ピークウィークとは?水抜き・塩抜き・カーボアップを研究で検証
大会前の最後の1週間に行うピークウィーク。ナチュラル選手81人の調査で94%が何らかの調整をしていたが、カーボアップの効果は小規模な研究に限られ、水抜き・塩抜きは見た目の改善が確かめられていない。利尿薬はJADAの禁止表で常に禁止だ。
ピークウィークは、大会前の最後の約1週間に炭水化物・水分・塩分を調整して見た目を仕上げる期間だ。研究ではカーボアップに一定の裏付けがある一方、水抜き・塩抜きの効果は確かめられておらず、健康被害の報告もある。
2026年10月21日 公開|KINNIKU TIMES 編集部
ボディビルやフィジークの大会が近づくと、「ピークウィーク」「水抜き」「カーボアップ」という言葉を目にする機会が増える。本記事では、ナチュラル(薬物を使わない)選手を対象にした調査や、ピークウィークを扱った総説・試験の要旨をPubMedで確認し、何が分かっていて何が分かっていないのかを整理した。特定の方法を指示するものではなく、危険な脱水や利尿薬の使用は勧めない。
ピークウィークとは何か、何を狙うのか
ピークウィークは、減量の最終盤、大会当日に体を最も良い状態で見せるために行う短期間の調整を指す。カリフォルニア州立大学のエスカランテ(Escalante)氏らが2021年に発表した総説は、選手がよく使う方法として、トレーニングと食事の変更、主要栄養素・水分・電解質の摂取量の操作、各種サプリメントの使用を挙げている。
同総説によると、狙いは主に次の3つだ。
- 筋肉のグリコーゲン(糖の貯蔵)を最大にして、筋肉を張らせる
- 皮下の水分を減らして、筋肉の輪郭をはっきりさせる
- お腹の張り(膨満)を防ぐ
ただし同じ総説は、選手が一般に行っている方法を支える証拠は「乏しい」と明記している。ピークウィークは広く行われているが、研究の裏付けが追いついていない分野である。
ナチュラル選手はピークウィークに何をしているのか
英国シェフィールド・ハラム大学のチャペル(Chappell)氏らは、英国ナチュラル・ボディビル連盟(BNBF)の2016年・2017年シーズンの大会に出たナチュラル選手81人(男性59人、女性22人)に質問票調査を行い、2018年に結果を発表した。大会前の1週間に普段の減量食を続けた選手は、81人中5人(6.2%)にとどまった。
| 方法 | 行った選手の割合(81人) | 報告された内容の例 |
|---|---|---|
| 炭水化物を増やす(カーボアップ) | 82.7% | 1〜4日、制限の後に増やす例が多い |
| 炭水化物を減らす(ディプリート) | 64.2% | 制限期は1日0〜100g |
| 水を多く飲む(ウォーターローディング) | 65.4% | 1日4〜12L |
| 水を減らす(水抜き) | 32.1% | 大会の10〜24時間前から |
| 塩分を増やす | 18.5% | 大会の3〜4日前に操作 |
| 塩分を減らす(塩抜き) | 13.6% | 同上。順番は選手によって逆 |
| ビタミンCの大量摂取 | 23.5% | 1日1〜8g |
出典:Chappell & Simper(2018)の表2・本文より編集部作成。複数の方法を同時に使う選手がいるため、合計は100%にならない。
著者らは、炭水化物の操作は持久系競技の古典的なカーボローディングに似ており、水分の操作は大量の水を飲んだ後に急に減らすことで尿が増える反応を利用しようとしたものだと分析している。そのうえで、こうした方法が健康に悪影響を及ぼす可能性にも触れている。
2024年の調査でも方法はばらばら
ニュージーランドのオークランド工科大学のホーマー(Homer)氏、ヘルムズ(Helms)氏らは2024年、過去5年以内に大会に出た160人の回答を分析した。回答者の65%がナチュラル、90%がアマチュアで、減量期間の平均は約20週、減量中に落とした体重は平均11.5kgだった。
よく使われていたのは、夕方以降に炭水化物を多く摂る「カーボバックローディング」(45%)と、ウォーターローディング(40.6%)。ピークウィークの長さは7日が最も多かった(27.2%)。男性の炭水化物は、最も多い日で平均約490g(体重1kgあたり約6.2g)、最も少ない日で約149g(約1.9g)だった。薬物を使う選手は使わない選手より水を制限しやすい傾向も見られた。著者らは、方法は「複雑で、きわめて個人的」だとまとめている。
カーボアップに効果はあるのか
炭水化物を増やすと、筋肉にグリコーゲンが蓄えられ、それに伴って水も細胞の中に引き込まれる。エスカランテ氏らの総説は、グリコーゲン1gあたり約3〜4gの水が細胞内に蓄えられるとする初期の研究を紹介する一方、よく引用される「2.7g」はラットの肝臓の研究に基づく数字であり、蓄えられる量には個人差が大きいとも指摘している。
| 研究 | 対象 | 方法 | 主な結果 |
|---|---|---|---|
| Balon ら(1992) | 筋トレをする男性9人 | 3日間の低炭水化物+高強度トレ後、3日間の高炭水化物(80%) | 通常食と比べ、腕・胸・脚などの周囲径に差なし |
| de Moraes ら(2019) | 大会に出る男性24人 | 3日間の炭水化物制限の後、24時間カーボアップした15人としなかった9人を比較 | カーボアップした群で筋厚・周囲径・写真の評価が上昇。下痢を15人中7人が報告 |
| Barakat ら(2022) | 男性ボディビルダー1人(著者本人) | 炭水化物の制限・脂質の増量→炭水化物と水の増量→微調整 | 大会3日前から当日にかけて筋厚が増え、皮下の厚みは7か所合計で10%減 |
| Homer ら(2024) | 減量中の男性4人 | 枯渇の後、体重1kgあたり9gの炭水化物と偽薬を入れ替えて比較 | 筋厚は枯渇後から2.9%増。ただし測定誤差や日々の変動を超えるかは判断が難しい |
結果は一様ではないが、近年の研究ほど「炭水化物を増やすと筋肉の厚みが一時的に増える」方向の結果が多い。一方で、対象者は最大でも24人で、1人だけの症例報告も含まれる。ホーマー氏らの2024年の総説は、炭水化物の操作は広く行われているのに、見た目への効果を示す実験的な証拠は少ないと結論づけた。
カーボアップには胃腸の不調という代償もある。de Moraes らの研究では、カーボアップした選手の多くが下痢を訴え、うち4人は「重い」と答えた。チャペル氏らの調査では、白米、じゃがいも、さつまいも、オーツ麦、菓子、ぶどう、バナナなどが使われていた。食べ慣れない食品を一度に大量に摂ると、お腹の張りという、ピークウィークで避けたいはずの状態を招きかねない。
水抜き・塩抜きは効果があるのか、危険はないのか
水抜きと塩抜きについては、見た目を良くすることを示した研究は確認できなかった。ヘルムズ氏らが2014年に発表したナチュラル・ボディビルの栄養指針は、大会直前の水分や電解質の操作について「危険になりうるうえ、見た目が良くなるとは限らない」と述べている。ホーマー氏らの2024年の総説も、炭水化物とあわせて水分や電解質を操作する方法は推測に基づく仕組みを前提にしており、かえって仕上がりを損なう可能性があると指摘した。
報告されている健康被害
エスカランテ氏らの総説は、水分と塩分の極端な操作による命に関わりうる症例を紹介している。35歳の男性ボディビルダーは、大会前の7日間に1日12Lの水を飲み、処方薬の利尿薬を使い、2日間塩分を抜いた結果、ポージング中にめまいと筋肉のけいれんを起こした。検査では血中カリウムの上昇、ナトリウムの低下、水中毒、横紋筋融解症(筋肉が壊れる状態)が見つかった。1991年にスイスの医学誌に載った症例報告でも、大会前の食事操作の後に若いボディビルダーが低カリウム血症、低リン血症、横紋筋融解症、手足の麻痺を起こしている。
利尿薬はドーピング違反にあたる
日本アンチ・ドーピング機構(JADA)が公開している2026年禁止表国際基準では、「S5 利尿薬および隠蔽薬」が「常に禁止される[競技会(時)および競技会外]」物質に分類されている。ドーピング検査のある大会では、見た目のために利尿薬を使うこと自体が違反になりうる。検査の有無にかかわらず、医師の処方なしに使うべき薬ではない。
| 方法 | 研究の裏付け | 主なリスク |
|---|---|---|
| カーボアップ | 小規模な研究で筋厚の一時的な増加 | 胃腸の不調、お腹の張り |
| ウォーターローディングと水抜き | 見た目の改善を示す研究は確認できず | 脱水、電解質の乱れ、水中毒 |
| 塩抜き・塩分増量 | 同上 | 電解質の乱れ、けいれん |
| 利尿薬 | 勧められない | 電解質の乱れ、横紋筋融解症。JADAの禁止表で常に禁止 |
研究者はピークウィークをどう勧めているか
エスカランテ氏らは、変数が互いに影響し合い、反応にも個人差が大きいため「具体的な推奨は不可能」とし、示した計画例はあくまで出発点であって処方ではないと断っている。また、ビキニやフィギュアなどボディビル以外の女子部門は、求められる絞りの基準が異なるため、こうした操作がほとんど、あるいはまったく必要ない場合があるとも書いている。
ホーマー氏らの2024年の総説は、実践上の助言として次の2点を挙げた。
- 操作する変数はできるだけ少なくする
- ピークウィークを行うなら、炭水化物の量を変えた試しを大会より前に行う
エスカランテ氏らの総説は、減量期間を通じたクレアチンの継続にも触れ、クレアチンが細胞内の水分を増やす一方で細胞外の水分は増やさなかった研究を紹介している。クレアチンと水分の関係はクレアチンナビの解説、公式見解は国際スポーツ栄養学会の見解の記事で詳しく扱っている。
よくある質問
ピークウィークは何日前から始めるのか
決まった日数はない。2024年の160人の調査では7日間が最も多く(27.2%)、2018年の調査では炭水化物の制限と増量がそれぞれ1〜4日間という回答が多かった。そもそも、ピークウィークを行わなくても大会に出ることはできる。
水抜きをしないと絞れて見えないのか
見た目の差を左右するのは、数日間の水分ではなく、それまでの減量で体脂肪がどこまで落ちているかだ。水抜きが見た目を良くすることを示した研究は確認できず、ヘルムズ氏らの指針は危険になりうると警告している。減量の進め方は大会の減量期間の目安を参照してほしい。
ベストボディやビキニでもピークウィークは必要か
エスカランテ氏らは、ボディビル以外の女子部門は基準が異なるため、操作がほとんど不要な場合があるとしている。部門ごとに求められる体が違う点は、部門の審査基準を確認したうえで判断したい。
体重制限のある部門ではどうするのか
エスカランテ氏らは、体重制限に合わせる必要がある選手と制限のない選手では、取り組み方が大きく変わりうるとしている。まずは減量の段階で制限に余裕を持って収めておくことが安全策になる。区分はクラシックフィジークの体重制限、メンズフィジークの体重制限の記事にまとめている。
KINNIKU TIMESの視点
研究を並べると、ピークウィークの効果は「数日で体を変える魔法」ではなく、すでに仕上がった体の見え方をわずかに調整する程度のものと読める。結果の大半は、減量期間にどれだけ体脂肪を落とせたかで決まる。初めての大会なら、水分と塩分は普段どおりに保ち、炭水化物も食べ慣れた食品で少し増やす程度にとどめ、変える要素を増やさないのが現実的だ。
試すなら、大会の数週間前に「練習のピーク」を一度行い、鏡や写真で変化を確かめておくとよい。ホーマー氏らの総説が勧める「事前に試す」の考え方に沿う。めまい、けいれん、動悸などが出たら操作をやめ、医療機関を受診してほしい。大会前の流れ全体は初めてのフィジーク大会までの流れ、減量期の食事は大会前の減量食、大会後の過ごし方はリバースダイエットの解説で扱っている。ナチュラル選手の栄養指針はヘルムズ氏らの論文の解説が参考になる。
出典
- Escalante G, et al. Peak week recommendations for bodybuilders: an evidence based approach. BMC Sports Sci Med Rehabil. 2021(PubMed)
- Chappell AJ, Simper TN. Nutritional Peak Week and Competition Day Strategies of Competitive Natural Bodybuilders. Sports (Basel). 2018(PubMed)
- Homer KA, et al. Peak Week Carbohydrate Manipulation Practices in Physique Athletes: A Narrative Review. Sports Med Open. 2024(PubMed)
- Homer KA, et al. An examination of the associations between nutritional peaking strategies in physique sport and competitor characteristics. J Int Soc Sports Nutr. 2024(PubMed)
- Homer KA, et al. The effect of a bodybuilding carbohydrate-loading protocol on anthropometry. Nutrition. 2024(PubMed)
- de Moraes WMAM, et al. Carbohydrate Loading Practice in Bodybuilders. J Sports Sci Med. 2019(PubMed)
- Barakat C, et al. Can Bodybuilding Peak Week Manipulations Favorably Affect Muscle Size, Subcutaneous Thickness, and Related Body Composition Variables? A Case Study. Sports (Basel). 2022(PubMed)
- Balon TW, et al. Effects of carbohydrate loading and weight-lifting on muscle girth. Int J Sport Nutr. 1992(PubMed)
- Britschgi F, Zünd G. Bodybuilding: hypokalemia and hypophosphatemia. Schweiz Med Wochenschr. 1991(PubMed)
- Helms ER, et al. Evidence-based recommendations for natural bodybuilding contest preparation: nutrition and supplementation. J Int Soc Sports Nutr. 2014(PubMed)
- 日本アンチ・ドーピング機構「2026禁止表国際基準」(PDF)
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