オーバートレーニング症候群とは サインと予防をACSM合意文書で解説
ECSS・ACSMの2013年合意文書は、トレーニングの不適応を機能的オーバーリーチング・非機能的オーバーリーチング・オーバートレーニング症候群(OTS)の3段階に分け、回復に数ヶ月から数年を要するOTSのサインと予防策を示している。
トレーニングのやりすぎで起こる「オーバートレーニング症候群(OTS)」は、回復に数ヶ月から数年かかることもある深刻な不適応状態であり、通常の疲労とは見分け方が異なるとされている。欧州スポーツ科学会(ECSS)と米国スポーツ医学会(ACSM)が2013年に発表した合意文書では、オーバートレーニングを段階ごとに整理し、サインの見分け方と予防策を示している。
疲労・オーバーリーチング・OTSはどう違うのか
ECSS/ACSMの合意文書は、負荷の蓄積による不適応を3段階に分けて説明している。「機能的オーバーリーチング(FOR)」は数日から数週間でパフォーマンスが落ちるが、適切な休息を取れば回復し、トレーニングの正常な一過程と位置づけられる。「非機能的オーバーリーチング(NFOR)」は回復に数週間から数ヶ月を要し、心理的な苦痛やホルモン分泌の異常を伴う段階とされる。さらに進行した「オーバートレーニング症候群(OTS)」は長期にわたる不適応状態で、競技への復帰に数ヶ月から数年を要する可能性があるという。
どのようなサインが出るのか
同文書は、通常のペースでトレーニングを始められても最後までやり遂げられないといった「スポーツ特異的なパフォーマンスの低下」が診断の鍵になるとしている。気分の状態を測る指標(POMS)では、OTSに至った選手は抑うつ感が最も大きく増加し、臨床的な抑うつ状態を示す例も報告されているという。そのほか睡眠障害、慢性的な筋肉痛、食欲低下、同じ運動でも「きつい」と感じる努力感の増加などが挙げられている。ホルモンの基礎値を一度測るだけでは診断の役に立たないとも注記されている。
どう予防すればよいのか
- トレーニング日誌をつけ、量・強度・日によるばらつき(単調性)を記録する
- 週に1日以上は完全休息日を設ける
- 集中的なトレーニング期には体重1kgあたり8.5〜9.4gの炭水化物摂取でエネルギー不足を避ける
- 気分の変化を定期的にセルフチェックし、落ち込みが続く場合は負荷を調整する
同文書は、医師・栄養士・心理士など複数の専門職が連携して選手の状態を定期的に確認する体制が望ましいとも述べている。
よくある質問
筋肉痛が続いているだけでもOTSなのか
いいえ。筋肉痛や一時的な疲労の多くは機能的オーバーリーチング(FOR)の範囲で、休息により回復する。パフォーマンスの低下が長期間続き、気分の落ち込みなど複数のサインが重なる場合に、より進んだ段階を疑う必要がある。
サインが出たらどうすればいいのか
自己判断でトレーニングを続けるのではなく、負荷を落として休息を増やし、症状が続く場合や強い倦怠感・抑うつ感がある場合は医師に相談することが望ましい。
KINNIKU TIMESの視点
「限界まで追い込む」ことの効果が議論される一方(関連記事参照)、追い込みを毎回・毎週続けることと回復のバランスを欠くと、今回紹介したような不適応につながりうる。停滞期が長引く場合は、オーバートレーニングのサインが出ていないかを一度振り返り、必要であればデロード(回復週)を取り入れることも選択肢になる。倦怠感や気分の落ち込みが続く場合は、トレーニングを見直すだけでなく医師に相談してほしい。
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