ISSNのクレアチン見解を日本語で整理:9つの結論と読み方
国際スポーツ栄養学会(ISSN)が2017年に出したクレアチン見解の要点を、有効性・安全性・摂取量・形態の観点で表に整理します。見解の限界と読むときの注意点も解説します。
監修ではなく、公開されている研究・公的情報をもとにした編集部の解説です。持病・服薬のある方、妊娠中の方は医師に相談してください。
ISSNは、モノハイドレートが最も研究された形態で、健康な人が推奨量で取る限り重大な副作用の報告は乏しいとしています。
ISSNとは何か、このクレアチン見解の位置づけ
ISSN(International Society of Sports Nutrition、国際スポーツ栄養学会)は、運動とスポーツ栄養に関する研究者や専門家の学術団体です。クレアチンについては、2017年に「Safety and efficacy of creatine supplementation in exercise, sport, and medicine(運動・スポーツ・医療におけるクレアチン摂取の安全性と有効性)」というポジションスタンド(見解)を発表しています。著者はKreider氏ら10名で、200を超える研究を整理した内容です。
この見解は、クレアチンについて世界で最も参照されている文書の一つです。2007年にも同学会が最初のクレアチン見解を出しており、2017年版はその更新にあたります。日本語の資料は多くないため、この記事で要点を整理します。
注意点として、これは学会が研究を総括した「見解」であり、法律や医療の指針ではありません。個々の方への助言でもありません。基礎から知りたい方はクレアチンとは何か?基礎知識をゼロから解説を先に読むと理解しやすくなります。
見解の主な結論を表で整理する
2017年の見解は、全部で9つの結論で構成されています。次の表は、その要点を日本語にまとめたものです(学会の表現を意訳しており、原文は出典の論文を確認してください)。
| 項目 | ISSNの見解(要点) | この記事での補足 |
|---|---|---|
| 有効性 | クレアチンモノハイドレートは、高強度運動の能力とトレーニング中の除脂肪量を高める目的で、利用できる栄養補助のなかで最も有効と位置づけ | 効果の範囲は条件によって異なる。クレアチンの効果として報告されているものを整理する |
| 安全性 | 健康な人が推奨範囲で取る限り、有害事象の報告は乏しい | 持病・服薬のある方は医師へ。クレアチンは腎臓に悪い?公的機関・研究レビューの見解 |
| 子ども・青年 | 適切な管理のもと、バランスの取れた食事を取る競技者であれば安全に使えるとされる | 未成年は保護者・医師と相談。未成年・シニア層のクレアチン摂取に関するQ&A |
| 18歳未満の注意書き | 製品ラベルの注意書きは、科学的な裏づけがあるとは言えない | 国内製品の表示には従うこと |
| 形態 | モノハイドレートが最も研究され、臨床的にも有効な形態 | クレアチン・モノハイドレートとは?最も研究されている理由 |
| 同時摂取 | 炭水化物、または炭水化物とたんぱく質との同時摂取で取り込みが高まる可能性。ただし成績への上乗せは単体を超えないかもしれない | クレアチンとプロテインの違いは? |
| 摂取方法 | 体重1kgあたり約0.3gを5〜7日間、その後1日3〜5gが最も速い。少量(1日3〜5g)のみでも3〜4週間で同等の貯蔵に近づく | クレアチンのローディング法とは?やり方とメリット・デメリット |
| 高用量の研究 | 1日0.3〜0.8g/kgを患者集団で数年間使用しても、臨床的に重大な有害事象は報告されていない | 管理下の研究であり、自己判断での高用量は推奨しない |
| 今後の課題 | 医学的な用途について、さらなる研究が必要 | — |
摂取量と方法に関する結論をどう読むか
摂取方法について見解が示すのは、「ローディング(短期集中の摂取)をすると貯蔵が速く満たされる」ことと、「少量を続けても数週間で近い状態に至る」ことの2点です。どちらを選ぶかは、速さを重視するか、胃腸への負担や手間を減らしたいかで変わります。
ローディングの目安は、体重1kgあたり約0.3gを5〜7日間(体重60kgなら1日18g程度で、数回に分けて摂取)、その後は1日3〜5gで維持するというものです。一方、最初から1日3〜5gだけを続ける方法では、貯蔵が満たされるまで3〜4週間かかるとされています。2021年のレビュー論文でも、1日3〜5gを少なくとも4週間続けると、ローディングに近い筋肉内の貯蔵に至ると説明されています。
実践の観点では、多くの人にとって「1日3〜5gを毎日続ける」方法がシンプルです。ローディングの具体的な進め方と注意点はクレアチンのローディング法とは?やり方とメリット・デメリットに、毎日続ける意味はクレアチンは毎日飲まないと意味がない?飲み忘れたときの対応に書いています。
安全性に関する結論と、読むときの注意
安全性については、見解は「健康な人が推奨される範囲で取る場合、臨床的に意味のある副作用は報告されていない」という立場です。腎臓や水分バランスについても、2017年版と2021年のレビュー論文は、健康な人が推奨量で取る限り、腎機能への悪影響を示す有力な根拠は見つかっていないとしています。
ただし、これは「すべての人に問題がない」という意味ではありません。見解や論文は、主に健康な成人や管理された研究条件を前提にしています。次の方は、始める前に医師へ相談してください。
- 腎臓に病気がある、または健診で腎機能の数値を指摘されたことがある。
- 服薬中(特に腎臓や尿量に関わる薬)。
- 妊娠中・授乳中。
- 未成年(保護者・指導者とも相談)。
健診の数値の見方はクレアチン摂取中に健康診断を受けると「クレアチニン値」はどう見える?を参照してください。水分と体重の変化についてはクレアチンで水太りする?体重増加の正体を解説で解説しています。
見解の限界と、最新情報の確かめ方
2017年の見解は、発表から時間がたっています。その後も研究は続いており、2021年には同学会の研究者らが「よくある疑問と誤解」をテーマにレビューを発表しました。そこでは、水分の保持、腎臓、ステロイドとの違い、ローディングの要否などが扱われています。ステロイドとの違いはクレアチンとステロイドは同じ?成分・作用・規制の違いで整理しています。
一般向けの記事を読むときは、次の3点を確かめる習慣をつけてください。(1)出典に論文や公的機関が示されているか。(2)対象が健康な成人か、競技者か、特定の患者集団か。(3)効果を数値で測っているか、体感の話か。クレアチンのレビュー・口コミの読み方も参考になります。
また、この見解は「クレアチンモノハイドレート」を前提にしています。他の形態(HCL、エチルエステルなど)について同じことが当てはまるとは限りません。2011年のレビュー(Jägerら)でも、新しい形態がモノハイドレートより有効または安全だとする証拠は乏しいとされています。形態の比較はクレアチン・モノハイドレートとは?最も研究されている理由をご覧ください。価格を比べたいときは筋トレ最安ナビが使えます。
日本の読者が見解を生活に落とし込むときの考え方
見解の内容を自分の生活に当てはめるときは、次の順で考えると整理しやすくなります。(1)自分が見解の前提(健康な成人、またはトレーニングをしている人)に当てはまるか。(2)持病、服薬、妊娠・授乳の有無。(3)目的と期待の置き方(体感ではなく、記録で確認する)。(4)製品の表示と価格。この順に確認すれば、見解の結論を過大にも過小にも受け取らずに済みます。
また、見解は「競技者の成績」を主な関心の中心に置いているため、一般の健康維持を目的とする方が同じ結論をそのまま当てはめることは適切ではない場合があります。筋トレをしない人や、有酸素運動が中心の人にどこまで当てはまるかは、研究ごとに結果が異なります。クレアチンの発見と研究の歴史を振り返るで、研究が積み重なってきた経緯も見ておくと、見解の位置づけが分かりやすくなります。
よくある質問
ISSNのクレアチン見解の結論を一言で言うと?
クレアチンモノハイドレートは、高強度運動の能力などを高める目的で最も有効とされる栄養補助の一つで、健康な人が推奨量で取る限り重大な副作用の報告は乏しい、というものです。
ISSNの見解は法律や医療の指針ですか?
いいえ。学会が研究を整理した見解であり、法的な基準や個別の医療助言ではありません。持病や服薬のある方は医師に相談してください。
ISSNが示す1日の摂取量はどれくらいですか?
見解では、ローディング後の維持として1日3〜5gが示されています。ローディングを行わず、1日3〜5gを続ける方法でも3〜4週間で近い状態に至るとされています。
見解は最新の内容ですか?
2017年版が中心で、その後2021年に同学会の研究者らがレビュー論文を発表しています。最新の情報は、出典の論文や公的機関のページで確認してください。
出典・参考
- Kreider RB, et al. International Society of Sports Nutrition position stand: safety and efficacy of creatine supplementation in exercise, sport, and medicine. J Int Soc Sports Nutr. 2017;14:18.
- Antonio J, et al. Common questions and misconceptions about creatine supplementation: what does the scientific evidence really show? J Int Soc Sports Nutr. 2021;18:13.
- Jäger R, et al. Analysis of the efficacy, safety, and regulatory status of novel forms of creatine. Amino Acids. 2011;40(5):1369-1383.
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