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運動で気分は上がる?中高年52人の12週試験、抑うつ症状は改善も記憶力は差なし

公開 ・ KINNIKU TIMES 編集部 ・ 読了目安 5分
ノートパソコンを見ながらヨガマットで運動する女性
SUMMARY|この記事の要約

週3回・1回30分のオンライン運動を12週間続けた45〜65歳は、運動しなかった人より抑うつ症状の得点が有意に下がった(52人のランダム化比較試験)。一方、主要評価項目の記憶課題には差がなく、英キングス・カレッジ・ロンドンが2026年9月に「npj Aging」で報告した。

週3回・1回30分のオンライン運動教室を12週間続けた中高年は、ふだんどおり過ごした人より抑うつ症状の得点が有意に下がったが、記憶力のテストには差が出なかった。英キングス・カレッジ・ロンドン(KCL)の研究チームが45〜65歳の52人を対象に行ったランダム化比較試験「NeuroFit」の結果で、2026年9月17日に学術誌「npj Aging」に掲載された。

自宅のヨガマットで体を動かす男性
写真はイメージです(Unsplash)

どんな人が、どんな運動をしたのか

対象は、BMIが20〜30で、ふだんの運動が週90分未満の健康な45〜65歳である。52人(平均55.1歳、女性37人・男性15人)を、運動群27人と対照群25人に無作為に分けた。

  • 頻度と期間:週3回・1回30分を12週間
  • 内容:有酸素運動、筋トレ、有酸素と静的な筋力運動を組み合わせたクラスを週1回ずつ
  • 方式:すべてタバタ式の高強度インターバルトレーニング(HIIT)で、オンラインのグループ教室として実施
  • 対照群:ふだんどおりの生活を続ける
  • 参加率:運動群の教室への参加率は平均86%

気分と記憶力、結果はどう違ったのか

評価項目 測定方法 運動群と対照群の比較
記憶(主要評価項目) よく似た画像を見分ける記憶課題 有意差なし
抑うつ症状 質問票(PHQ-9) 運動群で有意に改善(調整後p=0.011)
睡眠の質 質問票(PSQI) 有意差なし
心と体の生活の質 質問票(SF-12) 有意差なし
神経細胞のもとになる細胞の増殖 参加者の血清を培養細胞に加える実験 運動群の血清で増殖中の細胞の割合が減少(調整後p=0.02)

主要評価項目の記憶課題は、脳の海馬が関わるとされる「似たものを区別して覚える力」を測るものだが、12週間では差が出なかった。筆頭著者のサハンド・ファーマンド(Sahand Farmand)氏は、3カ月の運動でも抑うつ症状のない健康な人の気分を改善するには十分な可能性がある一方、海馬が関わる認知機能への効果が表れるには、より長い期間か、より強度の高い運動が必要かもしれないとの趣旨を述べている。

「新しい神経細胞」の実験で何が起きたのか

研究チームは、参加者の血液の液体成分(血清)を、実験室で培養したヒトの海馬の前駆細胞に加え、細胞の増え方を調べた。すると運動群の血清を加えた細胞では、増殖中の細胞の割合が減っていた。責任著者のサンドリン・チュレ(Sandrine Thuret)教授は、運動した人の血清が、新しい神経細胞になり得る幹細胞の数を減らしたことに当初は驚いたと話している。

ただし、これは試験管内の実験であり、実際の脳の中で同じことが起きているかは分からない。この結果だけで「運動が脳に悪い」と読み取るのは誤りである。

この研究の限界は?

  • 介入期間が3カ月と短く、記憶への効果を見るには不十分だった可能性がある
  • 参加者の71%が女性で、性別ごとの比較には人数が足りない
  • 比較的健康な人が対象で、もともと改善の余地が小さかった可能性がある
  • 参加者は自分がどちらの群かを知っている試験(オープンラベル)だった
  • 培養細胞の実験は、脳内の複雑な環境を再現できない

よくある質問

運動は何週間で気分に変化が出る?

この試験では、週3回・1回30分の運動を12週間続けたグループで、抑うつ症状の得点が対照群より下がった。健康な中高年52人での結果であり、病気の治療効果を示したものではない。

運動で記憶力は良くなる?

12週間の今回の試験では、記憶課題の成績に対照群との差はなかった。研究チームは、より長い期間や高い強度が必要な可能性を挙げている。

自宅のオンライン運動でも意味はある?

この試験の運動は30分のオンライン教室で、平均参加率は86%だった。自宅でも続けやすい形式で、気分の指標に差が出た点は参考になる。

KINNIKU TIMESの視点

筋トレを「見た目」や「数字」のためだけでなく、気分を整える習慣として続けたい人にとって、週3回・30分という現実的な量で差が出た点は心強い。一方で、記憶力のような脳の機能は短期間では変わらない可能性がある。高齢者309人が1年間筋トレを続けた試験で「脳年齢」の改善が報告された例(関連記事)もあり、脳への効果は長い目で見るのがよい。筋トレと有酸素の組み合わせ方は米国スポーツ医学会(ACSM)の新ガイドラインも参考になる。なお、気分の落ち込みが続く場合は、運動だけで対処せず医療機関に相談してほしい。


出典:Farmand S, et al. Effects of a three-month exercise programme on cognition, mood and neurogenesis: the NeuroFit randomised controlled trial. npj Aging 12:124(2026年9月17日)/King's College London(2026年9月17日)