有酸素運動を筋トレ前に行うと筋力低下、197人メタ分析で判明
筋トレの前に有酸素運動を行うと、筋力は中程度(効果量0.79)低下する一方、ジャンプ力などパワー系の能力への影響はほぼ見られないことが、トレーニング経験のある男性197人分のデータを統合した海外のメタ分析で示された。
影響は有酸素運動が30分を超える場合や自転車運動の場合に大きくなる傾向があり、低強度・短時間ならほぼ影響がないという。
筋力トレーニングの前に有酸素運動を行うと、挙上重量などの「筋力」が一時的に低下する可能性があることが、トレーニング経験のある男性197人分のデータを統合した海外のメタ分析で示された。Adrian Markov氏らの研究チームによるシステマティックレビュー・メタ分析が、2021年12月8日(現地時間)に学術誌「Sports Medicine」のオンライン版に掲載された。
どんな研究だったのか
「有酸素運動と筋トレを同じ日に行う場合、どちらを先にすべきか」は多くのジム利用者が悩むテーマである。今回の論文は、有酸素運動(ランニングやサイクリングなど)を先に行った直後の筋力・ジャンプ力(パワー)の変化を検証した既存研究15件を統合し、トレーニング経験のある男性197人分(18〜42歳)のデータをメタ分析したものである。対象は筋トレ経験のある男性に限られ、女性や初心者の研究ではない点に注意したい。
筋力は中程度低下、パワーには影響なし
全体の統合結果では、有酸素運動を先に行うと筋力の指標が統計的に有意に、中程度低下した(効果量0.79、p=0.003)。一方でジャンプ力などパワー系の指標には有意な変化が確認されなかった(効果量0.04、p=0.846)。
「時間」「強度」「種類」で差が出る
影響の大きさは有酸素運動の内容によって変わる。持続時間30分以下では効果量0.59(p=0.013)だったのに対し、30分超では効果量1.02(p=0.049)まで拡大した。強度別では低強度で有意差が確認されなかった一方、中〜高強度では効果量0.65(p=0.020)の低下が見られた。種類別ではランニングが効果量0.28(p=0.035、小さな低下)、サイクリングは効果量0.79(p=0.002、中程度の低下)と、サイクリングの方がはっきりした影響が出た。
| 条件 | 効果量(SMD) | 有意差 |
|---|---|---|
| 持続時間30分以下/超 | 0.59 / 1.02 | あり |
| 低強度 / 中〜高強度 | なし / 0.65 | 中〜高強度のみあり |
| ランニング / サイクリング | 0.28 / 0.79 | あり |
長期的な「干渉効果」とは別のテーマ
有酸素運動と筋トレを併用すると筋肥大・筋力の伸びが数週間〜数カ月単位で鈍る「干渉効果」という長期的なテーマが別に存在する。これはKINNIKU TIMESの別記事「有酸素運動と筋トレの「干渉効果」とは」で解説している。今回の研究はあくまで、同じセッション内で有酸素運動の直後に測定した「急性(一時的)」な変化を扱ったものである。
読者が実践するならどう考えるべきか
その日の挙上重量を重視したい場合は、長時間・中〜高強度の有酸素運動、とくにサイクリングを筋トレ直前に行うのは避け、筋トレを先に済ませるか、有酸素運動を短時間・低強度にとどめるといった工夫が考えられる。ジャンプ系種目中心の日なら影響は小さいとみられる。対象はトレーニング経験のある男性に限られ、初心者や女性にそのまま当てはまるとは限らない。持病がある場合は医師や専門家に相談した上で取り入れたい。
よくある質問
有酸素運動は筋トレの前にやってはいけないのか
「やってはいけない」とまでは言えない。低強度・短時間(30分以下)では統計的に有意な筋力低下は確認されておらず、挙上重量を最優先したい日に負荷の高い有酸素運動を避ける、という程度の話である。
ランニングとエアロバイク、どちらが筋力に影響しにくいか
今回のメタ分析ではランニング(効果量0.28)の方がサイクリング(効果量0.79)より影響が小さかった。ただし研究条件や個人差もあり、あくまで傾向として捉えたい。
筋肥大への影響も同じように考えてよいか
今回の分析は筋力・パワーの急性の変化を扱ったもので、数週間〜数カ月単位の筋肥大への長期的な影響を示したものではない。長期的な併用の影響は前述の「干渉効果」で別に検証されているテーマである。
KINNIKU TIMESの視点
有酸素運動と筋トレの「順番」は感覚的に語られがちなテーマだが、今回のメタ分析で「時間」「強度」「種類」によって急性の筋力低下の大きさが変わることが数値で示された。対象は男性197人分に限られ、効果量にも幅があるため、その日の目的(筋力重視か持久力重視か)に応じて種目の順番を工夫する、程度の参考情報として捉えるのが妥当である。
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