挙上スピードは体感で分かる?経験者15人の8週試験、4週までは誤差0.09m/s以内
測定機器なしでもバーの速さは体感でおおむね当てられ、筋トレ経験者15人の試験では誤差の中央値が0.04〜0.09m/sにとどまった。ただし慣れの効果が保たれたのは4週間までで、8週後は軽い重量で「速度がどれだけ落ちたか」の感覚がずれやすくなった。
スクワットの挙上スピードは、測定機器がなくても体感でおおむね当てられる――。イタリアの研究チームが筋トレ経験者15人を8週間追った試験で、感覚で答えた速度と実測の差(中央値)は1回目0.04m/s、4週後0.07m/s、8週後0.09m/sだった。論文は2026年8月31日、学術誌「Journal of Functional Morphology and Kinesiology」に掲載された。研究チームは、機器なしで感覚を頼りにする方法は「最長4週間」なら実用的だと結論づけている。
そもそも「速度で管理する筋トレ」とは?
VBT(Velocity Based Training)は、バーの挙上速度を測って重量やセットの終わりを決める方法である。代表的な指標が「速度低下率」で、1回目の速度から一定の割合(例:20%)遅くなったらセットを終える。ただし速度の測定には専用機器が必要になる。そこで研究チームは、機器なしで「今の速度」と「速度がどれだけ落ちたか」を体感で当てられるか、その精度が時間がたっても保たれるかを調べた。VBTの効果そのものは27試験のネットワークメタ分析の記事で紹介している。
どんな人を対象に、どう調べた?
対象は筋トレ歴2年以上の18〜35歳。概要は次のとおりである。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 参加者 | 15人(男性10人・女性5人)、平均23.2歳 |
| 筋トレ歴 | 平均4.6年(標準偏差2.3年) |
| スクワットの強さ | 最大挙上重量は体重の平均1.6倍 |
| 慣らし | 速度計(Vitruve)の表示を見ながら3回練習 |
| 測定 | 慣らしの48〜72時間後(1回目)、4週後、8週後の計3回 |
| 軽い重量 | 最大挙上重量の約55・60・65%、速度低下率10・20・30%でセット終了 |
| 重い重量 | 最大挙上重量の約75・85%、速度低下率10・20%でセット終了 |
「速度の感覚」は参加者が答えた速度と実測値の差で、「速度低下の感覚」は参加者が「ここで目標の低下率に達した」と答えた回数と、実際に達した回数の差で評価した。
結果:体感の誤差はどれくらい?
| 測定時期 | 速度の誤差(中央値) | 速度低下の感覚の信頼性(ICC) |
|---|---|---|
| 1回目 | 0.04m/s | 0.9超(非常に高い) |
| 4週後 | 0.07m/s | 0.9超(非常に高い) |
| 8週後 | 0.09m/s | 0.864(高い) |
速度の誤差は1回目から8週後にかけて統計的に有意に大きくなったが、その変化の大きさ(効果量)は小さかった。軽い重量と重い重量で誤差に差はなかった。研究チームは、これまでに提案されている許容範囲0.09m/s(最大挙上重量のおよそ10%分の重さの違いに相当)を4週間は下回っていたとしている。
速度低下の感覚は、4週後まではすべての重量・低下率で1回目と差がなかった。8週後は軽い重量でのみ精度が落ち、全体として重い重量のほうが正確だった。また、目標の低下率が小さい条件では、実際より多くの回数を答える「過大評価」が目立った。
この研究の限界は?
参加者は15人と少なく、筋トレ経験の豊富な若い人に限られる。軽い重量と重い重量で測定回数に偏りがあり、最大挙上重量は実測していないため、重量の割合は推定値である。男女差も検討していない。ランダム化比較試験ではなく、同じ人を時間を追って測った研究である点にも注意が要る。
よくある質問
速度計がなくてもVBTはできる?
筋トレ経験者なら、速度計で慣らした後の4週間ほどは体感でおおむね代用できるという結果である。それ以降は再び機器で感覚を合わせ直すのが望ましい。
体感が当てにならないのはどんなとき?
軽い重量(最大挙上重量の約60%)で速度低下率10%のような小さな目標を狙うときである。研究チームは、この条件では注意が必要だとしている。
KINNIKU TIMESの視点
速度計を毎回使えない人でも、「1回目より明らかに遅くなったらやめる」という感覚は、重い重量ほど信頼できるといえる。実践するなら、月に1回程度は速度計やスマートフォンのアプリで実測と体感を照らし合わせ、ずれを修正するとよい。軽い重量で回数を重ねる日は、感覚だけに頼らず「限界の何回手前でやめるか」を決めておくのも一案である。限界までの追い込み方については2回残しでも筋肥大は同等だった試験の記事も参考になる。
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