【研究で解説】ピラティスはランニングに役立つ?ランナーの体幹と取り入れ方
ピラティスはランニングの補強運動として取り入れる人が多く、研究でも、ふだん走っているランナーが12週間ピラティスを行ったところ5kmのタイムが縮んだという結果があります。一方で、研究の数は少なく参加者も数十人規模で、けがを防げるかどうかはまだはっきりしていません。走る練習の代わりではなく、体幹や姿勢をコントロールする練習として週1〜2回ほど組み合わせるのが現実的です。痛みやけががある人は、始める前に医師に相談してください。
ランナーを対象にしたピラティスの研究(主なもの)
- 12週間で5kmのタイムが縮んだ(32人)
- 6週間で動きのテストの点数が上がった(40人)
- 12週間の自宅ピラティスで、走るときの膝の内側への入り込みに有意な差は出なかった(34人)
ピラティスとランニングの研究でわかっていること
ピラティスは、体幹の安定・筋力・柔軟性・筋肉のコントロール・姿勢・呼吸を意識する運動と整理されています(Wellsら, 2012)。走るときには、脚を前に運ぶあいだも胴体を安定させる必要があるため、ランナーの補強として注目されてきました。ランナーを対象にした主な研究は次のとおりです。
| 研究 | 内容 | 結果 |
|---|---|---|
| Finattoら, 2018 | 練習を積んだランナー32人を、ピラティスを12週間行う群と行わない群に分けた | ピラティス群は5kmのタイムが平均25.65分から23.23分に縮んだ(行わない群は25.33分から24.61分)。同じ速さで走るときのエネルギーの使い方も効率がよくなった |
| Lawsら, 2017 | 市民ランナー40人が6週間、理学療法の考えを取り入れたピラティスを受けた | 動きのくせを見るテストの点数が上がった。けがが減ったかどうかは調べていない |
| GonzálezとOrtiz, 2023 | 走り始めたばかりの34人。12週間、自宅でマットのピラティスを行った | 膝が内側に入る動きは減る傾向だったが、統計的にはっきりした差ではなかった |
まとめると、「ピラティスで速くなる」「けがをしなくなる」と言い切れる段階ではありません。Finattoらの研究は対象が練習を積んだランナーで、人数も少ないため、ほかの人に同じ結果が出るとは限りません。研究で使われたピラティスの内容(マットかマシンか、指導の有無)もそれぞれ違います。
ランナーがピラティスで意識しやすいこと
研究とは別に、ランナーがピラティスで練習しやすいポイントを整理しました。どれも「この種目をすれば走りがよくなる」というものではなく、自分の体の使い方に気づくための練習と考えてください。
| 意識すること | ピラティスでの練習の例 | 走りとのつながり |
|---|---|---|
| 骨盤と背骨の位置 | あお向けで骨盤をニュートラルに保ったまま脚を動かす | 脚を動かしても胴体がぶれにくい感覚をつかむ |
| 片脚での安定 | 横向きで脚を動かす種目、立って片脚で行う種目 | 着地は片脚ずつなので、片側で支える練習になる |
| 股関節の動き | 脚で円を描く、リフォーマーで脚を押す種目 | 膝だけでなく股関節から脚を動かす意識 |
| 呼吸 | 胸を横に広げる呼吸と動きを合わせる | 力みを減らし、リズムよく呼吸する練習 |
| 上半身の力み | 肩をすくめずに腕を動かす種目 | 腕振りで肩が上がるくせに気づく |
どの部分を重点にするかは、走り方のくせや目的によって違います。自分に合った種目を選んでもらいたい人は、マンツーマンのレッスンで「ランニングのために通いたい」と伝えると、メニューを組んでもらいやすくなります。マンツーマンのスタジオはマンツーマンのマシンピラティスおすすめで比べています。
走る練習との組み合わせ方
厚生労働省のガイドでは、大人に筋力トレーニングを週2〜3日行うことがすすめられています(厚生労働省, 2023)。ピラティスもこの「筋力をつける運動」の一部として考えると、走る練習と組み合わせやすくなります。
- 頻度:まずは週1〜2回。Finattoらの研究も12週間続けた結果なので、数回で変化を判断しない。
- タイミング:強い練習(スピード練習や長い距離)の直前は避け、休みの日や軽い練習の日に入れる。
- レース前:新しい種目やきつい種目はレース直前に始めない。
- 記録する:走ったときの感覚や、疲れ・痛みの有無をメモしておくと、合っているか判断しやすい。
| 曜日の例 | 内容 |
|---|---|
| 月 | 休み、またはピラティス(軽め) |
| 火 | ランニング(ふつうのペース) |
| 水 | 休み |
| 木 | ランニング(少しきつめ) |
| 金 | ピラティス |
| 土 | ランニング(長め・ゆっくり) |
| 日 | 休み |
上の表は一例です。練習量や体調に合わせて調整し、疲れがたまっているときは休みを優先しましょう。
注意したいこと
- 膝・すね・足首・腰などに痛みがあるときは、自己判断でピラティスや走る練習を続けず、医師に相談してください。
- ピラティスは痛みの治療ではありません。けがの回復中は、医師や理学療法士の指示を優先します。
- 走ったあとの疲れた状態で難しい種目を行うと、形がくずれやすくなります。
- グループレッスンでは、ランナー向けの調整がしにくいこともあります。目的を伝えやすいレッスンを選びましょう。
なお、ピラティスの運動の強さは「全般」で2.8メッツとされていて(中江・吉村・小野「改訂第2版『身体活動のメッツ(METs)表』成人版」)、ジョギング(全般)の7.5メッツと比べると軽い運動です。持久力そのものを高める練習としてではなく、補強として位置づけましょう。
よくある質問
ピラティスとヨガ、ランナーにはどちらがいいですか?
目的によります。ピラティスは体幹で姿勢を保ちながら手足を動かす練習が多く、ヨガはポーズを保つことや柔軟性、呼吸に重きを置くことが多い運動です。違いはピラティスとヨガの違いにまとめています。
マットとマシン、ランナーにはどちらが向いていますか?
研究ではマットも使われていて、どちらが優れるとは言えません。マシンはばねで負荷を変えたり、脚の動きを支えてもらったりできます。違いはマットピラティスとマシンピラティスの違いで解説しています。
ピラティスをすればランニングのけがを防げますか?
動きのテストの点数が上がった研究はありますが、けがが減ったかどうかまでは確かめられていません。けがの予防には、練習量を急に増やさないことや休養も大切です。
ピラティスはランニングの前と後、どちらにやるといいですか?
決まりはありません。走る前に軽い種目を体を動かす準備として行う人もいますが、きつい種目で疲れてから走るのは避けましょう。別の日に分けるほうが取り組みやすい人も多いです。
出典
- Finatto P, et al. Pilates training improves 5-km run performance by changing metabolic cost and muscle activity in trained runners. PLoS One. 2018
- Laws A, et al. The Effect of Clinical Pilates on Functional Movement in Recreational Runners. Int J Sports Med. 2017
- González J, Ortiz A. Impact of Pilates mat-based exercises on knee kinematics during running. J Bodyw Mov Ther. 2023
- Wells C, et al. Defining Pilates exercise: a systematic review. Complement Ther Med. 2012
- 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」
- 中江悟司・吉村英一・小野玲「改訂第2版『身体活動のメッツ(METs)表』成人版」
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