HMBは筋損傷を軽減?14試験681人のメタ分析、CKは有意に減少
HMB(β-ヒドロキシ-β-メチル酪酸)の摂取により、運動後の筋損傷マーカーであるクレアチンキナーゼ(CK)の血中濃度が、プラセボと比べて有意に低下することが、14件・681人分の臨床試験を統合したメタ分析で示された。
一方、もう一つの筋損傷マーカーであるLDH(乳酸脱水素酵素)には統計的に有意な差はみられず、研究チームはエビデンスの確実性は両指標とも「非常に低い」としている。
HMB(β-ヒドロキシ-β-メチル酪酸)のサプリメント摂取が、運動後に血中で上昇する筋損傷マーカー「クレアチンキナーゼ(CK)」の値を、プラセボと比べて有意に下げることが、14件の臨床試験・合計681人分のデータを統合したメタ分析で示された。論文はイランのタブリーズ医科大学などの研究者らによるもので、専門誌「Sport Sciences for Health」に2026年6月8日にオンライン掲載され、2026年9月号に収録された。
HMBとはどんな成分か
HMBは、必須アミノ酸のロイシンが体内で代謝される過程で生成される物質で、筋肉の分解を抑える働きが期待されるとして、トレーニング用サプリメントとして市販されている。国際スポーツ栄養学会(ISSN)も見解を公表しており、一定の条件下での有用性を示す研究がある一方で、効果の大きさには研究間でばらつきがあるとされてきた成分である。
今回の分析は何を調べたのか
研究チームは、HMB摂取とプラセボを比較したランダム化比較試験を集め、運動後の血中CK値とLDH(乳酸脱水素酵素)値への影響を統合して解析した。対象となったのは成人681人分のデータで、条件が近い14試験が採用された。
結果はどうだったか
| 指標 | HMB群とプラセボ群の差 | 統計的有意差 |
|---|---|---|
| CK(クレアチンキナーゼ) | 平均37.94 U/L低下(95%信頼区間 10.26〜65.63 U/Lの低下) | あり |
| LDH(乳酸脱水素酵素) | 平均16.38 U/L低下の傾向(95%信頼区間が0をまたぐ) | なし |
CKは骨格筋の損傷時に血中へ漏れ出す酵素で、値が高いほど筋損傷が大きいとされる指標の一つである。今回の分析では、HMB摂取群でCKの上昇がプラセボ群より抑えられる傾向が統計的に確認された。一方、同じく筋損傷の目安とされるLDHについては、数値としては低下傾向があったものの、統計的な有意差には至らなかった。
この結果はどこまで信頼できるのか
研究チームは、CK・LDHいずれの結果についても「エビデンスの確実性は非常に低い」と評価しており、試験間のばらつき(統計学的異質性)も大きいとしている。今回の分析はあくまで運動後の血液マーカーへの影響を見たもので、筋肉痛の体感や運動パフォーマンスそのものへの効果を示したものではない点に注意したい。なお、HMBについては別のメタ分析を統合した2025年2月のアンブレラレビュー(専門誌J Cachexia Sarcopenia Muscle掲載)もあり、そちらでは筋肉量・筋力・除脂肪量の増加について有意な効果があり、特に70歳以上の高齢者で効果量が大きい傾向が報告されている。今回の論文とは見ている指標が異なるため、単純に比較できない点は留意が必要である。
薬機法・安全性について
HMBはあくまで栄養補助食品であり、病気の治療や診断を目的とするものではない。今回の結果も「筋損傷マーカーの一部で有意差がみられた」という段階であり、効果を保証するものではない。持病がある人や医薬品を服用中の人は、サプリメントの利用前に医師や薬剤師に相談することが望ましい。
よくある質問
HMBを飲めば筋肉痛が軽くなりますか?
今回の分析で有意差が確認されたのは血液検査上のCK値であり、筋肉痛の体感を直接調べたものではない。効果があるとしても限定的な可能性がある。
この結果はどのくらい確実なものですか?
研究チーム自身が、CK・LDHいずれの結果も「エビデンスの確実性は非常に低い」と評価しており、今後さらに質の高い研究による確認が必要な段階である。
高齢者にも同じ効果がありますか?
今回の論文には対象者の年齢層についての詳細な記載はない。別の2025年のアンブレラレビューでは、筋肉量・筋力の増加効果が70歳以上で大きい傾向が報告されているが、これは筋損傷マーカーではなく筋肉量・筋力を見た研究である。
KINNIKU TIMESの視点
CKの有意な低下は数字としては興味深いものの、研究チーム自身が「エビデンスの確実性は非常に低い」と位置づけている点は見過ごせない。運動後の回復は、睡眠・食事からのたんぱく質摂取・適切な休養が土台であり、HMBのようなサプリメントはあくまでその上乗せの選択肢の一つと捉えるのが妥当だろう。筋肉痛や回復については、KINNIKU TIMESの既報「タルトチェリーで筋肉の回復は早まる?」でも別の成分を取り上げている。
出典:Jozi et al.「Effects of beta-hydroxy-beta-methyl butyrate (HMB) supplementation on biochemical muscle injury indices in adults: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials」Sport Sciences for Health(2026年)/スポーツ栄養Web「HMBサプリメントは筋肉量と筋力の向上に有用で、特に高齢者に恩恵が大きい可能性 アンブレラレビュー」/KINNIKU TIMES既報「タルトチェリーで筋肉の回復は早まる?」
(9月27日15時 訂正:HMBの化学名の表記の誤りおよび一部の文字化けを修正しました)
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