可動域とパーシャルレップ、筋肥大に効くのはどちら?11研究のレビューで判明
筋トレの可動域は、フルレンジが常に正解とは限らないことが、11件の研究を分析したシステマティックレビューで示された。
部位によっては、筋肉が伸びた状態で行うパーシャルレップが同等以上の筋肥大効果を示すという。
筋トレの可動域は、関節を深く動かす「フルレンジ」が常に正解とは限らず、種目や部位によっては筋肉が伸びた状態で止める「パーシャルレップ(部分的な可動域)」も同等かそれ以上の筋肥大効果を持つことが、2023年に学術誌「Journal of Strength and Conditioning Research」に掲載されたシステマティックレビューで示された。ブラジル・ロンドリーナ州立大学のウィタロ・カッシアーノ氏らの研究チームが、11件の先行研究を対象に分析した。
「フルレンジ」と「パーシャルレップ」の違いとは
フルレンジ(フルROM、full range of motion)とは、関節が動かせる範囲いっぱいまで動かすトレーニング方法である。一方のパーシャルレップは、可動域の一部分だけを使って動作を行う方法で、さらに「筋肉が伸びた状態(長い筋長)」で行うものと、「筋肉が縮んだ状態(短い筋長)」で行うものに分けられる。スクワットで言えば深くしゃがむのがフルレンジ、途中までしかしゃがまないのがパーシャルレップにあたる。これまでは「フルレンジが正義」という考え方が一般的だったが、近年は筋肉の長さごとの負荷のかかり方に注目した研究が増えている。
11件のレビューで分かった、部位ごとに異なる結果
カッシアーノ氏らは、フルレンジと各種パーシャルレップを比較した研究を横断的に分析した。その結果、大腿四頭筋の一部(大腿直筋の遠位部)や外側広筋、上腕二頭筋の遠位部、大殿筋、内転筋では、フルレンジの方が可動域の後半部分だけを使うパーシャルレップよりも大きな筋肥大を示した(効果量にして0.20〜0.90程度)。一方で、筋肉が伸びた状態(初期可動域)で行うパーシャルレップは、大腿直筋の近位部でフルレンジを上回る肥大を示し、上腕三頭筋では中間可動域のパーシャルレップがフルレンジより大きな効果量(1.21)を示した研究もあったという。
| 部位 | 優位だった可動域 | 備考 |
|---|---|---|
| 大腿直筋(遠位部)・外側広筋 | フルレンジ | 可動域後半のみのパーシャルより肥大が大きい |
| 大殿筋・内転筋 | フルレンジ | 同上 |
| 大腿直筋(近位部) | 初期可動域のパーシャル | 筋肉が伸びた状態での実施 |
| 上腕三頭筋 | 中間可動域のパーシャル(一部研究) | 効果量1.21とフルレンジを上回る例も |
なぜ筋肉の「長さ」が結果を左右するのか
レビューでは、筋肉が伸びた状態(長い筋長)で負荷がかかる局面ほど筋肥大が起きやすい傾向があると考察されている。関節角度によって筋肉にかかる張力の大きさが変わるため、同じ「パーシャルレップ」でも、可動域のどの部分を使うかによって効果が大きく異なるとみられる。ただしこれは観察された傾向であり、全ての種目・全ての人に当てはまる因果関係が証明されたわけではない点には注意が必要である。
フリーウェイトでの実践にどう生かすか
この結果は「パーシャルレップで十分」という単純な話ではない。レビューの著者らは、多くの部位では引き続きフルレンジが有利であることを踏まえつつ、関節の可動域に制約がある場合や特定の部位を狙いたい場合には、筋肉が伸びた状態でのパーシャルレップを補助的に組み合わせる価値があると結論づけている。フォーム習得や関節の健康を優先するなら、基本は無理のない範囲でのフルレンジを中心に据え、症状や痛みがある場合は自己判断で可動域を変えず、医師や理学療法士に相談することが望ましい。
よくある質問
スクワットは深くしゃがんだほうがいいのか
多くの研究では深くしゃがむフルレンジのスクワットの方が大腿四頭筋や殿筋の肥大に有利な傾向が示されている。ただし膝や股関節に痛み・既往がある場合は、無理に深くしゃがまず医療者に相談したうえで可動域を調整するべきである。
パーシャルレップは初心者にも勧められるか
今回のレビューは可動域と筋肥大量の関係を比較したものであり、動作習得や関節の安全性を直接検証したものではない。初心者はまずフルレンジで正しいフォームを身につけることを優先し、パーシャルレップは種目特性を理解した上で補助的に取り入れるのが無難である。
KINNIKU TIMESの視点
「可動域は常にフルレンジが正解」と考えていたトレーニーにとっては意外な結果かもしれないが、今回のレビューが示すのは「部位によって最適な可動域が異なりうる」という視点である。普段のメニューをすべて変える必要はなく、まずは狙いたい部位でフルレンジとパーシャルを使い分けている種目(レッグプレスやケーブル種目など)を意識して観察し、伸張位でしっかり負荷を感じられているかを確認するところから始めるとよい。筋肥大の3つの仕組みや挙上テンポと筋肥大の関係も合わせて参考にしてほしい。
出典:Kassiano W, et al. "Which ROMs Lead to Rome? A Systematic Review of the Effects of Range of Motion on Muscle Hypertrophy." Journal of Strength and Conditioning Research, 2023;37(5):1135-1144(PubMed)/Nutrition-Evidence.com 解説/Biolayne.com 解説/Fisiologiadelejercicio.com 解説
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