Antonioらは、筋トレ経験のある男性12人で、ふだんの食事と高たんぱく質の食事を8週間ずつ比べました。11人が大半の測定を終えています。
- 平均年齢は25.9歳、筋トレ歴は平均7.6年です
- たんぱく質は、ふだんの食事が体重1kgあたり2.6g、高たんぱく期が3.3gでした
- BUN、クレアチニン、eGFRなどは、有意な変化がなかったと報告されています
比べた対照の「ふだんの食事」自体が、すでに2.6gと高めです。差は0.7gにとどまります。
食事は自己申告で、トレーニングは管理されず、水分状態も評価されていません。人数も少ないため、この結果をすべての人に当てはめることはできません。
古い総説と、新しい総説は何を言っているか
Martinらの2005年の総説は、健康な人で高たんぱく質が腎臓に害を与える有意な証拠は見つからない、と述べています。同じ総説は、腎臓病のある人にはたんぱく質の制限が向く場合があるとも書いています。
Koらの2020年の総説(J Am Soc Nephrol)は、向きが違います。抄録の中心は、腎機能の悪化が腎機能の下がっていない人でも起こりうる、という点です。
長期の高たんぱく質は、新たなCKDにつながりうるとも書かれています。動物性たんぱく質は、植物性より末期腎不全のリスクが高い、という観察研究も紹介されています。
短期(6か月未満)の試験では、ろ過量が上がる「過剰ろ過」が見られます。6か月を超える試験は最長24か月で、影響が小さい結果が多い一方、脱落があり、クレアチニンによる測定には限界があります。
著者らは、高リスクの人は慎重に、長期の大規模な試験が必要、としています。Devriesは「差なし」、Koは「害の可能性と長期データ不足」で、結論の向きが違います。
| 研究 | 対象 | 種類 |
|---|---|---|
| Devries 2018 | 成人1,358人 | 28論文のメタ分析 |
| Antonio 2016 | 筋トレ男性12人 | 8週間ずつの試験 |
| Martin 2005 | 健康な人 | 総説 |
| Ko 2020 | 健康な人とCKD | 総説(慎重) |
この節で言えることと、言えないこと
- 言えること:メタ分析では差がなかったが、確実性は低い
- 言えないこと:何年も続けた場合や、持病のある人にも当てはまるか
- 言えないこと:この結果だけで「安全」「問題ない」と言い切ること
とくに期間は重要です。6か月を超える試験は少なく、最長でも2年程度です。それ以上続けた場合の影響は、この記事の範囲では確認できていません。
腎機能が下がっている人(CKD)では、前提が変わる
慢性腎臓病(CKD)は、腎臓の機能が下がった状態が続く病気です。健康な人の研究結果を、そのまま当てはめてはいけません。
厚労省の報告書(CKDの章)は、CKDの食事療法ではたんぱく質の制限が中心になる、と説明しています。目安として、日本の「慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版」の数字が紹介されています。
| ステージ | 1日の目安 |
|---|---|
| G1〜G2 | 過剰に摂らない(目安は1.3g) |
| G3a | 0.8〜1.0g |
| G3b以降 | 0.6〜0.8g |
※数字は標準体重1kgあたりのたんぱく質量です。
量は医療者が決めるので、自分で当てはめないでください。サルコペニアやフレイルへの対応では、1.5gまで引き上げられる場合もあるなど、病状で変わります。
報告書は、画一的な指導は不適切で、病状に応じて決めるとも述べています。
観察研究も紹介されています。厚労省の報告書によれば、1,624人の女性看護師のうち、腎機能が軽く下がっていた人が対象です。
この人たちでは、たんぱく質が多い群の腎機能低下が速いと報告されています。
多い群は体重あたり1.25g以上、少ない群は0.96g以下です。Koは、腎機能が正常な人では関連が見られなかった、と整理しています。観察研究なので、原因が食事とは確定していません。
ここで大切なのは、自分の腎機能を知らないまま高たんぱく質にしない、という点です。報告書は、CKDと診断されていなくても、CKDの可能性がある人は多い、と指摘しています。
健診のeGFRや尿検査の結果を医師に見せて、相談してください。
腎臓病、糖尿病、健診で異常を指摘された人は、自己判断で高たんぱく質にしないでください。
- 医師か管理栄養士に、たんぱく質の量を確認してください
- 腎臓の手術を受けた人、高齢で持病のある人なども、相談が先です(出典のない、安全側の助言です)
厚労省2025年版は、たんぱく質の上限をどう定めているか
「日本人の食事摂取基準(2025年版)」のたんぱく質の章を、公式PDFで確認しました。ここには、上限の考え方が書かれています。
- 耐容上限量は、どの年齢でも設定していません
- 目標量は、1歳以上の全年齢で上限が20%エネルギーです
- 下限は、18〜49歳で13%、50〜64歳で14%、65歳以上で15%です
耐容上限量を設けなかった理由は、十分で明確な根拠となる報告がないためです。根拠が不十分で設定できないという意味で、安全の証明ではありません。
一方で、目標量の上限に20%を置いた理由も書かれています。20〜23%エネルギー前後には、検証すべき課題が残っています。成人では各種の代謝変化、高齢者では腎機能への好ましくない影響の可能性です。
報告書は、「十分な科学的根拠はまだ得られていない」としたうえで、上限を20%にしたと説明しています。超えると害が出ると示されたわけではありませんが、20〜23%超は検証すべき課題とされています。
報告書には次の注意書きもあります。病気の管理のために、たんぱく質を制限したり多く摂ったりする場合は、そちらを優先すべきだという内容です。目標量より先です。
さらに報告書は、上限のないたんぱく質摂取が健康増進に有益だというわけではない、と注意しています。
レジスタンストレーニング期の成人を対象にした研究にも触れています。1.6g/kgを超えても、除脂肪量の増大は得られない可能性が高い、という内容です。
高たんぱく質の定食を入れた1日は、体重あたりいくらになるか
ここからは外食の例です。公式の栄養成分表の1食当たりの値で、2026年10月確認です。
| 定食 | たんぱく質 | エネルギー | たんぱく質比 |
|---|---|---|---|
| やよい軒 しまほっけ | 50.7g | 631kcal | 32.1% |
| 大戸屋 むねチキン南蛮 | 53.5g | 1,170kcal | 18.3% |
| やよい軒 特から揚げ | 51.7g | 992kcal | 20.8% |
| 松屋 ごろごろチキン | 56.5g | 1,361kcal | 16.6% |
※40g以上の定食から4つを抜粋した表で、順位ではありません。やよい軒は白米の標準盛りです。大戸屋はご飯・味噌汁・漬物込み、松屋はみそ汁込みです。比は1gを4kcalとして計算しました。
1食のたんぱく質比は、定食によって大きく違います。ただし、厚労省の目標量は1日全体のエネルギーに対する割合です。1食の比が20%を超えても、すぐに目標量を超えるわけではありません。
1日の総量を、体重あたりに直す計算例
仮定を置いて計算します。体重70kg、1日のエネルギーを2,500kcalとします。数字は例で、あなたの値ではありません。
| 体重あたり | 1日の量 | エネルギー比 |
|---|---|---|
| 1.2g/kg | 84g | 13.4% |
| 1.6g/kg | 112g | 17.9% |
| 2.0g/kg | 140g | 22.4%(上限超) |
※体重70kg・2,500kcalの仮定です。比は1gを4kcalとして計算しました。
この仮定で、20%は125g(体重あたり約1.79g)です。2.0g/kgの行は、厚労省の目標量の上限を超えます。
昼にしまほっけ定食を食べ、朝・夕・間食で合計60gを足すと仮定します。
- 1日の合計は110.7gです
- 体重あたりは約1.58g、エネルギー比は約17.7%です
このように、たんぱく質が多い定食を1回入れても、1日の合計は目標量の範囲に収まる場合があります。一方、50g前後の定食を3食続けると、150gを超えます。
しまほっけ定食を3食なら約152g、体重あたり約2.17g、エネルギー比は約24%です。この仮定では、上限の20%を超えます。
注意したいのは、食べる量が少ない人です。体重50kg・1日1,500kcalを仮定します。
- 20%は75g(1.5g/kg)です
- 1.6g/kg(80g)だと約21.3%で、上限を超えます
減量中は、同じg/kgでも比が上がりやすくなります。
なお、Antonioの試験で使われた体重1kgあたり2.6〜3.3gを70kgに当てはめると、182〜231gです。これは、この記事の例より大きく上です。一般の人が真似する目安ではありません。
外食で気をつけたい弱点
- から揚げやチキン南蛮は、脂質が多く、食塩相当量も多め
- 公式の食塩相当量は、松屋のごろごろチキンが6.7g、特から揚げが6.9gです
- しまほっけは食塩相当量4.2gで、たんぱく質に対するエネルギーは低め
たんぱく質を増やすと、食塩や脂質も一緒に増える定食があります。腎臓や血圧が気になる人は、たんぱく質だけでなく、食塩相当量も確認してください。
公式の栄養成分は標準値で、店舗や調理で少し違う場合があります。大戸屋の値は秋葉原駅前店の表示で、店舗により異なります。
よくある質問
高たんぱく質の食事は、健康な人の腎臓に悪いですか。
健康な成人のメタ分析では、腎機能の指標(GFR)の変化に差がなかったと報告されています。ただし確実性は低く、総説は長期の害の可能性も挙げているため、「悪くない」と断定はできません。
腎臓病の人も、同じように考えてよいですか。
いいえ。CKDの人は、病気のステージに応じて、たんぱく質を制限することが食事療法の中心になります。量は医師・管理栄養士が決めるため、自己判断で変えないでください。
健診で異常を指摘されたことがありますが、どうすればよいですか。
腎機能や尿検査の異常、糖尿病、高血圧を指摘された場合は、高たんぱく質にする前に医師に相談してください。管理栄養士の食事指導を受けるのも一つの方法です。
厚労省の20%は、超えると危険という意味ですか。
超えると害が出ると示されたわけではありません。ただし報告書は、20〜23%を超える領域を検証すべき課題としています。十分な根拠がないまま、目標量の上限を20%エネルギーとしています。
まとめ
健康な成人のメタ分析は差なしでしたが、確実性は低く、総説は長期の害の可能性も挙げています。6か月を超える試験は少なく、「問題ない」「安全」とは言い切れません。
腎機能が下がっている人は前提が違います。外食の高たんぱく質の定食は、1日の合計を体重あたりで計算し、食塩や脂質も見ながら選んでください。持病や健診の指摘がある人は、医師・管理栄養士へ相談してください。
定食ごとの数字を見比べて、1日の合計に当てはめてみてください。
出典
- Devries MC ら. J Nutr 2018;148(11):1760-1775(メタ分析)
- Antonio J ら. J Int Soc Sports Nutr 2016(筋トレ経験者のクロスオーバー試験)
- Martin WF ら. Nutr Metab 2005;2:25(総説)
- Ko GJ ら. J Am Soc Nephrol 2020;31(8):1667-1679(総説)
- マクマスター大学ニュース(Devries 2018 の発表)
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 たんぱく質の章
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」 慢性腎臓病(CKD)の章
- やよい軒公式サイト しまほっけ定食・特から揚げ定食(2026年10月確認)
- 大戸屋公式サイト 鶏むね肉の大戸屋風チキン南蛮(2026年10月確認)
- 松屋公式サイト ごろごろチキンのチリソース定食(2026年10月確認)
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