サルコペニアの栄養補助は効く?高齢者90人の24週試験、握力の伸びは運動のみと同程度
サルコペニアの高齢者に運動と栄養補助(1日270kcal・たんぱく質11g)を組み合わせても、24週後の握力の改善は対照比+2.23kgで、運動のみの+2.49kgと同程度だった。ベトナムの60〜70歳90人を対象とした試験で、栄養の独立した効果は判断できないと研究チームは結論づけている。
サルコペニアの高齢者に運動と栄養補助を組み合わせても、24週後の握力の改善は運動のみの場合と同程度だった。ベトナム・ホーチミン市医科薬科大学などの研究チームが、60〜70歳のサルコペニア90人を対象にしたクラスター無作為化比較試験の結果を、栄養学の国際誌「Nutrients」に2026年9月20日付で発表した。
どんな試験?対象者と方法
ホーチミン市カンザー(Can Gio)地区の3つの地域を無作為に「健康教育のみ(対照)」「運動」「運動+栄養支援」の3群に1地域ずつ割り付け、各地域から30人ずつを選んだ。サルコペニアの判定には、アジアの診断基準であるAWGS 2019を用いた。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 60〜70歳のサルコペニア高齢者90人(各群30人) |
| 研究デザイン | 3群のクラスター無作為化比較試験(1群1地域) |
| 運動 | 有酸素運動と筋トレを24週間。1〜12週は週1回の指導付きセッション、13週以降は指導を減らした自宅運動 |
| 栄養支援 | 1〜12週に毎週の個別栄養相談と、1日1本の栄養補助食品(270kcal・たんぱく質11g) |
| 評価時期 | 開始時・12週後・24週後 |
結果:握力・歩行速度・筋肉量はどう変わった?
24週後の変化量を対照群と比べた差(性別で調整、カッコ内は95%信頼区間)は次の通りである。
| 指標 | 運動のみ vs 対照 | 運動+栄養 vs 対照 |
|---|---|---|
| 握力 | +2.49kg(1.57〜3.42) | +2.23kg(1.30〜3.15) |
| 歩行速度 | +0.206m/秒(0.132〜0.279) | +0.053m/秒(−0.017〜0.123) |
| 骨格筋指数 | +0.12kg/m²(0.02〜0.22) | +0.01kg/m²(−0.09〜0.11) |
握力は2つの介入群ともに対照群を上回った。一方、歩行速度で明確な差が出たのは運動のみの群だけで、筋肉量の変化は小さかった。数字の上では、栄養支援を加えた群が運動のみの群を上回った指標はなかった。
栄養補助は意味がない?結果の読み方と限界
この結果から「栄養補助は不要」と結論づけることはできない。研究チーム自身が、1群に1地域しか割り付けていないため介入の効果と地域の違いが分けられず、「栄養の独立した効果は判断できない」と明記している。
- 地域ごとの生活環境や参加者の特徴の違いが、結果に影響した可能性がある。
- 栄養補助を行ったのは最初の12週だけで、主な評価は24週後である。
- 補助食品のたんぱく質は1日11gで、量としては控えめである。
- 試験登録は2026年8月の事後登録で、対象は90人と小規模である。
よくある質問
サルコペニアとは?
加齢などによって筋肉量と筋力、身体機能が低下した状態を指す。今回の試験ではアジアの基準(AWGS 2019)で判定した。
高齢者に栄養補助は不要なのか?
この試験だけでは判断できない。地域と介入の効果が区別できない設計のため、栄養の上乗せ効果は「確認できなかった」にとどまる。
運動だけで握力はどのくらい変わった?
24週後の握力の変化は、健康教育のみの群と比べて2.49kg大きかった。
KINNIKU TIMESの視点
今回の試験で一貫していたのは「運動をした群は握力が伸びた」という点である。補助食品だけを使う群は設けられていないが、少なくとも改善の中心にあったのは運動だったと読み取れる。栄養補助は運動の土台の上に乗るものと考えたい。高齢者の筋トレ効果はサルコペニアの高齢女性を対象としたメタ分析でも確認されている。たんぱく質は食事全体で必要量を満たすことが基本で、目安は体重1kgあたりのたんぱく質量の記事を参考にしてほしい。食事で足りない分をプロテインで補う場合は、プロテイン最安ナビで価格を比較できる。
出典:Doan TD, et al. Nutrients 18(18):3080(2026年9月20日)/ClinicalTrials.gov NCT07761091