【研究5本】腕立て伏せの肩甲骨は寄せる?寄せない?前鋸筋の使い方
腕立て伏せで「肩甲骨は寄せるの?寄せないの?」と迷っている人に向けた記事です。
前鋸筋(ぜんきょきん)という、肩甲骨を支える筋肉の研究をもとに、動かし方を整理しました。(2026年10月確認)
トップ画像:PTPioneer(Wikimedia Commons)より。CC BY 2.0
上で肩甲骨を寄せ続けるより、押し上げたら前へ開く動きまで使うほうが、前鋸筋の研究と合います。
- 前鋸筋が最も働いたのは、肩甲骨を前へ開く「プッシュアッププラス」でした(20人の研究)。
- ただし健康な22人では、前鋸筋のピークは押し上げの途中でした。
- 手幅は肩幅、ひじは伸ばしきる形で、前鋸筋が高く僧帽筋上部が低い傾向でした。
- 「寄せる」動きそのものを比べた研究は、確認できた範囲では見つかりませんでした。
3D種目図鑑で腕立て伏せの動きを見る
FITPEAK内のページに移動します(2026年10月確認)
| 局面 | 肩甲骨 | 意識すること |
|---|---|---|
| 下ろす | 背骨側へ寄る | 体を一直線に保つ |
| 押し上げる | 肋骨の上を離れる | 手で床を押す |
| 最後のプラス | 前へ開く | 背中を天井へ持ち上げる |
腕立て伏せの肩甲骨は、寄せる?寄せない?
先に答えます。上で寄せ続ける必要は、確かめられていません。
押し上げたあとに、肩甲骨を前へ開く動きを足すほうが、研究の結果とつながります。
「寄せる」と「開く」の言葉をそろえる
ネットでは、言葉がまちまちです。この記事では、次のように呼びます。
- 寄せる:左右の肩甲骨を、背骨に近づける動き
- 開く:肩甲骨を背骨から離し、体の前へ出す動き(外転・プロトラクション)
下ろすときは、肩甲骨が自然に寄っていきます。押し上げるときは、離れていきます。
これは腕立て伏せの普通の動きです(編集部の整理)。「寄せたままにする」とは別の話です。
研究が測ったのは「開く」ほうだった
前鋸筋は、肩甲骨を肋骨の上に安定させる筋肉です。わきの下から背中にかけて付いています。
腕立て伏せの研究の多くは、この前鋸筋を測っています。測っているのは、最後に肩甲骨を開く「プッシュアッププラス」です。
肩甲骨を寄せ続ける形を、腕立て伏せの中で比べた研究は、今回確認した範囲では見つかりませんでした。「寄せたほうが胸に効く」とは、言えません。
腕立て伏せの3Dアニメーション(3D種目図鑑で見る)
研究では、前鋸筋はいつ最も働いた?
筋電図は、筋肉がどれだけ働いたかを、皮膚の上から測る方法です。5つの研究を並べます。
| 研究 | 対象 | 分かったこと |
|---|---|---|
| Deckerら 1999 | 健康な20人 | プラスで前鋸筋が最大級 |
| Ludewigら 2004 | 30人 | プラス局面で前鋸筋が最大 |
| San Juanら 2015 | 健康な22人 | ピークは押し上げ中 |
| Kangら 2019 | 19研究・356人 | 肩幅の手幅で前鋸筋が高い |
| Hoら 2019 | 健康な男性20人 | 形を変えても大差なし |
※いずれも筋活動を測った研究です。見た目の変化や、けがの予防効果を測ったものではありません。
Decker 1999:開く動きがいちばん高かった
Deckerらは、健康な20人で、8つの肩の運動を比べました。前鋸筋の活動は、腕立て伏せ系の運動で高くなりました。
著者らは、上方に回った肩甲骨を保ちながら、肩甲骨を開く動きが、前鋸筋の活動を最も高くしたと述べています。プッシュアッププラスが、その例です。
Ludewig 2004:僧帽筋上部との釣り合いも見た
Ludewigらは、30人(健康な人と軽い肩の不調がある人)で、腕立て伏せの形を比べました。
通常のプッシュアッププラスは、プラス局面で前鋸筋の活動が最も高くなりました(論文の表記で123%まで)。僧帽筋上部との比も、最も低くなりました。
壁で行う形などは、僧帽筋上部の比が高くなる局面がありました。肩の上のほうに力が入りやすい形です。
San Juan 2015:ピークは押し上げ中だった
San Juanらは、健康な22人で、手と足をつく形と、ひざをつく形を比べました。
前鋸筋の活動が最も高かったのは、押し上げの途中でした(論文は「ひじの角度55度」と記しています)。最後のプラス局面ではありませんでした。
著者らは、前鋸筋を狙うなら、通常の腕立て伏せでも足りると述べています。ひざつきは、全体に活動が小さくなりました。
Kang 2019:条件が重なると比が良くなる
Kangらは、プッシュアッププラスの筋電図研究19本(356人)をまとめました。
安定した床で、ひじを伸ばしきり、手を肩幅に置く形で、前鋸筋が高く、僧帽筋上部が低くなりました。不安定な面では、僧帽筋上部が平均2.74%増えました。
Ho 2019:形を変えても、前鋸筋は大きく増えない
Hoらは、健康な男性20人で、手の置き方や腕の回し方を変えました。
手のひらをつく形や、手を高めに置く形で、前鋸筋は増えました。ただし変化は小さく、普通の形を変えても前鋸筋は大きく増えない、と著者らはまとめています。
腕立て伏せで肩甲骨を使うやり方は?
研究と、編集部の整理をあわせた手順です。動きを3つに分けます。
手順1:手を肩幅に置き、体を一直線にする
手は肩の真下か、肩幅ほどにします。頭からかかとまでを、まっすぐにします。
手順2:下ろす。肩甲骨は自然に寄せる
胸を床に近づけます。肩甲骨は自然に寄っていきます。意識して強く寄せる必要はありません(編集部の整理)。
手順3:押し上げて、最後に背中を持ち上げる
手で床を押し、ひじを伸ばしきります。そのあと、背中の上を天井へ持ち上げるように、肩甲骨を前へ開きます。
これがプッシュアッププラスです。腰は反らさず、お腹は軽く締めたままにします。
回数とセットの目安
厚生労働省は、筋トレを週2〜3日行うことを勧めています。休む日も設けるよう呼びかけています。
| 段階 | 形 | 目安 |
|---|---|---|
| はじめて | ひざつき | 8回を2セット |
| 慣れた | 通常 | 8〜12回を2セット |
| 余裕がある | 通常+プラス | 8回を3セット |
※編集部の例です。研究が決めた回数ではありません。フォームが崩れる前にやめてください。
上の動画は、医療法人社団光仁会木島病院による「肩甲骨プッシュアップ」です。動きの見本として置きました。この記事の根拠は、下の出典の研究です。
よくある間違いは?
肩甲骨まわりの間違いは、見た目では気づきにくいものです。スマホで横から撮ると確かめられます。
| 間違い | 起きること | 直し方 |
|---|---|---|
| 上で寄せたまま | 開く動きが出ない | 最後に背中を持ち上げる |
| 腰が反る | 体の軸が崩れる | お腹を軽く締める |
| 肩がすくむ | 首まわりに力が入る | 肩を耳から遠ざける |
※「起きること」は姿勢から分かる編集部の整理です。各間違いを比べた研究ではありません。
肩がすくむ形は、僧帽筋上部が働きやすい形です。Kangらの結果でも、不安定な面で僧帽筋上部が増えていました。
まず安定した床で、ゆっくり行ってください。
きつい・痛いときは、どう調整する?
調整の考え方は、形を軽くするか、手を高くするかです。
ひざつき・台つきで始める
San Juanらの研究で、ひざつきは通常より前鋸筋の活動が小さくなりました。そのぶん、負荷は軽い形です。
台に手をつく形の負荷は、斜め腕立て伏せのやり方と台の高さで説明しています。
ただしLudewigらの研究では、壁の形は僧帽筋上部の比が高くなる局面がありました。壁や台は、負荷を下げる手段として使います。
手首が痛いとき
手首の痛みで続けにくいなら、握りこぶしや、台つきの形があります。腕立て伏せで手首が痛いときの対処を見てください。
迷ったら、通常の形を丁寧に
迷ったら、通常の腕立て伏せを、ゆっくり行います。San Juanらの結果では、通常の形で前鋸筋が十分に働いていたためです。
慣れてから、最後に開く動きを足します。
向かない人
- 肩に強い痛みがあり、医師に運動を止められている人
- 押し上げの最後で、肩に痛みやひっかかりが出る人
- 手首やひじの痛みで、手をつくだけでつらい人
該当する人は、まず医師や理学療法士に相談してください。
痛み、しびれ、めまいが出たら、すぐにやめてください。運動中は息をこらえないでください。持病のある人は、始める前に医師に相談してください。
種類ごとの負荷の違いは、腕立て伏せの種類7つの段階表にまとめています。
※この腕立て伏せの基本を整理するなら、腕立て伏せの正しいやり方と回数の目安もチェック。
よくある質問
肩甲骨を寄せると、胸に効きますか?
確かめられていません。腕立て伏せの中で、寄せ続ける形を比べた研究は、今回見つかりませんでした。胸を狙うなら、手幅や角度の違いで考えます。胸の種目は自重で胸を鍛える筋トレにあります。
プッシュアッププラスは、必ずやるべきですか?
必須ではありません。健康な22人の研究では、通常の腕立て伏せで前鋸筋が十分に働きました。慣れたあとに足す形です。
肩こりは良くなりますか?
この記事の研究は、筋活動を測ったものです。肩こりへの効果は測っていません。効くとは言えません。つらい症状が続くなら、医療機関に相談してください。
肩甲骨が浮く(翼状)のは、悪いことですか?
見た目だけでは判断できません。痛みや力の入りにくさがあるなら、医師や理学療法士に見てもらってください。
毎日やってもいいですか?
厚生労働省は、週2〜3日を勧めています。休み方は自重トレーニングは毎日やっていい?で説明しています。
まとめ
肩甲骨は、上で寄せ続けるより、押し上げたあとに前へ開くほうが、前鋸筋の研究と合います。
ただし、通常の腕立て伏せでも前鋸筋は十分に働きます。迷ったら、通常の形を丁寧に行い、慣れてからプラスを足してください。痛みが出たら、やめて休んでください。
3D種目図鑑で他の種目の動きも確かめる
FITPEAK内のページです(上のボタンと同じ行き先・2026年10月確認)
出典
2026年10月に開いて確認しました。論文は要旨(抄録)を読んで書いています。
- Decker MJ, et al. Serratus anterior muscle activity during selected rehabilitation exercises. Am J Sports Med. 1999
- Ludewig PM, et al. Relative balance of serratus anterior and upper trapezius muscle activity during push-up exercises. Am J Sports Med. 2004
- San Juan JG, et al. The effects of exercise type and elbow angle on vertical ground reaction force and muscle activity during a push-up plus exercise. BMC Musculoskelet Disord. 2015
- Kang FJ, et al. Serratus anterior and upper trapezius electromyographic analysis of the push-up plus exercise: a systematic review and meta-analysis. J Athl Train. 2019
- Ho AJ, et al. Examining upper extremity muscle demand during selected push-up variants. J Electromyogr Kinesiol. 2019
- 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」情報シート:筋力トレーニングについて
- 医療法人社団光仁会木島病院「肩甲骨プッシュアップ」(YouTube)
- PTPioneer「Girl doing push-ups from the side」Wikimedia Commons(CC BY 2.0)
- PTPioneer「Personal training push-ups instruction」Wikimedia Commons(CC BY 2.0)
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この記事は一般的な情報です。痛みが出たら中止し、持病・けががある人や妊娠中の人は、医師に相談してから行ってください。