大会の減量食はどう組む?たんぱく質・脂質・炭水化物の目安と食事例
大会に向けた減量食の栄養素の目安を、ナチュラル選手の指針、2026年の国際スポーツ栄養学会の見解、英国の全国決勝出場者51人の実際の食事から整理した。体重70kgの男性の計算例と、日本食品標準成分表で組んだ1日約1,850kcalの食事例も載せた。
大会前の減量食は、たんぱく質を除脂肪体重1kgあたり2.3〜3.1g、脂質を総カロリーの15〜30%とり、残りを炭水化物にあてるのが研究に基づく基本形だ。2026年の国際スポーツ栄養学会の見解も、鍛えた人の減量中は体重1kgあたり1.9〜3.2gのたんぱく質を示している。
2026年10月21日 公開|KINNIKU TIMES 編集部
大会に向けた減量では、体脂肪を落としながら筋肉をできるだけ残すことが目標になる。本記事では、ナチュラル(薬物を使わない)選手の栄養指針、フィジーク選手向けの総説、国際スポーツ栄養学会(ISSN)が2026年10月に公開した減量食の公式見解、実際の選手の食事を調べた研究の要旨をPubMedで確認し、栄養素の目安を数字で整理した。食品の栄養価は文部科学省の日本食品標準成分表(八訂)増補2023年で確かめた。
大会の減量食でたんぱく質はどれだけ必要か
たんぱく質は、減量中の筋肉を守るうえで最も重視される栄養素だ。主な指針の数字を並べると次のようになる。
| 出典 | 減量中のたんぱく質の目安 | 体重70kg・体脂肪率15%の男性なら |
|---|---|---|
| Helms ら(2014)ナチュラル・ボディビルの栄養指針 | 除脂肪体重1kgあたり2.3〜3.1g | 約137〜184g |
| Roberts ら(2020)フィジーク選手向けの総説 | 体重1kgあたり1.8〜2.7g | 約126〜189g |
| ISSN公式見解(2026) | 体脂肪が少なく筋トレをする人の減量中は体重1kgあたり1.9〜3.2g | 約133〜224g |
計算:除脂肪体重=70kg×(1−0.15)=59.5kg。ISSNの見解は、筋肉の合成を最大にするには1.6〜2.2g、体脂肪が少なく筋トレをする人がカロリー不足の状態で除脂肪量を最大限保つには1.9〜3.2gとしている。一般の人の減量には1.2〜1.6gが適切とも書いており、大会に向けて絞る選手は一般の減量より多めにとる必要があるという整理だ。
ヘルムズ(Helms)氏らの指針は、体脂肪が少ない人ほどたんぱく質の必要量が高いという証拠があると述べている。除脂肪体重あたりで目安を示しているのはこのためだ。自分の除脂肪体重はFFMI計算で、1日の摂取量の配分はPFC計算で見積もれる。
実際の選手はどれだけ食べていたか
英国シェフィールド・ハラム大学のチャペル(Chappell)氏らは、厳しいドーピング検査とうそ発見器の検査がある英国ナチュラル・ボディビル連盟(BNBF)の全国決勝に出た選手51人の食事を調べ、2018年に発表した。体重1kgあたりの平均摂取量は次のとおりだ。
| 栄養素(体重1kgあたり) | 男性・減量開始時 | 男性・終盤 | 女性・減量開始時 | 女性・終盤 |
|---|---|---|---|---|
| たんぱく質 | 2.8g | 3.0g | 2.7g | 2.8g |
| 炭水化物 | 4.4g | 4.1g | 3.9g | 3.3g |
| エネルギー | 35.4kcal | 32.7kcal | 32.5kcal | 29.5kcal |
出典:Chappell ら(2018)の表2より編集部作成。脂質は男女とも開始時に約0.8gで、終盤は男性の上位・下位とも0.6gまで下がっていた。
選手の食事は「高たんぱく・高炭水化物・低脂質」で、時間とともに炭水化物と脂質を減らしていく形だった。5位以内に入った男性は、入らなかった男性より減量開始時の炭水化物が多かった(体重1kgあたり5.1gと3.7g)。著者らは、多めの炭水化物が筋肉の維持に役立った可能性があるとしつつ、確かめるには追加の研究が必要だとしている。
脂質と炭水化物の割合はどう決めるか
脂質と炭水化物は、たんぱく質を決めた後の「残りのカロリー」の配分になる。
| 出典 | 脂質 | 炭水化物 |
|---|---|---|
| Helms ら(2014) | 総カロリーの15〜30% | 残りのカロリー |
| Roberts ら(2020) | 減量中は総カロリーの10〜25%と低め | 残りを炭水化物にあて、トレーニングの質を保つ |
| ISSN公式見解(2026) | 好みに合わせて決めてよい | ケトジェニックから低脂質まで減量効果は同程度 |
ISSNの見解は、減量そのものについては炭水化物と脂質の比率は個人の好みで決めてよいとする一方、ケトジェニックダイエット(極端な糖質制限)は高炭水化物の食事より除脂肪量が減りやすい傾向があると指摘している。ロバーツ(Roberts)氏らの総説が脂質を低めに抑えて炭水化物を確保するよう勧めるのも、トレーニングの質を保ち、カロリー制限の悪影響を和らげるためだ。糖質制限と筋肉の関係はケトジェニックダイエットの記事で詳しく扱っている。
1日の摂取量の計算例と食事例
体重70kg・体脂肪率15%の男性が、1日の摂取量を1,900kcalに設定した場合の配分を計算した。摂取量そのものは人によって大きく違うため、まずは体重が横ばいになる量を2〜3週間の記録から見積もり、そこから体重が週0.5〜1%減る量に調整する。必要な期間は減量期間の早見表で確認できる。
| 手順 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| 1. たんぱく質 | 除脂肪体重59.5kg×2.35g | 約140g(560kcal) |
| 2. 脂質 | 1,900kcal×20%÷9 | 約42g(380kcal) |
| 3. 炭水化物 | (1,900−560−380)kcal÷4 | 約240g(960kcal) |
この配分に近い1日の食事例を、日本食品標準成分表の数値で組んだ。
| 食事 | 内容 | エネルギー | たんぱく質 | 脂質 | 炭水化物 |
|---|---|---|---|---|---|
| 朝 | オートミール60g、全卵150g | 423kcal | 26.5g | 18.7g | 42.1g |
| 昼 | ごはん200g、鶏むね肉(皮なし)200g | 522kcal | 51.6g | 4.4g | 74.4g |
| 練習前後 | ごはん150g、納豆50g | 326kcal | 12.0g | 5.5g | 61.7g |
| 夜 | ごはん200g、まだら250g、オリーブ油10g | 581kcal | 49.0g | 11.1g | 74.5g |
| 合計 | 1,852kcal | 139.1g | 39.7g | 252.6g |
計算:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年の100gあたりの値(ごはん=水稲めし精白米156kcal・たんぱく質2.5g、鶏むね肉皮なし生105kcal・23.3g、全卵生142kcal・12.2g、オートミール350kcal・13.7g、糸引き納豆184kcal・16.5g、まだら生72kcal・17.6g、オリーブ油894kcal)から編集部が算出。肉・魚は生の重さ。野菜や調味料は含まない。
たんぱく質は朝・昼・夜の3回に25g以上ずつ分けている。ISSNの見解は、体を動かす人が減量を続けるときは、たんぱく質の多い食事を1日3回以上に分けると除脂肪量の維持に役立つ可能性があるとしている。ロバーツ氏らは1日4〜5回に分け、そのうち1回をトレーニングの前後に、1回を寝る前にとることを勧めた。ヘルムズ氏らの指針は、トレーニング前後のたんぱく質として体重1kgあたり0.4〜0.5gを目安に挙げている。ただしISSNの見解は、配分よりも1日の総量のほうが重要だとしている。
減量が進んだら何を変えるか
ヘルムズ氏らの指針は、仕上がりに近づいたら炭水化物を25〜50g増やし、カロリー不足を100〜200kcal小さくする方法を、パフォーマンスと除脂肪量を保つ選択肢の一つとして例示している。チャペル氏らの調査でも、選手は終盤に向けて炭水化物と脂質を少しずつ減らしており、たんぱく質はほぼ維持していた。減らすときは一度に大きく削らず、週の平均体重の変化を見ながら少しずつ調整するのが基本になる。
サプリメントはどう位置づけるか
ヘルムズ氏らの指針は、大会準備に関係する有益な効果がみられるサプリメントとして、クレアチン一水和物、カフェイン、ベータアラニンの3つを挙げ、それ以外は効果がないか、さらなる研究が必要だとした。
- クレアチン:減量中も続ける価値がある。飲み方と安全性は国際スポーツ栄養学会の見解の解説、減量期の使い方はクレアチンナビの記事にまとめている
- プロテイン:食品の一つであり、必須ではない。食事だけで目標のたんぱく質に届かない日に補う手段になる。使い分けはプロテインナビの記事を参照してほしい
- カフェイン:トレーニング前に使われることが多いが、睡眠を妨げない時間帯にとどめたい
いわゆる「脂肪燃焼」をうたう製品は、上記の指針で効果が認められた3つには含まれていない。サプリメントは食事の土台ができてからの上乗せと考えたい。
減量食で気をつけたい健康面
スウェーデンのカロリンスカ研究所のファーゲルベリ(Fagerberg)氏が2018年に発表した総説は、ナチュラルの男性ボディビルダーについて、エネルギー利用可能量(運動で使う分を除いて体の機能に回せるエネルギー)が除脂肪量1kgあたり25kcalを下回る状態が長く続くと、筋肉の減少、ホルモンの乱れ、心の不調、心血管への悪影響が起きるとまとめた。20kcalを下回った症例では、減った体重の4割超が筋肉だった。著者は、25kcalを上回る穏やかな方法のほうが筋肉の減少が少ない可能性があるとしている。
ヘルムズ氏らの指針は、見た目を競う競技では摂食障害やボディイメージの障害のリスクが高まるとして、専門家に相談できる環境を持つよう勧めている。食べることへの強い不安や、食べすぎと絶食の繰り返しが続く場合は、医師や管理栄養士に相談してほしい。持病のある人、服薬中の人も、食事を大きく変える前に医師に相談したい。
よくある質問
減量中にたんぱく質をとりすぎても大丈夫か
ISSNの見解は鍛えた人の減量中に最大で体重1kgあたり3.2gまでを示しており、実際の上位選手も3g前後をとっていた。一方、高たんぱく食で肝臓や腎臓の検査値が上がったとする研究もある(3.2g/kgの試験の記事)。腎臓に持病がある人は医師に相談してほしい。
炭水化物は夜に食べないほうがよいか
ISSNの見解は、1日の食事の回数は体重や体脂肪の減少に大きく影響しないとし、たんぱく質も配分より1日の総量が重要だとしている。今回確認した指針の中に、夜の炭水化物を避けるよう求めるものはなかった。トレーニングの時間に合わせて炭水化物を多めに配分するなど、続けやすさで決めてよい。
チートデイは入れるべきか
必須ではない。ロバーツ氏らは、食事制限の休止やリフィードが有益な可能性があるとしている。入れ方はチートデイの記事で解説している。
鶏むね肉と白米以外でもよいか
よい。チャペル氏らの調査で選手が1日に食べていた食品は平均で約10〜13品目で、決まった食品に限る必要はない。栄養素の量が合っていれば、魚、卵、大豆製品、いも類なども使える。外食やコンビニの選び方は筋メシナビが参考になる。
KINNIKU TIMESの視点
指針の数字を並べると、たんぱく質の目安はおおむね体重1kgあたり2〜3gに集まる。日本の一般的な食事は主食の比率が高いため、炭水化物は足りやすく、不足しやすいのはたんぱく質の量と、主菜を毎食そろえることだ。初めての減量では、先にたんぱく質の量を毎食決め、脂質は調理油と肉の脂身で調整し、ごはんの量で全体のカロリーを合わせると管理しやすい。
減量食は「何を食べるか」より「同じ量を何か月続けられるか」で結果が分かれる。食事例の食品はスーパーで買えるものに限ったが、好みの食品に置き換えて構わない。大会直前の調整はピークウィークの解説、大会後の食事の戻し方はリバースダイエットの解説、論文の詳しい読み方はヘルムズ氏らの指針の解説にまとめている。
出典
- Helms ER, Aragon AA, Fitschen PJ. Evidence-based recommendations for natural bodybuilding contest preparation: nutrition and supplementation. J Int Soc Sports Nutr. 2014(PubMed)
- Roberts BM, et al. Nutritional Recommendations for Physique Athletes. J Hum Kinet. 2020(PubMed)
- Aragon AA, et al. International Society of Sports Nutrition position stand: diets for body weight reduction. J Int Soc Sports Nutr. 2026(PubMed)
- Chappell AJ, et al. Nutritional strategies of high level natural bodybuilders during competition preparation. J Int Soc Sports Nutr. 2018(PubMed)
- Fagerberg P. Negative Consequences of Low Energy Availability in Natural Male Bodybuilding: A Review. Int J Sport Nutr Exerc Metab. 2018(PubMed)
- 文部科学省「食品成分データベース」(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年)
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