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暑い環境での筋トレは筋肥大に有利?研究で分かっていることを整理

公開 ・ KINNIKU TIMES 編集部 ・ 読了目安 6分
暑い中で汗をかきながらトレーニングをする様子のイメージ写真
SUMMARY|この記事の要約

暑い環境での筋力トレーニングが筋肥大に有利かどうかは、現時点の研究では結論が出ていない。人を対象にした研究ではホルモンの急性変化が、動物・細胞実験では筋肥大に関わる経路への影響が報告されているが、長期的な効果を人で直接確認した研究はまだない。

暑い環境での筋力トレーニングが筋肥大(筋肉を大きくする効果)にとって有利か不利かは、現時点の研究ではまだ結論が出ていない。人を対象にした実験では、高温下でのトレーニング直後に複数のホルモン・炎症マーカーが通常とは異なる動きを示すことが報告されている一方、動物や培養細胞を使った研究では、熱が筋肥大に関わる経路を刺激する可能性も指摘されている。両者は対象も測定方法も異なり、現時点で「暑い中で筋トレをすれば筋肉が増えやすい」と結論づけられる段階ではない。

汗をかきながらウエイトトレーニングをする様子のイメージ写真
写真はイメージです(Unsplash)

暑い環境での筋トレでは体に何が起きるのか

Eskandari氏らの研究チームが、学術誌「Frontiers in Physiology」11巻(2020年、論文番号597、DOI:10.3389/fphys.2020.00597)に発表した研究では、トレーニング未経験の健康な男性10人(26±3歳)を対象に、約35度の高温環境と22度の温熱中性環境で、同じ全身の筋力トレーニング(1RMの70%の負荷で8〜10回×3セット)を別日に行わせて比較した。両条件とも水分補給は体重1kgあたり4mlを15分おきに摂取させ、条件をそろえている。

その結果、35度の環境で運動した直後には、コルチゾール・熱ショックタンパク質(HSP70)・炎症性サイトカインのIL-6が上昇し、反対にテストステロンとIL-15が低下したことが確認された。これらの変化は運動1時間後には元の水準に戻っていたという。研究チームは、高温環境での筋トレは急性のホルモン・炎症反応の変化を伴い、筋肉の適応にとって不利に働く可能性があると結論づけている。

熱で筋肥大が促進される可能性はあるのか

一方、Pryor氏らの研究チームが学術誌「Journal of Strength and Conditioning Research」38巻7号(2024年7月、DOI:10.1519/JSC.0000000000004815)に発表した総説(レビュー論文)では、熱を加えた状態での筋力トレーニングが、タンパク質合成に関わるmTOR経路のリン酸化、カルシウム放出の増加、熱ショックタンパク質の発現増加など、複数の経路を刺激しうると紹介されている。

ただし、この総説が紹介する知見の多くは、培養した筋管細胞や単離した筋線維、ラットなどの動物モデルを使った研究によるものである。著者らは、人を対象にした研究(トランスレーショナル研究)はまだ数が少なく、機序(メカニズム)と実際の効果の両面で未解明な点が多いとも述べている。つまり「熱が筋肥大を促す経路を刺激しうる」という段階であり、人で長期的に筋肉量が増えることを直接確認した研究ではない。

結局、暑い環境で筋トレをした方がいいのか

現時点で確認できる範囲をまとめると、人を対象にした実験(Eskandariらの研究)では高温下での筋トレ直後にホルモン・炎症面で不利とも読める急性変化が確認されている一方、熱が筋肥大の経路を刺激する可能性を示す研究は主に動物・細胞レベルのものにとどまる。暑い環境で数週間〜数ヶ月のトレーニングを続けた場合に、実際の筋肉量や筋力がどう変わるかを直接比較した人対象の研究は、今回確認した範囲では見当たらなかった。

研究 対象 分かったこと
Eskandariら(2020、Frontiers in Physiology) 未訓練の健康な男性10人(人) 35度での筋トレ直後、コルチゾール・HSP70・IL-6が上昇、テストステロン・IL-15が低下(1時間後に正常化)
Pryorら(2024、JSCR・総説) 主に培養細胞・動物モデル 熱がmTOR経路等を刺激し筋肥大に関わる可能性を示唆。人での検証はまだ少ない

暑い環境でのトレーニングは熱中症など健康上のリスクも伴う。厚生労働省も夏季の運動時は無理をせず、こまめな水分・塩分補給と休憩を徹底するよう呼びかけている。筋肥大を目的に、通常より室温を上げてトレーニングすることを積極的に勧められる段階の科学的根拠は、現時点では確認できない。持病がある場合や体調に不安がある場合は、自己判断で高温環境での運動を行わず、医師に相談してほしい。

よくある質問

暑い中で筋トレをすると筋肉がつきやすくなるのか

現時点の研究では、はっきりした結論は出ていない。人での急性の実験ではむしろホルモン面で不利とも読める変化が確認されており、長期的な筋肥大効果を直接確認した人対象の研究はまだない。

暑い環境での筋トレにはどんなリスクがあるか

熱中症など健康上のリスクがある。水分・塩分補給と休憩を徹底し、体調が悪いと感じたら無理をせずトレーニングを中断することが大切である。

いつものジムの室温なら問題ないのか

今回取り上げた研究は約35度という高温環境を対象にしたものであり、一般的なジムの室温環境にそのまま当てはまるものではない。通常の室温での筋トレを変える必要はない。

KINNIKU TIMESの視点

「暑い中で筋トレをすると効果が高まる」という考え方を見聞きすることがあるが、現時点の科学的根拠はまだ限定的で、人を対象にした実験では短期的にはむしろ不利とも読める反応が確認されている。動物・細胞レベルの研究から将来的に新しい知見が出てくる可能性はあるが、今の段階で暑さそのものを積極的に利用する必要はない。真夏のトレーニングでは、効果を求めて室温を上げるより、熱中症対策と安全な環境づくりを優先したい。


出典:Eskandari A, et al. "Resistance Exercise in a Hot Environment Alters Serum Markers in Untrained Males." Frontiers in Physiology 11:597(2020年)/Pryor JL, et al. "Resistance Training in the Heat: Mechanisms of Hypertrophy and Performance Enhancement." Journal of Strength and Conditioning Research 38(7):1350-1357(2024年)/厚生労働省「熱中症予防のための情報・資料」

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