筋肥大に必要な「週のセット数」とは イスラテル博士の4つの目安を研究と照らす
YouTuberで運動生理学者のマイク・イスラテル博士らが提唱する「ボリューム・ランドマーク」を解説する。67研究を分析した研究は、量が増えるほど筋肥大は大きくなるが上積みは次第に小さくなる傾向を示した。
「筋肉を増やすには、週に何セット行えばよいのか」。この問いに一つの枠組みを示してきたのが、運動生理学の博士号を持つYouTuber、マイク・イスラテル博士である。同氏らが提唱する「トレーニング量の目安(ボリューム・ランドマーク)」の考え方と、近年の研究が示す傾向を照らし合わせる。
大学教員からYouTuberへ
イスラテル博士は1984年、ロシア・モスクワ生まれ。7歳で米国に移り、ミシガン大学を卒業後、イーストテネシー州立大学で運動生理学の博士号を取得した。テンプル大学やリーマン・カレッジなどで教壇に立ったほか、米国の五輪トレーニング施設でスポーツ栄養のコンサルタントも務めた。
2012年に大学時代の友人ニック・ショー氏とともに「Renaissance Periodization(RP)」を創業。同社のYouTubeチャンネルの顔として、筋肥大や食事の理論を分かりやすく解説し、登録者は約390万人にのぼる。『Scientific Principles of Hypertrophy Training』など複数の共著書もある。
4つの「目安」とは
RPが公開している解説によると、ボリューム・ランドマークは次の4つで構成される。
- MV(維持量):今の筋肉量を保つのに必要な最小限の量。目安は1部位あたり週6セット程度
- MEV(最小有効量):筋肉が増え始める最小限の量
- MAV(最大適応量):MEVとMRVの間で、最も成果が得られやすい範囲
- MRV(最大回復可能量):回復が追いつく上限。これを超え続けると進歩が妨げられる
RPの例では、数週間のトレーニング期間の初週をMEV(邑12セット)から始め、回復具合や記録を見ながら毎週1〜3セットずつ増やし、5週目にMRV(邑20セット)へ到達。6週目は維持量の6セットまで落として回復にあてる(ディロード)という流れが示されている。ここで示された数値はあくまで一例である。
研究はどう示しているか
米フロリダ・アトランティック大学のペランド氏らは、67件の研究(参加者2,058人)をまとめて分析し、2024年に査読前論文(プレプリント)として公開した。その結果、週あたりのトレーニング量が増えるほど筋肉の大きさと筋力の伸びは大きくなる傾向があったが、量を増やすごとの上積みは次第に小さくなっていた。一方、同じ量を週に何回に分けるか(頻度)は、筋肥大にはほとんど影響しない可能性が示された。
「量を増やせば伸びるが、効果は頭打ちになっていく」という結果は、MEVからMRVまで段階的に量を増やし、回復の限界を超えないようにするというRPの考え方と大筋で整合するといえる。ただし、個人ごとの最適なセット数を研究から一律に決めることはできない点にも注意が必要である。
KINNIKU TIMESの視点
ボリューム・ランドマークの考え方を取り入れるなら、まず自分が今、各部位を週に何セット行っているかを数えることから始めたい。胸なら「ベンチプレス3セット+ダンベルフライ3セット=週6セット」といった具合である。
そのうえで伸び悩んでいる部位は少しずつセット数を増やし、疲れが抜けない、記録が落ちてきたと感じたら量を減らして回復を優先する。大切なのは「多ければ多いほど良い」と考えるのではなく、回復できる範囲で量を調整し続けることである。記録をつけることが、自分なりの「目安」を見つける近道になる。
出典:RP Strength「Training Volume Landmarks for Muscle Growth」/RP Strength「Dr. Mike Israetel, PhD」/SportRxiv「The Resistance Training Dose-Response: Meta-Regressions Exploring the Effects of Weekly Volume and Frequency on Muscle Hypertrophy and Strength Gain」(2024年10月4日・第2版)/Wikipedia「Mike Israetel」