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自重トレーニングは40代・50代から|筋肉の衰えに備えるメニューと続け方

FITPEAK編集部 読了目安 12分

40代・50代から自重トレーニングを始めるなら、週2〜3日、脚・お尻・胸・背中などの大きな筋肉を1回20〜30分が目安です。WHOも厚生労働省も、年齢を問わず筋力トレーニングを週2日以上行うことをすすめており、自重で行う腕立て伏せやスクワットもその中に含まれます。大事なのは強さより、ゆっくり正しく、長く続けることです。

40代・50代から自重トレーニングを始めても遅くない?

遅くはありません。筋肉は年齢に関係なく、使えば応えてくれる組織です。厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」の情報シートでも、「筋肉は年齢に関係なく鍛えることができます」と書かれています。

実際に、70歳以上の人を対象にした研究でも、自重だけのトレーニングで脚の筋肉の厚みが増えたことが報告されています(あとで詳しく紹介します)。40代・50代はそれより若く、体の反応も期待しやすい年代です。

一方で、この年代は仕事や家庭の事情で運動から離れていた人が多く、関節やけがの不安もあります。そこで、器具を使わず自宅で、自分の体重だけを負荷にする自重トレーニングは、始めやすい選択肢になります。自重トレーニングそのものの特徴は自重トレーニングの効果とメリット・限界で詳しくまとめています。

年齢とともに筋肉はどう変わる?(サルコペニアとは)

年齢とともに筋肉の量と筋力が少しずつ落ちていき、その結果、歩く・立つといった体の働きが下がった状態をサルコペニアと呼びます。

国際的な研究グループがまとめた「サルコペニアの国際臨床診療ガイドライン」(デントら、2018年)では、サルコペニアは高齢者のおよそ6〜22%にみられるとされています。そしてその対策として、筋力トレーニングを中心とした運動を「強く推奨」しています。たんぱく質を多く含む食事も、条件つきですすめられています。

サルコペニアが問題になるのは主に65歳以降ですが、筋肉の量や筋力は、そこに至るまでの何十年かの積み重ねで決まります。40代・50代から筋肉を使う習慣をつくっておくことは、その先への備えになります。

  • 階段や坂道で、以前より脚が重く感じる
  • 椅子から立ち上がるとき、手をつくことが増えた
  • ペットボトルのふたが開けにくくなった
  • 片脚立ちで靴下をはくとふらつく

こうした変化に心当たりがある人ほど、筋肉を使う時間を少しずつ増やしていく価値があります。

WHOと厚生労働省は、40代・50代に何をすすめている?

どちらの指針も、有酸素運動に加えて、筋力トレーニングを週2日以上行うことをすすめています。

WHOの指針(2020年)

ブルら(2020年)がまとめた世界保健機関(WHO)の「身体活動と座位行動に関するガイドライン」では、18〜64歳の成人に次の内容をすすめています。

  • 中強度の有酸素運動を週150〜300分(または高強度を週75〜150分)
  • 主な筋肉をすべて使う、中強度以上の筋力トレーニングを週2日以上

65歳以上ではこれに加えて、バランスと筋力のトレーニングを組み合わせた多要素の運動を週3日以上行い、体の働きを保って転倒を防ぐことがすすめられています。

厚生労働省のガイド(2023年)

厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、今回の改定で筋力トレーニングが推奨事項に加わりました。成人版の推奨は次のとおりです。

  • 歩行またはそれと同じくらいの強さの身体活動を1日60分以上(1日約8,000歩以上に相当)
  • 息が弾み汗をかく程度の運動を週60分以上
  • 筋力トレーニングを週2〜3日

高齢者版では、1日40分以上(約6,000歩以上)の身体活動に加え、筋力トレーニングを週2〜3日、さらに筋力・バランス・柔軟性などを組み合わせた運動を週3日以上とされています。また情報シートには、筋力トレーニングには自重で行う腕立て伏せやスクワットも含まれると明記されています。

つまり、自宅でできる自重トレーニングでも、公的な指針の「筋力トレーニング」に当てはまります。

筋力トレーニングで、どんな良いことが期待できる?

筋力や体の働きの維持だけでなく、病気のリスクが低いことも報告されています。

病気や死亡のリスクとの関係

門間ら(2022年)は、16本の追跡研究をまとめたメタ解析を英国スポーツ医学誌に発表しました。筋力トレーニングを行っている人は、行っていない人に比べて、全死亡・心血管疾患・がん全体・糖尿病・肺がんのリスクが10〜17%低いという結果でした。

興味深いのは、リスクの低さが週30〜60分あたりで頭打ちになっていたことです。長くやるほど良いという結果ではなく、短い時間でも続けることに意味がありそうだと分かります。ただし、これは観察研究なので「筋トレをすれば病気にならない」という意味ではありません。

50歳以上でも筋肉は増える

ピーターソンら(2011年)は、50歳以上の人を対象にした49本の研究(合計1,328人)をまとめ、筋力トレーニングによって除脂肪量(おもに筋肉)が平均1.1kg増えたと報告しています。量の多いプログラムほど増え方が大きく、年齢が高いほど増え方は小さい傾向でした。「早めに始めるほうが効果を得やすい可能性がある」という著者らの考察は、40代・50代にとって背中を押してくれる結果です。

自重だけでも筋肉の厚みが増えた研究

都竹ら(2018年)は、筋トレ経験のない70歳以上の88人(男性53人、女性35人)を対象に、自重だけで行うゆっくりとした筋力トレーニングを12週間行いました。種目はスクワット、机に手をつく腕立て伏せ、上体起こしの3つで、上げる・下ろすをそれぞれ4秒かけて行い、10回×2セットから4週ごとに2回ずつ増やしました。

その結果、何もしなかったグループと比べて、太ももの筋肉の厚み、膝を伸ばす力、股関節を曲げる力が増え、腹囲やお腹の脂肪の厚さは減っていました。

また山田ら(2019年)は、サルコペニアまたは筋力が落ちた高齢者112人を4つのグループに分け、12週間の自重トレーニングの効果を調べました。自重トレーニングにたんぱく質とビタミンDの補給を組み合わせたグループで、膝を伸ばす力などの改善が大きく、サルコペニアの人では手足の筋肉量も増えていました。運動と食事の両方が大切だと分かる結果です。

40代・50代の自重トレーニングは何回・何セットやればいい?

1種目8〜15回を、あと2〜3回はできそうなところで止め、2〜3セットが始めやすい目安です。

厚生労働省の情報シートは、自宅で行う場合は「できなくなるところまで行う」のが簡単な目安としています。ただし、久しぶりに運動する人がいきなり限界まで追い込むと、翌日以降の強い筋肉痛や関節の痛みにつながりやすくなります。最初の2〜4週間は余力を残して動きに慣れ、それから少しずつ限界に近づけていくのが安全です。

段階 回数 セット 休憩 頻度
1〜4週目(慣らし) 8〜10回(余力3回) 1〜2 60〜90秒 週2日
5〜8週目 10〜15回(余力2回) 2 60〜90秒 週2〜3日
9週目以降 12〜20回(余力0〜2回) 2〜3 60〜120秒 週2〜3日

回数・セット・頻度の考え方は自重トレーニングの回数・セット・頻度、セット間の休み方はセット間の休憩時間の目安も参考にしてください。

40代・50代におすすめの自重トレーニングメニューは?

脚・お尻、胸・腕、背中・体幹をまんべんなく使う6種目から始めるのがおすすめです。どれも床や壁、椅子があればできます。

種目 回数 セット 休憩 ねらい
自重スクワット 10〜15回 2〜3 60〜90秒 太もも・お尻
インクライン腕立て伏せ 8〜15回 2〜3 60〜90秒 胸・腕
ヒップリフト 12〜15回 2 60秒 お尻・太もも裏
バードドッグ 左右8回 2 45秒 背中・体幹
カーフレイズ 15〜20回 2 45秒 ふくらはぎ
ウォールシット(空気椅子) 20〜40秒 2 60秒 太もも前

全体で20〜30分ほどです。週2〜3日、間に1日以上の休みをはさんで行いましょう。休養日の考え方は筋トレの休養日の目安にまとめています。

自重スクワット

脚とお尻は、立つ・歩く・階段を上るのに直接かかわる筋肉です。椅子に座るように、お尻を後ろへ引きながら腰を下ろします。最初は椅子にお尻が触れるところまで下ろすと、深さが安定します。

自重スクワットの3Dアニメーション(3D種目図鑑で見る)

インクライン腕立て伏せ

机や壁に手をついて行う腕立て伏せです。床で行うより体重のかかり方が軽く、肩や手首への負担を調整しやすいのが特長です。手をつく位置が高いほどやさしくなります。床での腕立て伏せの基本は腕立て伏せの正しいやり方、段階の上げ方は腕立て伏せの種類を参考にしてください。

インクライン腕立て伏せの3Dアニメーション(3D種目図鑑で見る)

ヒップリフト

あお向けで膝を立て、お尻を持ち上げます。腰を反らせすぎず、お尻を締めて肩から膝までが一直線になるところで止めます。

ヒップリフトの3Dアニメーション(3D種目図鑑で見る)

バードドッグ

四つばいで、対角の手と脚をゆっくり伸ばします。腰をひねらず、背中を平らに保つことがポイントです。バランスの練習にもなります。

バードドッグの3Dアニメーション(3D種目図鑑で見る)

カーフレイズとウォールシット

カーフレイズは、壁や椅子に手を添えてかかとを上げ下げします。ウォールシットは壁に背中をつけて、膝の角度を浅めから始めます。膝に痛みがある日は無理をしないでください。

すべての種目は3D種目図鑑で、動きを好きな角度から確認できます。

体力に合わせて、どうやさしく・きつくすればいい?

動く深さ・手をつく高さ・スピードの3つで調整するのが簡単です。

  • やさしくする: スクワットは椅子に座ってから立つ動きにする。腕立て伏せは壁に手をつく。動く範囲を半分にする
  • きつくする: 都竹らの研究のように、上げる・下ろすをそれぞれ4秒かけてゆっくり動く。回数を2回ずつ増やす。片脚で行う(片脚ヒップリフトなど)
  • 慣れてきたら: スクワットをランジに、インクライン腕立て伏せを床での腕立て伏せに進める

同じ回数が楽にできるようになったら、負荷を少しだけ上げるのが筋肉を伸ばし続けるコツです。詳しくは自重トレーニングで負荷を上げる方法で解説しています。

40代・50代が気をつけることは?

息を止めない、痛みのある動きはしない、いきなり追い込まないの3つです。

厚生労働省の情報シートでは、血圧の急な上昇を抑えるために、息をこらえないよう注意するよう書かれています。力を入れるときに吐き、戻すときに吸うのが基本です。また、筋トレの時間が長くなりすぎると逆効果となる可能性もあるとして、やりすぎにも注意をうながしています。

  • ウォーミングアップに、足踏みや肩回しを3〜5分行う
  • 膝・腰・肩に痛みが出る動きは、範囲を小さくするか別の種目に替える
  • 翌日に強い疲れや痛みが残る場合は、回数かセットを減らす
  • 体重を減らしたい場合も、極端な食事制限は筋肉を落としやすいため避ける

運動中に痛みが出たら、すぐに中止してください。高血圧・心臓病・糖尿病などの持病がある人、妊娠中の人、けがや関節の痛みがある人は、始める前に医師に相談してください。胸の痛み・息苦しさ・めまい・強い胸のどきどきを感じたら、ただちに運動をやめ、続く場合は医療機関を受診してください。

続けるには、どう工夫すればいい?

曜日と時間を決めて、短く始めることです。

門間らのメタ解析が示すように、週30〜60分ほどの筋力トレーニングでも健康との関係がみられています。1回20分を週2〜3日なら、ちょうどその範囲に入ります。

  • 「火曜と金曜の夜、入浴前」のように予定に組み込む
  • 時間がない日は、スクワットと腕立て伏せの2種目だけでもよしとする
  • 回数を記録し、4週ごとに見返して変化を確かめる
  • 歩く時間を増やし、有酸素運動と組み合わせる

忙しい日用の短いメニューは自宅でできる10分の自重メニューにあります。効果を感じるまでの期間は筋トレの効果が出るまでの期間も参考にしてください。そのほかの記事は自重トレ大全のトップから探せます。

よくある質問

50代から筋トレを始めても筋肉は増えますか?

増える可能性は十分にあります。50歳以上を対象にした49本の研究をまとめたピーターソンら(2011年)の分析では、筋力トレーニングで除脂肪量が平均1.1kg増えていました。70歳以上でも自重トレーニングで太ももの筋肉の厚みが増えた研究があります。増え方には個人差があるため、数か月単位で続けて変化を見ていきましょう。

毎日やったほうがいいですか?

毎日でなくてかまいません。WHOは週2日以上、厚生労働省は週2〜3日の筋力トレーニングをすすめています。同じ部位を続けて鍛えるより、間に休みをはさむほうが疲れが抜けやすくなります。毎日体を動かしたい人は、自重トレーニングは毎日やってもいい?を参考に、部位を分けて行ってください。

ウォーキングだけでは足りませんか?

ウォーキングは大切ですが、それだけでは筋力トレーニングの推奨は満たせません。WHOも厚生労働省も、有酸素運動とは別に筋力トレーニングを行うことをすすめています。歩く習慣に、週2〜3日の自重トレーニングを加える形がおすすめです。

膝や腰に不安があります。何から始めればいいですか?

まずは医師に相談したうえで、動く範囲の小さい種目から始めてください。椅子からの立ち上がり、壁に手をつく腕立て伏せ、ヒップリフト、バードドッグは、負荷を調整しやすい種目です。痛みが出る動きは無理に続けず、範囲を小さくするか別の種目に替えましょう。

食事で気をつけることはありますか?

筋肉の材料になるたんぱく質を、毎食とることを意識してください。山田ら(2019年)の研究では、自重トレーニングにたんぱく質とビタミンDの補給を組み合わせたグループで、筋力の改善が大きくなっていました。持病で食事制限がある人は、医師や管理栄養士の指示に従ってください。

出典

この記事は一般的な情報です。痛みが出たら中止し、持病・けががある人や妊娠中の人は、医師に相談してから行ってください。