THE MUSCLE NEWSPAPER
KINNIKU TIMES › 論文解説・新常識  › 記事
論文解説・新常識

GLP-1薬で筋肉は減る?7試験・821人のメタ分析、除脂肪量は平均1.74kg減

公開 ・ KINNIKU TIMES 編集部 ・ 読了目安 4分
木のテーブルに置かれた体重計
SUMMARY|この記事の要約

GLP-1薬は偽薬と比べて除脂肪量を平均1.74kg減らす一方、体重に占める除脂肪量の割合は1.81ポイント高めることが、7試験・821人のメタ分析で示された。筋力などの機能は測られておらず、著者らは栄養と運動の併用を勧めている。

肥満症の治療に使われるGLP-1受容体作動薬(GLP-1薬)は、偽薬と比べて除脂肪量を平均1.74kg減らす一方、体重に占める除脂肪量の割合は1.81ポイント高めるとするメタ分析が示された。研究チーム(筆頭著者:リヒア・パトリシア・ラベルデ〈Ligia Patricia Laverde〉氏)が、7件のランダム化比較試験(RCT)・821人のデータを統合し、2026年6月19日に国際学術誌『International Journal of Obesity』で発表した。

体重計に乗る人の足元
写真はイメージです(Unsplash)

GLP-1薬で筋肉はどれくらい減る?

GLP-1薬は食欲を抑えて大きな減量をもたらす一方、「脂肪と一緒に筋肉も落ちるのではないか」という懸念が指摘されてきた。今回の研究は、肥満症治療の用量でGLP-1薬を使ったRCTのうち、DXA(二重エネルギーX線吸収法)などで体組成を測った試験を集めて比較したものである。

項目 内容
対象 肥満のある成人821人(7件のRCT)
比較 肥満症治療用量のGLP-1薬 対 偽薬(プラセボ)
薬剤 リラグルチド、セマグルチド、チルゼパチド
文献検索 PubMed、Embase、LILACS(2025年3月)

除脂肪量は減るが「体重に占める割合」は上がった

結果は「量」と「割合」で見え方が異なった。

  • 除脂肪量の絶対量:偽薬より平均1.74kg減少(95%信頼区間 −3.04〜−0.45kg)
  • 体重に占める除脂肪量の割合:偽薬より1.81ポイント上昇(95%信頼区間 1.1〜2.52)
  • セマグルチドを使った試験では、除脂肪量の減少が平均5.44kgと最も大きかった

つまり筋肉を含む除脂肪量は確かに減るが、それ以上に脂肪が減るため、体の「中身の比率」は改善したことになる。著者らは「除脂肪量の減少を、これらの薬を使ううえでの制約と考えるべきではない」と結論づけつつ、栄養と運動を組み合わせて筋肉量を守ることを勧めている。

研究の限界:筋力は測られていない

注意すべき点も多い。除脂肪量の絶対量の結果は試験間のばらつき(異質性)が非常に大きく(I²=98%)、含まれた試験の多くはリラグルチドだった。また除脂肪量には筋肉だけでなく水分や臓器なども含まれ、筋力や歩行能力といった「働き」を測った試験は含まれていない。筋肉が減ったことが体の機能にどう影響するかは、この研究からは分からない。

活動量の面でも気になるデータがある。米国の病院の研究チームが2026年6月の米国内分泌学会年次集会(ENDO 2026)で発表した解析では、GLP-1薬を始めた肥満のある成人753人のウェアラブル端末のデータで、1日の歩数が5,047歩から4,487歩へ11.1%、中高強度の身体活動が1日28分から22分へ21.4%減っていた。学会発表の段階で、観察研究のため因果関係は示されていない。

よくある質問

GLP-1薬を使うと筋肉は必ず減る?

今回のメタ分析では、偽薬と比べて除脂肪量が平均1.74kg減った。ただし脂肪の減り方がそれを上回り、体重に占める除脂肪量の割合は上がっていた。

筋肉の減少を防ぐ方法は?

著者らは栄養と運動の併用を勧めている。今回の研究自体は筋トレやたんぱく質の効果を検証したものではない。

KINNIKU TIMESの視点

GLP-1薬は医師の管理のもとで使う処方薬であり、使うかどうかは主治医と相談して決めるものである。そのうえで、大きな減量では脂肪と一緒に除脂肪量も落ちやすいという点は、薬を使わない減量にも共通する。減量中こそ筋トレを続け、たんぱく質を十分にとることが基本になる。目安は体重1kgあたり1.6g前後、筋トレの頻度や量は米国スポーツ医学会の新ガイドラインが参考になる。食事だけで足りない場合はプロテインの価格比較も活用したい。


出典:International Journal of Obesity(2026年6月19日)PubMedEurekAlert!・ENDO 2026発表(2026年6月13日)