THE MUSCLE NEWSPAPER
KINNIKU TIMES › 論文解説・新常識  › 記事
論文解説・新常識

ドロップセットやレストポーズで筋肉は余計に増える?23研究のメタ分析は「筋肥大は同等」

公開 ・ KINNIKU TIMES 編集部 ・ 読了目安 4分
ラックに並ぶダンベル
SUMMARY|この記事の要約

上級テクニックと通常のセット法を比べた23研究のメタ分析で、最大筋力は上級テクニックが上回った(g=0.351)一方、筋肥大では有意差がなかった(g=0.046)。筋肉を増やす鍵は、手法より総ボリュームと追い込みの程度だといえる。

ドロップセットやレストポーズといった「上級者向けテクニック」は、筋肉を大きくする近道なのか。23件の研究をまとめたメタ分析は、筋力の伸びでは通常のセット法をやや上回った一方、筋肥大では統計的に意味のある差がみられなかったと報告した。論文は2026年2月、学術誌『Journal of Functional Morphology and Kinesiology』に掲載された。

対象と方法

このレビューは、事前登録したうえで文献を検索し、18〜45歳のトレーニング経験者(レクリエーションレベル)を対象に、上級テクニックと通常の複数セット法を比べた比較試験を集めた。条件を満たした研究は23件で、うち20件をメタ分析に用いた。

比較されたのは、レストポーズ、ドロップセット、クラスターセット(セット内に短い休憩を挟む方法)、挙上速度を基準にするベロシティ・ベースド・トレーニング(VBT)、下ろす局面に高い負荷をかけるエキセントリック・オーバーロード、動作テンポを規定する方法などである。加圧トレーニングは仕組みが異なるとして除外した。

結果:筋力は上回ったが筋肥大は同等

評価項目 効果量(g) 判定
全項目の合計 0.159 小さいが有意に上回る
最大筋力 0.351 中程度で有意に上回る
筋肥大 0.046 有意差なし

手法別にみると、筋力の上乗せに主に貢献したのはVBTとエキセントリック・オーバーロードだった。筋肥大ではレストポーズがわずかに有利な傾向を示したが、手法間の差そのものは有意ではなかった。ドロップセット、テンポ規定、クラスター系の方法は、総ボリュームと追い込みの程度をそろえた場合、通常のセットと同程度の効果にとどまった。研究間のばらつきはほぼゼロと推定され、結果は比較的一貫していた。

上級テクニックと通常の複数セット法で筋肥大の効果を比較したフォレストプロット
図:Tsartsapakis I, Zafeiroudi A, Kouthouris C「Effects of Advanced Resistance Training Systems on Muscle Hypertrophy and Strength in Recreationally Trained Adults: A Systematic Review and Meta-Analysis」Journal of Functional Morphology and Kinesiology(2026)Figure 4(筋肥大のフォレストプロット)/出典:J Funct Morphol Kinesiol/ライセンス:CC BY 4.0(改変なし)

研究の限界

著者らは、手法ごとに使える研究数に偏りがあった点を認めている。また対象者の多くが若い男性で、女性や高齢者のデータは少ない。一部の研究には割り付け方法や結果の選択的報告に関する懸念もあった。個別の手法、とくにレストポーズの「わずかな優位」については、研究数が増えるまで慎重に解釈する必要がある。

KINNIKU TIMESの視点

今回の結果が示すのは、「特別なテクニックを使えば筋肉が余計に増える」わけではないということだ。筋肥大を左右するのは、あくまで総ボリュームと、限界にどれだけ近づけたかという基本の部分である。一方で、ドロップセットやクラスターセットは同等の効果を保ちながら、時間短縮や飽きの防止、関節への負担調整に役立つ場面がある。筋力を伸ばしたい人にはVBTやエキセントリック重視の方法を試す価値がありそうだ。テクニックは「近道」ではなく、目的や生活に合わせて選ぶ「道具」と考えるのが現実的だろう。


出典:Tsartsapakis I, Zafeiroudi A, Kouthouris C. Effects of Advanced Resistance Training Systems on Muscle Hypertrophy and Strength in Recreationally Trained Adults: A Systematic Review and Meta-Analysis. J Funct Morphol Kinesiol. 2026;11(1):80(2026年2月16日)PubMed(PMID: 41718208)