筋トレ前の静的ストレッチ、60秒以上で筋力低下 跳躍には影響なし
筋トレ直前の静的ストレッチは、60秒以上行うと筋力が有意に低下する一方、ジャンプやスプリントなどの素早さ系の能力にはマイナスの影響がないことが、83研究・2,012人分を統合したメタ分析で示された。
研究は国際学術誌Journal of Sport and Health Scienceに2024年5月10日に掲載された。
トレーニング直前の静的ストレッチは、60秒以上行うと筋力が有意に低下する一方、ジャンプ力やスプリントなどの素早さ系パフォーマンスにはマイナスの影響が見られないことが、大規模なメタ分析で示された。ドイツの研究者コンスタンティン・ヴァルネキ氏らのチームが、国際学術誌Journal of Sport and Health Science(2024年5月10日、第13巻第6号、805〜819ページ)に発表した。
どんな研究か
研究チームは、静的ストレッチが直後の筋力・パワーに与える影響を調べた83件の研究(参加者計2,012人、400以上の効果量)を集め、一つの研究から複数のデータ点を取り込める「マルチレベルメタ分析」という手法で統合した。静的ストレッチとは、反動を使わずシューッと伸ばした姿勢を一定時間保つ一般的なストレッチを指す。
筋力はどれくらい低下するか
分析の主な数値は次のとおり。
| 条件 | 筋力への影響(効果量ES、p値) |
|---|---|
| 静的ストレッチ全体の平均 | ES = -0.21(p = 0.003)で小さいが有意な低下 |
| 1セットあたり60秒以上保持 | ES = -0.84(p = 0.004)で大きな低下 |
| 合計ストレッチ時間480秒超 | ES = -0.46(p = 0.03)で低下 |
| ジャンプ・スプリントなどの素早さ系 | 有意な低下なし。成人のジャンプ力ではむしろ小さな正の効果(ES = 0.15、p = 0.006) |
つまり、短時間(60秒未満)の静的ストレッチであれば筋力低下は小さく、ジャンプやスプリントのパフォーマンスには基本的に影響が見られなかったと論文は報告している。
なぜ60秒が境目になるのか
著者らは、静的ストレッチを長時間行うと筋肉・腕の神経系の活性が一時的に低下しやすいことが背景にあると考察している。一方で、ジャンプやスプリントのような素早さ系の動作は神経筋の動員パターンが異なるため、同じようには影響を受けないとみられる。この結果は、「トレーニング前の静的ストレッチは一切やらない方がいい」という一部で広まった考え方を修正するものだといえる。
実際にはどうすればよいか
論文自体は具体的なウォームアップ手順を推奨するものではなく、あくまで静的ストレッチの時間と筋力への影響の関係を定量的に示したものである。ベンチプレスやスクワットなど最大重量を扱う前に長時間(60秒以上)の静的ストレッチを行う場合は、その影響を考慮に入れる価値があると考えられる。
よくある質問
ストレッチはやらない方がいいのか
今回の分析は「静的ストレッチをやめるべき」とは結論づけていない。短時間であれば筋力への影響は小さく、柔軟性の確保などの利点とのバランスで判断すべきである。
ウォームアップは静的ストレッチだけでもよいか
今回の研究は静的ストレッチの単独効果を検証したもので、動的ストレッチや軽い有酸素運動などとの組み合わせを直接比較したものではない。
子どもや高齢者でも同じ結果か
今回のデータは成人を中心とした研究の集積であり、年代や競技レベルによって差がある可能性は論文でも明言されていない。
KINNIKU TIMESの視点
「トレーニング前のストレッチは筋力を下げるからやらない」という話は、静的ストレッチを長時間行った場合の話であり、短時間の可動域確認程度のストレッチまで一律に避ける必要はなさそうだ。ベンチプレスやスクワットの1RMを狙う日は、ウォームアップの静的ストレッチを短めにするか、動的ストレッチや軽い有酸素運動に切り替えるといった工夫を検討する価値がある。パーシャルレップなど可動域を工夫するトレーニング手法に興味がある人は、伸ばした位置でのパーシャルレップの記事もあわせて参考にしてほしい。
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